岩手県立博物館

岩手山を望める丘のミュージアム

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庶民のくらし[民俗分野]
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エンブリの烏帽子(えぼし)

 これは、「えんぶり」という民俗芸能(みんぞくげいのう)で、踊り手がかぶる「烏帽子(えぼし)」です。和紙を何枚も重ねて、漆(うるし)を塗って仕上げる、大変手間のかかる作業で作られる物です。八戸市にお住まいの木村義男さんの作品です。

 「えんぶり」(または、えぶり)は田んぼを平らにならすための道具です。一年の豊作を願って、えんぶりを手に、田をならすしぐさで田の神様を揺さぶり起こし、舞い踊ったことから、この踊りも「えんぶり」と呼ばれるようになりました。馬の頭を形どった美しいえぼしは、神様を呼ぶ「よりしろ」(神様が降りてくる目印)です。八戸市を中心に青森県南部から岩手県北部にかけての旧八戸藩の農村部を中心にに分布しています。えんぶりを踊ることを「する」と言います。

 えんぶりにはふたつの系統があります。
 「ながえんぶり」は古くからの形で、主役の太夫のえぼしに赤いボタンの花かウツギの花を飾り、ゆっくりと静かに踊ります。 「どうさいえんぶり」はそれぞれの太夫のえぼしに「前髪」と呼ばれる五色のテープ状の紙を垂らして、激しく勇ましく踊ります。当博物館に展示されているえぼしは軽米町の小軽米えんぶり保存会から寄贈されたもので、五色の「前髪」がついていますから、どうさい系のえんぶりですね。

 えんぶりをするのは主役の藤九郎、ナカグロ、クロドメの三人の太夫です。えんぶりをかたどった杖を持っていますが、杖の先の金輪がジャン、ジャンと鳴ります。これを「ナリゴ」といいます。太夫はナリゴと扇を手に、えぼしが地面につきそうなほど低く身をかがめてナリゴを鳴らし、頭を激しく振りたてます。主なえんぶりすりの間に様々な演目が織り込まれています。歌詞や口上(せりふ)はおどけたものが多く、笑いを誘うものです。


どうさいえんぶり

 昔は小正月に農家を回り、軒先などで踊ったと言います。町内から、遠く沿岸部まで巡業していました。今は9月9日の軽米町 月山神社(がっさんじんじゃ)の祭典で神輿(みこし)のお供をしたり、二戸市の芸能発表会に参加したりしています。 また、保存会から指導者を派遣し、体育祭や文化祭の機会を利用して、小軽米中学校の生徒にえんぶりを伝承するよう努めています。

 県内には小軽米の他に妻の神(さいのかみ=九戸村)、杉沢(浄法寺町)、根森(二戸市)、小国(おぐに/山形村)、大渡(おおわたり/久慈市)などにえんぶりが伝ってます。


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