岩手県の取り組み
(1)「岩手県 新・医師確保対策アクションプラン」
「岩手県 新・医師確保対策アクションプラン」を策定し、医師養成から本県での生活までの医師のライフステージに応じた様々な取組みを総合的に展開しています。
「岩手県 新・医師確保対策アクションプラン」の主な内容
- ①医師の養成・確保及び定着対策
- ②医師偏在対策
- ③医師のキャリア形成支援
- ④女性医師やシニア年代の医師等の多様な働き方の支援
- ⑤医師の働き方改革等に対応した勤務環境改善支援
- ⑥地域医療の確保に向けた働きかけと情報発信
(2)「いわてイーハトーヴ臨床研修病院群」
①医師のキャリア形成に対応した取組み
各臨床研修病院の臨床研修プログラム責任者を中心に「ワーキンググループ」を構成し、県と共同して指導医講習会を開催するほか、臨床研修病院合同説明会、臨床研修病院合同面接会、臨床研修医合同オリエンテーションなど臨床研修医を受入れる環境整備に取組んでいます。
また、専門研修等を見据え、医師のキャリア形成に対応した育成の方向性について検討しています。
キャリアアップイメージ図(一例)
②充実した指導体制
岩手県では、厚生労働省の指針に沿った臨床研修指導医講習会を、全国で初めて県主催で開催するなど、早くから指導医の養成に取り組んできました。
講習会を受講した指導医の数は令和5年4月現在で514名に上り、指導医と臨床研修医の比率は約4:1を超える全国有数の指導体制です。
また、平成19年度から「臨床研修指導医スキルアップセミナー」を開催するなど、指導体制の質的充実を図る取組みを推進しています。
研修医数(a) | 指導医数(b) |
(b)のうち 講習会受講数 (c) |
受講済み 指導医:研修医 (c):(a) |
130名 | 667名 | 514名 | 約4:1 |
※令和5年4月現在
臨床研修医の動向など(県内勤務等者数及び率)
区分\受入年度 | H26 | H27 | H28 | H29 | H30 | R1 | R2 | R3 | R4 | R5 |
臨床研修医数 (受入) |
67名 | 77名 | 67名 | 70名 | 76名 | 75名 | 61名 | 67名 | 61名 | 69名 |
a 研修修了者 |
(H28.3) 67名 |
(H29.3) 79名※1 |
(H30.3) 66名※2 |
(H31.3) 71名※3 |
(R2.3) 76名 ※4 |
(R3.3) 76名※5 |
(R4.3) 58名※6 |
(R5.3) 68名 |
― | ― |
b うち県内勤務等者 | 56名 | 60名 | 50名 | 53名 | 56名 | 65名 | 49名 | 58名 | ― | ― |
c 県内勤務等率 | 83.6% | 75.9% | 75.8% | 74.6% | 73.7% | 85.5% | 84.5% | 85.3% | ― | ― |
※1 平成27年9月及び平成28年1月の中途受け入れ2名を含む
※2 平成28年7月修了者1名を含む
※3 平成27年9月及び平成28年1月の中途受け入れ2名を含む
※4 令和元年5月の中途受け入れ1名を含む
※5 令和3年9月修了者2名を含む
※6 令和3年9月修了者1名、令和4年9月修了者1名を含む
(3)医師確保対策室の設置、医師支援推進室への改組
本県では医師確保を県政の最重要課題の一つとして取組み、これまで臨床研修医の増加など一定の成果も見えてきているところですが、医師不足の喫緊の課題に機動的に対応するため、平成18年9月に医師確保対策室を設置し即戦力となる医師の招聘に取組んできました。
平成21年4月には医師支援推進室へ改組し、医師の勤務環境改善による定着支援や臨床研修環境整備の取り組みなど医師の支援体制のいっそうの充実に向け、組織強化を図りました。
(4)医師の任期付職員採用制度(シニアドクターの採用)
本県では、経験豊かなシニアドクターに安心して勤務していただけるよう正規職員と同等の任用制度を、平成27年度から実施しています。
医師免許を取得後、概ね10年以上の臨床経験を有する方であって、3年間の任期を常勤の医師として勤務する意思をお持ちであればどなたでも応募できます。
65歳(公立病院の一般的な定年年齢)を過ぎた方でも正規職員としてお迎えします。
(5)無料職業紹介事業
医師の方々の様々な勤務ニーズに対応するため、「無料職業紹介事業」を実施しています。
これは、本県での勤務意向のある医師の方々に希望条件に合う岩手県内の公的医療機関へのあっせんを行うものです。
単なる求人情報の提供にとどまらず、ご希望に沿った勤務の実現に向けキメ細かくサポートいたします。
(6)医師へのサポート体制
①勤務医賠償責任保険への加入
県立病院では医療事故等への対応の一環として、「病院賠償責任保険」へ加入していることに加え、勤務医個人が負担する法律上の賠償責任を補償する「勤務医賠償責任保険」について勤務医全員を対象に加入しています(保険金額:対人1事故1億円)。
②充実した医療相談体制
県内全病院に医療相談窓口を設置しているほか、県立病院を統括する医療局に医療相談担当の専任職を設置し、個々の病院では対応が困難な事例を取扱うなど、組織的に対応する体制をとっています。
③医療クラークの配置
県立病院においては、医師が行っている事務作業などについて、医師以外の職種でも対応できる業務を見直すことにより、医師が本来の業務に専念できるよう医療クラークを配置しています。
医療クラークは診断書などの文書作成補助、診療記録の整理や統計調査など、主に医師の補助作業を行っています。
医療クラーク導入後は、「医師が診療に専念できる時間が増えた」、「外来診療がスピードアップした」、「診断書作成の期間が大幅に短縮された」などのメリットが報告されており、医師からの評価が高いことから令和5年度には363名を配置し、医師の負担軽減に寄与しています。
④その他支援対策
さらなる支援対策の取組みの一環として、医師支援推進室に日常的な相談窓口を設け、継続的に待遇面の改善や業務軽減につながる取組みを進めています。
⑤子育て中の医師の就業支援
育児期間中の医師の皆さんが安心して県立病院で勤務を続けられるよう、育児短時間勤務制度や充実した保育支援制度等を設けて仕事と育児の両立を支援しています。
また、出産や育児のために一時的に離職し、今は家庭で子育てに専念している医師の皆さんが県立病院の医師として安心して復職できるよう、必要な技術や知識を学ぶ研修制度も設けています。
ア 育児支援事業
県立病院においては、院内保育所で24時間保育、病後児保育・病児保育及び学童保育を実施しています。
・院内保育所実施病院
10か所(中央、中部、胆沢、磐井・南光、大船渡、釡石、宮古、久慈、 二戸、江刺)で実施
・病児保育所実施病院
2か所(中央:令和2年10月開設、中部:令和4年1月開設)
・学童保育
上記の院内保育事業に加えて、事前申込みを受け必要時に院内保育所、または自宅に保育士を派遣しての学童保育( 小学1年生~6年生)を実施しています。
イ 職場復帰支援事業
育児などのために離職し、その後復帰(再就業)を希望する女性医師で岩手医科大学または県立病院での研修を希望する者に対し、離職時の就業状態及び離職期間に応じた研修を行います。
ウ 短時間勤務制度
県立病院においては、育児と仕事の両立が可能となるように育児のための短時間勤務制度を導入しています。
対象は小学校6年生までの子を養育する常勤の正規職員で、勤務形態は下記の4種類から選択することが可能です。
Ⅰ 3時間55分×5日=週19時間35分勤務
Ⅱ 4時間55分×5日=週24時間35分勤務
Ⅲ 7時間45分×3日=週23時間15分勤務
Ⅳ 7時間45分×2日+3時間55分×1日=週19時間25分勤務
Ⅰ~Ⅳのほか、1週間当たり19時間25分から24時間35分の範囲内で設定
給料は勤務時間に応じた支給となりますが、共済制度の適用があること、短時間勤務を行った期間も退職手当の支給期間に算入されることなどのメリットがあります。
⑥診療応援体制の整備
県内の基幹病院から自治体医療機関を支援する体制を構築しており、例えば基幹の県立病院から自治体医療機関に対しては年間7,000人日を超える診療応援(県立病院間の応援を含む)が行われています。
(7)待遇
給与はそれぞれの自治体の基準に基づき定められています。
県立病院では臨床研修医を修了し、医師免許取得後3年目(後期研修医を含む)以降の医師を正規職員として採用しています。
地方公営企業年鑑の資料で都道府県別の給与を比較すると、岩手県立病院の給与は全国でも有数の高水準となっています。
また、学会出席のために研修助成を行っており、年間25万円(旅費18万円・学会受講料3万円・文献検索複写1万円・研究材料費3万円)の範囲内で支給しています。さらに、認定医・専門医の取得の別や所属する県立病院の地域に応じ研修助成費の加算があります。