形態 |
全長は5〜8cmになり、近縁種モツゴと異なり側線は不完全で、えら直後の数枚の鱗にしか見られない。体は、モツゴがやや銀白色を帯びるのに対し、全体が茶褐色でくすみ、金属光沢をもたない。頭部は大きく、受け口で、尾柄部が太短い体形である。産卵期の雄は頭部に大型の追い星が発現し、モツゴと同様に体全体が黒ずむ。 |
分布の概要 |
花巻市、平泉町、一関市で生息が確認されている。 |
生育状況 |
主に溜池に生息している。場所によって個体数に差があるが、ほとんどの場所で安定的な再生産が見られる。ヒシやジュンサイが繁茂して日陰になる場所が多く、餌生物(水生昆虫や付着藻類など)の多い環境を好む。倒木の下面や石の側面などの安定した基質に産卵する。 |
生存に対する脅威 |
近縁種モツゴと交雑可能なため、シナイモツゴ生息地へのモツゴ侵入は脅威である。また、オオクチバスやブルーギルなど魚食性魚類の侵入は最も危険である。 |
特記事項 |
ゼニタナゴと並び、本州東部で起源したと考えられる日本固有亜種である。また、本県の個体群は太平洋側の北限集団でもある。アロザイム分析では、花巻市の個体群は宮城県の個体群と近縁だが、東北各地の個体群との系統地理的な関係など未解決の課題も多い。そのため、本種の保全意義はきわめて高い。なお、花巻市東部の地区では、ゼニタナゴ(天然記念物指定)と共に地域の人々によって保護が行われている。 |
文献 |
古賀和人(2005)稀少種シナイモツゴの減少要因に関する保全遺伝学的・生態学的研究−特にシナイモツゴとモツゴの同所的集団における個体群動態のメカニズム−. 北海道大学水産学部博士学位論文 144pp. |
写真 |
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