形態 |
体長は7〜12cmほどで、一般に雄の方が大きい。体色は茶褐色で、全体に褐色のごま状斑が散在する。場所により斑紋の濃淡には変異が大きい。本種は成魚の胸びれ上半部の軟条が分枝すること、腹びれに褐色の突起が並んで縞模様を呈する点でカジカ(大卵型)と区別できる。 |
分布の概要 |
県内のほぼ全域に生息するが、中部以北はとりわけ本種の分布密度が高い。 |
生育状況 |
主に河川上流で、夏でも20℃を超えない低水温域で、水質が良い、砂泥から石礫質の場所に生息し、主に水生昆虫などを餌にしている。現状では、河川本流よりむしろ流れの緩い支流部を主な生息場所としている。ただし、どの場所でも生息域が狭く、10cmほどの大形個体はきわめて希である。個体数は、場所によって差はあるが、ほとんどの場所で減少傾向にある。 |
生存に対する脅威 |
生息域が狭小であるため、周辺の森林伐採や林道工事あるいはダム構築などの環境攪乱は大きな脅威となる。本種の生息には、採餌場や産卵場となる河床の大小の浮き石の存在が不可欠である。 |
特記事項 |
本種は氷期の遺存種というべき存在であり、岩手県は本州で最も分布密度の高い場所である。ごく最近、宮城県北部でも生息が確認されたが、これら東北地方におけるハナカジカ個体群の系統地理的な解析など未解決な課題が少なくない。東北地方の地史を語る上で欠くことのできない貴重な動物であり、その保全意義はきわめて高い。 |
文献 |
斉藤裕也(2012)江合川、旧迫川、迫川水系のホトケドジョウとカジカ類の分布. 伊豆沼・内沼研究報告6:71-80.
横山良太(2010)冷帯性淡水魚類の系統地理. 渡辺勝敏・高橋 洋(編)淡水魚類地理の自然史:多様性と分化をめぐって,pp.51-69. 北海道大学出版会. |
写真 |
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