1) 研究テーマ評価のねらい
試験研究の効果的・効率的な推進を図るため、「岩手県試験研究評価ガイドライン」及び「岩手県工業技術研究推進会議設置要綱」に基づいた外部評価を実施し、本県工業の技術水準の向上と産業振興に寄与することをねらいとしている。
① 試験研究の効果的・効率的な推進
② 県民の理解の確保
③ 職員の意識向上、組織の活性化
2) 試験研究テーマの検討
(1)検討経過
- ① 研究担当者試験研究評価調書作成 9月上旬
② 担当部長及びプロジェクト研究推進監評価 9月中旬
③ 試験研究35テーマ(事後・中間・事前)所内ヒアリング 9月中旬~下旬
④ 所内評価結果決定 10月上旬
⑤ 外部評価委員に試験研究評価調書を事前送付(約2週間前)
⑥ 岩手県工業技術研究推進会議設置要綱第6条の規定に基づき、部会開催
⑦ 外部評価結果を踏まえ所内対応を検討し、今後の試験研究の推進に反映予定
(2)部会の開催
- 岩手県工業技術研究推進会議設置要綱第6条の規定に基づき、下記の日程で開催
① 材料技術部会:平成16年10月26日(火)10:00~16:50 13課題、委員8名
② 食品技術部会:平成16年10月27日(水)13:00~17:15 9課題、委員8名
③ 生産技術部会:平成16年10月29日(金)10:00~16:30 13課題、委員8名
(3)部会の開催方法
- 研究担当者が説明し、質疑応答後に下記5段階の評価基準により評価を受ける。
- 【評価基準】
効果・妥当性が
5:非常に高い、 4:高い、 3:ある、 2:低い、
1:非常に低い
- 【検討テーマ】
平成15年度終了テーマ(事後評価) 3課題
平成16年度継続テーマ(中間評価) 22課題(12課題はH16終了)
平成17年度新規テーマ(事前評価) 10課題
3) 試験研究テーマの評価結果
中間評価1テーマが「3」未満であったが、区分毎の平均点は3.6~4.0、また、部会毎の平均点も3.6~3.7とほぼ同レベルの評価で、全体的に「事業効果が高い」との評価を得た。
-
区分 |
テーマ数 |
3以上 |
3未満 |
平均 |
事後 |
3 |
3 |
0 |
4.0 |
中間 |
22 |
21 |
1 |
3.6 |
事前 |
10 |
10 |
0 |
3.7 |
合計 |
35 |
34 |
1 |
3.7 |
-
部会名 |
区分 |
テーマ数 |
3以上 |
3未満 |
平均 |
部会平均 |
生産技術 |
事後 |
1 |
1 |
0 |
4.1 |
3.7 |
中間 |
7 |
6 |
1 |
3.8 |
事前 |
5 |
5 |
0 |
3.3 |
材料技術 |
事後 |
2 |
2 |
0 |
3.6 |
3.7 |
中間 |
7 |
7 |
0 |
3.7 |
事前 |
4 |
4 |
0 |
3.7 |
食品技術 |
事後 |
0 |
0 |
0 |
- |
3.6 |
中間 |
8 |
8 |
0 |
3.6 |
事前 |
1 |
1 |
0 |
3.4 |
4) 評価結果に対する所内対応
内評価及び外部評価を踏まえ、特に部会での評価が「3」未満と外部評価が所内評価より1点前後低い下記5テーマについて、センターとしての対応は次のとおり考えています。評価点は(所内点)⇒(外部点)
- ①マイクロマシニングによる高機能製品開発(生産:中間):3.0 → 2.9
- 【主な意見】
- ●達成手段の優位性やメリットが不明確
●特許取得を断念すべきではない
【対応策】
- ●この研究の目的は、委員の御指摘のとおり、放電加工を利用した小径の工具(ドリル、リーマ)や打ち抜き金型(パンチ、ダイス)の創製であり、そのメリットは従来の研削工具と比較して熟練技能を必要としない点(技能の技術化)と非接触という放電の加工特性を活用した微細加工の高度化である。
●全く新しい試みであり、しかも取り組みを開始して間もないことから、放電による工具の製作時間が長くかかったり製作した工具を用いた加工穴精度が従来の研削品より劣ることは、現段階ではむしろ当然であるにもかかわらず、今回の外部評価発表で単純にこれらを比較してしまったことに問題があった。
●今後は、微細穴加工を中心に非接触の加工特性を活用した放電加工の優位性を明確にするデータをそろえ、研究年度終了までには高い評価が得られるよう努力する。特許の申請に関しては、製造ノウハウを公開することになることから、本アイディアを発案した共同研究企業の意向を重視したい。
【処 置】
②工業技術センター発開発技術・製品の市場化支援(生産:事前): 4.5 → 3.6
【主な意見】
- ●センターのミッションか?
●県全体として支援すべき、市場規模と狙うシェアを明確に、一人責任者を専任させるべき
●意欲的な新しい有意義な試み
【対応策】
- ●従来、当センターの開発や支援の内容は技術に特化し、技術自体は素晴らしいものであっても、その後のフォローが足りないために製品として企業に貢献できないものが多々あった。これまでは工業技術センターのミッションが技術開発と技術支援による県内企業への貢献であるとの認識から、あえて販売等の支援には積極的な対応を行っては来なかったが、現在の企業の状況を考えたとき、総合的に企業の発展に対する支援を行うことが必要であると考える。
●もちろん他の関係機関との連携は必要であり、マーケティングに関するノウハウの蓄積を進めるためには、マーケティングの専門会社等への委託等も考慮しなければいけないと考えているが、当センターでは技術に熟知しているという強みがあり、効率の良い支援が期待できると考える。
●同時に、当センターが市場化支援を実施することは将来の技術開発等についても、市場を念頭に入れた開発ができ、より実現性の高い研究につながることが期待できる。
【処 置】
③100円無酸素雰囲気センサーチップの開発(材料:中間): 4.0 → 3.1
【主な意見】
- ●開発要素の少ない依頼分析的テーマ、トリアジンを何に使用するのか不明確、
●次の開発実用化につながるネタは?
●実用化に期待
【対応策】
- ●ご指摘のとおり、独自開発性が無く委託解析(依頼分析)的性格が強いテーマである。しかし、プロジェクト全体としての目標は県内企業の製品開発(製品化)でありその成果は経済効果が高いと予想される。
●また、プロジェクトにおける当センターの役割である膜構造の解析等については、製品性能や製造技術にも関連する重要な部分であるものの企業単独で実施することが困難であり、本テーマの必要性は大きいものと考える。
●さらに、本テーマは単年度で終了するもので、既に(県費を使わないで)外部資金を導入して実施している。よって、必要性・費用対効果等が高いため、所内評価4.0とした。トリアジンを何に使用するかは企業秘密の部分であるので、明確にすることはできない。
【処 置】
④鋳鉄の機械的特性に及ぼす基地組織の定量的評価(材料:事前): 4.0 → 3.1
【主な意見】
- ●研究計画の綿密なすりあわせが必要
●測定原理が曖昧
●先行事例としての建築材料(炭素鋼)での試みを参考に
●今までにない新しい評価技術
【対応策】
- ●ご指摘のとおり、研究計画等説明不足の部分があった。プロジェクト全体の目標は電磁特性を利用した自動車用薄肉鋳鉄の新しい評価方法の確立であるが、当センターの役割は、基地組織やチル化率などを変えたサンプルを作製し機械的強度等を測定して定量的な評価を行うとともに、このデータ及びサンプルを提供することにある。
●北海道大学の役割は、これらの機械的特性と電磁特性の相関を追及するところにあり、東北大学の役割は、これらのデータを基に評価モデルの確立と数値解析、評価装置の設計と試作を行うことであるが、当センターとしては事業終了後の成果を県内企業へ移転するためにも数値解析や装置の設計等にも参加していく予定である。
●プロジェクト全体の成果は、鋳物製造業の自動車関連分野への市場を拡大すると予測され、当センターがこのプロジェクトに参加することは他県に先駆けて県内鋳物製造業の自動車分野への参入を促進すると考える。
●このように本テーマの必要性は大なるものであるから所内評価4.0としたが、委員のご指摘にあったように、当センターの役割は基礎的なものであり、データの蓄積が主たる仕事となる。また、特に県の予算措置はなく、NEDOの予算も東北大学が一括で受け当センターには現物支給となる。
【処置】
⑤「吟ぎんが」、「ぎんおとめ」ブランド支援と新ブランド開発(食品:事前): 4.5 → 3.4
【主な意見】
- ●民間ではできないことに集中すべき
●ブレンド酒など新規発想の研究も
●客観的な評価法の導入と低コスト化がポイント
●清酒本来の特徴をより強調できる醸造が必要
●岩手の清酒のブランド化に向け業界と一体となった取り組みは大いに評価
【対応策】
- ●当センターの立場からすると、酒造組合、企業との連携を進めていくことで、存在意義がある。業界が抱えている技術的課題は「吟ぎんが」という米をいかに使いこなすか、これが出来れば(出来ているところもある)、岩手ブランド確立に拍車がつくと思われる。
●このような目標と味覚センサを利用する新規性から所内評価4.5とした。両ブランドは消費者の評価は高くないという意見があるからこそ、ブランド確立のため取り組む必要性がある。
【処 置】
参考資料
1) 各部会評価結果(各委員のコメント)
2) 各部会議事録
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