| トップページ | RDBについて | RDBカテゴリー | 検索 |

カワヤツメ河川型
ヤツメウナギ目ヤツメウナギ科
Lethenteron camtschaticum (Tilesius); fluvial non-parasitic form
岩手県:Aランク        環境省:絶滅危惧U類(カワヤツメ回遊型)

形態 成魚の全長は約20cmとシベリアヤツメと良く似たサイズで、筋節数も68〜77と重複する。しかし、吸盤上の歯の先端が尖り、尾部は明瞭に黒く、成熟個体では第2背びれの先端部も黒くなる。母集団であるカワヤツメ回遊型(全長40cmほど)は、アンモシーテス幼生から変態した後に銀毛化するが、河川型では銀毛化が見られない。
分布の概要 宮古市と野田村で生息が確認されている。
生育状況 水質のきれいな砂泥から砂礫質の河川に生息する。アンモシーテス幼生は、流れの緩やかな泥質の河床に潜り、デトリタスなどの有機物を摂食して、3〜4年かけて成長する。夏から秋にかけて変態した成魚は、翌春には砂礫質で平瀬の場所に移動し、そこですり鉢状の産卵床をつくり、1尾の雌に複数の雄がまとわりつくようにして産卵し、河川内で一生を終える。回遊型と同所的に生息している場合、それぞれの成魚の体サイズは大きく異なっているものの、両者の間には遺伝的交流のあることが認められている。
生存に対する脅威 河川改修工事などによる生息環境の消失や攪乱は大きな脅威となる。また、水質の悪化によるダメージは大きい。河川内で生活環を全うするためには、産卵・成長・変態が完遂できる生活環境が保全されていなければならない。
特記事項 生物学的に遡河回遊型カワヤツメ(回遊性・寄生性)と同種だが、その生態はシベリアヤツメやスナヤツメ類と同じく河川性・非寄生性の集団である。すなわち、この型はカワヤツメ類がこれまで経てきた進化(種分化)の過程を、今私たちの眼前に開陳している集団であり、このような生物の存在はきわめて希である。2011年以前、本県沿岸の数河川は、国内においてカワヤツメ河川型が最も数多く確認できる場所であった。残念ながら、震災による津波被害以降その生息をほとんど確認できない状況である。このような危急性の高い状況を鑑み、今回新たにリストした。
文献 山崎裕治・稲葉修(2004)只見川上流のカワヤツメ. 魚類学雑誌, 51: 187-188.
Yamazaki, Y., R. Yokoyama, T. Nagai, A. Goto. (2011) Formation of a fluvial non-parasitic population of Lethenteron camtschaticum as the first step in petromyzontid speciation. Journal of Fish Biology, 79: 2043-2059.
写真