岩手県立博物館

岩手山を望める丘のミュージアム

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展示室のご案内

2階

総合展示室

いわての歩み[歴史分野]

 自然豊かな岩手県は、かつて金や鉄に代表される資源と馬や漆などの特産品に恵まれていました。平泉を中心とする奥州藤原氏の百年の栄華も、この恵みに支えられたものでした。江戸時代には良馬の育成が盛岡藩によって行われ、幕末の釜石は、近代製鉄発祥の地として知られています。一方で冷涼な気候は、たびたび凶作をもたらしました。岩手の地は、厳しい生活に苦しんだ農民の一揆が多発したことでも知られています。
 展示室は、「いわての歩み」として、豊かな恵みと厳しい気候のなかで生きた人々の歴史を概観できるよう、次の五つのコーナーで構成し、紹介しています。

1.奥州平泉(古代)

 今から1200年ほど前、この岩手の地で、坂上田村麻呂率いる朝廷軍と阿弖流為ら蝦夷との数度にわたる激しい戦いがありました。その結果、胆沢城、志波城、徳丹城などが築かれ、平安時代の初めには中央政権の支配下に組み込まれました。11世紀、安倍氏の支配下にあった地は、再び戦いの舞台となりました。奥州の覇者となった藤原清衡は、平泉に中尊寺を建立し、子基衡・孫秀衡と三代にわたって、平泉文化を大きく花開かせました。

2.豪族たちとその文化(中世)

 奥州藤原氏を滅ぼした源頼朝は、配下の武士に東北地方の各地を褒美として与え、新領地に関東地方から移住して豪族として成長する者もありました。この時期には、鎌倉新仏教が豪族や庶民に幅広く浸透していきます。南北朝時代から、武家は所領相続をめぐって一族を二分して骨肉の争いを繰り返し、戦国時代へと向かいます。

3.封建社会の人々(近世)

 豊臣秀吉の全国統一事業の最後の戦いとなったのが九戸政実の乱でした。この戦いののち、現在の釜石市・北上市以北の岩手県と青森県東部・秋田県鹿角地方が南部氏の領土として確定し、岩手県南部は伊達氏の領土となり、江戸時代を迎えます。居城の所在地から、それぞれ盛岡藩・仙台藩とよばれますが、やがて盛岡藩から八戸藩が、仙台藩から一関藩が分かれ、四つの藩が現在の岩手県域を支配していきます。
 寒冷な気候の岩手県は稲作には向かず、たびたび冷害に苦しめられ、凶作や飢饉が多く、農民の一揆も起こります。産金は江戸前期には衰退しましたが、良質の砂鉄と燃料となる木材が豊富な北上山地では「たたら製鉄」がさかんに行われ、幕末には、釜石で鉄鉱石を原料とした洋式製鉄も行われます。また、盛岡藩では藩営の牧場を設けて良馬の育成に力を入れ、俵物と呼ばれた煎海鼠(いりこ)、干鮑(ほしあわび)、鱶鰭(ふかひれ)は長崎から中国に輸出されました。

4.近代化をめざして(近代)

 明治以降、日本はヨーロッパやアメリカの文化を積極的に取り入れると同時に、国内の産業の発展にも力を入れました。鉄道網が殖産興業・富国強兵政策にともなって拡大し、現在の東北本線が明治23(1890)年に盛岡、翌年9月には青森まで開通すると、諸産業も大きく発展しました。

5.古美術

 江戸時代の資料を中心に、郷土の絵画、漆芸、鋳金、刀剣などを紹介しています。

展示品のご案内

毛越寺・観自在王院 模型(もうつうじ・かんじざいおういん もけい)

毛越寺・観自在王院の建物と庭園を往時の姿に復元した縮尺125分の1の模型です。毛越寺は、奥州藤原氏二代基衡(もとひら)が造営を行い、三代秀衡(ひでひら)が完成させた寺院です。平安時代後期の伽藍(がらん)遺構と浄土庭園がほぼ完全な状態で保存されており、特別史跡及び特別名勝に指定されています。東隣の観自在王院は基衡夫人の発願(ほつがん)による寺院で、舞鶴(まいづる)が池と呼ばれる園池北側に、大阿弥陀堂(おおあみだどう)・小阿弥陀堂(こあみだどう)が建てられました。

鯰尾兜(なまずおのかぶと)

盛岡藩主南部家伝来の兜で、初代藩主となる利直(としなお)が、蒲生氏郷(がもううじさと)の養妹を妻に迎えたときに引出物として贈られました。形態は燕尾形(えんびなり)と呼ばれる変り兜ですが、南部家では代々鯰尾兜(なまずおのかぶと)と呼ばれました。
【※貸出しや展示替え等のため、ご覧いただけない場合があります。】

鍛冶神像掛図(かじがみぞうかけず)

江戸時代の鍛冶屋さんが、吹子(ふいご)のはたらきをつかさどる神としてうやまい、拝礼をした掛図です。  中央に吹子が描かれ、その上に顔が三つで手が六(八)本の神が立つことや、吹子を押したり槌を打つ場面に鬼が描かれるのが特色です。

国立銀行紙幣(こくりつぎんこうしへい)

国立銀行は、明治5年(1872)の国立銀行条例に基づいて設立された、わが国最初の近代的銀行です。岩手県では、明治11年(1878)、一関に第八十八国立銀行が、盛岡に第九十国立銀行がそれぞれ設置されました。国立銀行紙幣は一円と五円の二種類が資本金に応じて下付され、紙面に発行先の各銀行名が印刷されています。写真は第九十国立銀行紙幣の一円券です。