2階
総合展示室
県土の誕生[地質分野]
展示品のご案内
気仙隕石[けせんいんせき]
【偏光顕微鏡(へんこうけんびきょう)で見た気仙隕石(×100)】
この何の変哲もない石。皆さんは何だと思いますか?
表面をよく観察すると、融けた跡が見えます。これは、この石が地球に落下したときに大気との摩擦(まさつ)で融けた跡(フュージョンクラスト)です。実はこの石は宇宙からの使者、隕石(いんせき)なのです!
隕石というのは、月の石とともに、太陽系が誕生したときの情報を人類が手にすることができる貴重な地球外物質なのです。
気仙隕石(けせんいんせき)は、1850年6月13日《嘉永(かえい)3年5月4日》の明け方に、現在の陸前高田市気仙町丑沢(うしざわ)にある長圓寺(ちょうえんじ)前の畑に落下した日本で最大の隕石です。ちなみに、日本で最も重い隕石は、1885年に滋賀県田上山(たのかみさん)で発見された175kgの田山隕石で、これは鉄隕石)です。気仙隕石は、落下が目撃され、落下地点、日時、状況などが記録されている点でも貴重です。
気仙隕石は、何かの凶兆(きょうちょう)ではないかと恐れられ、悪魔退散(あくまたいさん)を願い気仙町で虎舞(とらまい)が行われました。それが「二日市(ふつかいち)虎舞」の始まりと伝えられています。しかし、後には村人達が漁業、養蚕(ようさん)、病気などに効き目があると信じて、くだいて破片を持ち去ったということもありました。明治27年に帝室博物館に献納されたときの重さは135kgでした。さらに研究用なに削られて、現在、国立科学博物館に展示されている最も大きな塊は、106kgです。
隕石は、太陽のまわりを公転していた天体(ほとんどは小さい)が地球の大気圏(たいきけん)に突入し、燃え尽きないで地表に落下したものです。隕石には、色々な種類があり、現在では、次のような過程でつくられたと考えられています。
気仙 隕石は、コンドライトに属します。コンドライトは、太陽系の誕生のころに、熱いガスが冷えてできたコンドリュールという粒(つぶ)が集まってできたもので、太陽系誕生の様子をひもとく手がかりをそのまま残しています。
隕石は昔、ヨーロッパやアフリカでは、やりの先などの武器や鉄器に使われたこともありました。また、ギリシャ神話や旧約聖書(きゅうやくせいしょ)にも落下の記録が残っています。
日本国内で確認された隕石は46件だけですが、南極大陸では約1万5千個の隕石が採集され、そのうちの約8900個が日本の南極観測隊によるものです。したがって、日本は世界一の隕石保有国となっています。
隕石はシャワーのように降ってきたり、家や船に落下した例もあります。アフリカのナミビアで発見された世界最大のホバ隕石は63トンもあります。
去年の1月に茨城県つくば市周辺に落下したつくば隕石は、たくさんの人に目撃され、小学生などの活躍で23個の破片が見つかりました。みなさんもいつか、隕石を発見するチャンスにめぐりあえるといいですね。