岩手県立博物館

岩手山を望める丘のミュージアム

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展示室のご案内

2階

総合展示室

県土の誕生[地質分野]

岩手県の地質
 岩手県には約5億年前から現在に至るまで、あらゆる地質時代の地層や岩石が見られ、さらにはかつて地球にいたさまざまな生物の化石が産出します。

南部北上山地

 特に古い時代の地層や岩石は、主に北上山地の南側(南部北上山地)に分布します。最も古いものは約5億年前(古生代のカンブリア紀)の岩石で、大船渡市や奥州市などで見られます。また、大船渡市で見つかった4億年以上前(古生代のシルル紀)のサンゴ化石などを含む石灰岩は、かつて日本で最古の岩石とされていました。こうした化石などから、大昔の南部北上山地は赤道近くに位置する、温かく浅い海の中であったと考えられています。

北部北上山地

 一方で北部北上山地は、もともとは深い海の底であったとされています。しかし、大規模な造山運動が生じ、中生代の白亜紀(約1億4500万年~6600万年前)の初めまでに現在の北上山地の原形ができました。また、白亜紀の中頃~新生代の古第三紀(約6600万年~2300万年前)の北部陸中海岸の地層からは、アンモナイトやサンゴなどの化石が見つかるほか、岩泉町では日本で最初の恐竜化石「モシリュウ」も見つかっています。

奥羽山脈と北上低地帯

 岩手県の西側には、やや新しい時代の地層が分布しています。新第三紀(約2300万年~258万年前)には現在の奥羽山脈の元となった火山活動が生じ、さらに第四紀(258万年~現在)になると、東の北上山地や西の奥羽山脈からの土砂が低地を埋め、北上平野が作られました。北上平野では貝類やほ乳類の化石が見つかるほか、奥羽山脈との境界部では新第三紀の火山活動でできた岩石も見られます。また奥羽山脈には、岩手山や栗駒山のように現在でも活動を続けている火山(第四紀火山)が存在します。
 「県土の誕生」コーナーでは、こうした岩手の大地の歴史をテーマにさまざまな岩石、化石を展示しております。

展示品のご案内

恐竜 モシリュウの上腕骨[じょうわんこつ] Mamenchisaurus sp.

岩手県下閉伊郡岩泉町茂師
中生代 前期白亜紀 宮古層群田野畑層
実物所蔵 国立科学博物館

1978年に発見された日本初の恐竜化石です。見つかったのは50 cmほどの上腕骨の一部ですが、その形の特徴から中国で発見されている全長22 mの大型恐竜マメンキサウルスに近い種類とされています。

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シルル紀のサンゴ化石 Favosites sp.

岩手県大船渡市日頃市
古生代 シルル紀 川内層

シルル紀のサンゴ化石は1936年、当時東北大学の学生であった小貫義男氏によって岩手県大船渡市日頃市町で日本では初めて発見されました。その歴史的価値が評価され、2016年に日本地質学会によってシルル紀のサンゴ化石は「岩手県の化石」に選ばれました。

鉄鉱石[てっこうせき](磁鉄鉱礫・餅鉄) Iron ore

岩手県釜石市栗林町沢田
中生代 白亜紀

昔は刀剣や農具など鉄製品の原料として、砂鉄が利用されてきました。享保12年(1727)、現在の釜石市大橋で大量の鉄鉱石が発見され、これを利用しようとして安政3年(1856)に大島高任・貫洞瀬左衛門により釜石市大橋に建設された日本初の洋式高炉が作られました。二人は苦労を重ねて翌年の安政4年(1857)12月1日、この洋式高炉からの出銑に成功しました。これを記念して12月1日は「鉄の記念日」とされています。鉄鉱石は現在の「釜石鉱山」で大規模に採掘され、日本の近代化を支えました。その歴史的価値が評価され、2016年に日本地質学会によって「岩手県の鉱物」に選ばれました。

蛇紋岩[じゃもんがん] Serpentinite

岩手県盛岡市砂子沢(いさござわ)長野峠
古生代 オルドビス紀 中岳蛇紋岩(早池峰複合岩体)

文字通り「ヘビ(蛇)の皮膚のような紋様」をしていることから命名されました。でも実際の蛇紋岩の模様は実にさまざまなので、皆さんが知っている蛇の模様とは一致しないかもしれません。触れた時のヌメッとした質感も、蛇に似ているように感じられます(実際の蛇は、さらっとした触感です)。色彩も暗緑色から黄緑色まで変化に富んでいます。岩手県では早池峰山に沿う地域と遠野市宮守付近に大規模に分布しています。工業用途の蛇紋岩はかつてさまざまな分野で使用されていましたが「硅肺(珪肺、石綿肺など)、中皮腫」の原因とされ、新たな利用は禁止されています。一方で、装飾用としての利用はまだ続いています。他の地域では珍しい蛇紋岩ですが、岩手県では比較的広範囲に分布し道路沿いなどで見られる場所も少なくありません。また、蛇紋岩性の土壌では特有の成分のために生育できる植物が制限されて「ハヤチネウスユキソウ」などの、蛇紋岩地帯に特有の植物が見られることもあります。岩石としての珍しさと早池峰山の特異な植物生態系を支えているということから、2016年に日本地質学会によって「岩手県の岩石」に選ばれました。