PROJECT STORY世界でいちばん幸せな県をつくろう!

※この記事は令和4年3月に作成・公開したものです。

PROJECT STORY
未来のものづくり人材育成・地元定着促進事業

地元企業を知る機会と場を増やし、
産業を支える人材を岩手に取り戻せ!

 岩手は農業を始めとした第1次産業のイメージが強いが、実はそれだけではない。岩手の産業をリードしているのは、自動車や半導体関連産業を中心とした「ものづくり産業」。そのジャンルも幅広く、自動車や工業製品などの機械や部品、情報通信関連(IT)産業、食料品製造など、様々な分野でものづくりが躍動している。その中で課題となっているのが、ものづくりを担う人材の育成と定着だ。子どもたちにものづくりに興味を持ってもらい、地域の企業を知ってもらうため、県職員たちは様々な取組を行っている。

PROJECT MEMBER

  • 金野 拓美

    1995年入庁
    ものづくり
    自動車産業振興室
    産業集積推進課長
    一般行政

  • 秋山 真紀子

    1998年入庁
    ものづくり
    自動車産業振興室
    就業支援担当課長
    一般行政

  • 広瀬 千晶

    2021年入庁
    ものづくり
    自動車産業振興室
    主任
    一般行政(社会人採用)

  • 吉田 涼香

    2018年入庁
    ものづくり
    自動車産業振興室
    主事
    一般事務

  • 菊地 沙弥香

    2013年入庁
    定住推進・雇用労働室
    主事
    一般事務

  • 小林 岬

    2020年入庁
    県南広域振興局
    経営企画部
    主事
    一般行政

県外に流出する若者たちの目を岩手に向けさせるためには!?

 とある日、盛岡商業高校の一室で、県職員と教員による打ち合わせが行われていた。話を進めるのは、ものづくり自動車産業振興室の吉田主事。それまでものづくりとは縁遠かった盛岡商業高校で、初めて地元企業の見学会を実施することが決まり、その打ち合わせに出向いたのだ。ものづくりというと、工業高校や高専、大学の理工学部など、工業系の学校で学ぶ生徒や学生が就くものと思われがちだ。しかし、それ以外の生徒、学生が活躍できる職種も多いため、県内のものづくり企業を知ることは就職を考える上でとても重要だ。
 「岩手の子どもたちは高校を卒業すると約8割が進学しますが、県外進学者はそのまま県外で就職するケースがほとんど。これまではものづくりに興味を持ってもらうことや、人材育成に重点を置いてきましたが、県内のものづくり企業は多くの人材を必要としているため、若者の県内定着の取組を強化しています」と話すのは、秋山担当課長。若者の県外流出だけでなく、内陸部では、自動車・半導体関連産業を中心として企業の進出による雇用が拡大しており、沿岸部では慢性的な人材不足という課題を抱えている。その解消のためには、早い段階から子どもたちが企業と接点を持つ機会を増やし、就職の選択肢を広げることが重要なのである。

出前授業や企業見学の実施を通して地元企業を知る機会と場を増やす。

 では、どのようにアプローチしていくのか。ものづくり自動車産業振興室では、「未来のものづくり人材育成・地元定着促進事業」として、小学生、中学生、高校生を対象に、出前授業や企業見学会の実施に取り組んでいる。
 出前授業は、県の担当者が出向いて岩手のものづくり産業についてレクチャーをしたり、県内で働く若手社員や企業経営者が講話を行う授業だ。また、企業見学会は、文字通り企業の仕事などを学ぶ見学会だが、生徒の進路に影響力を持つ教員や保護者向けの見学会も実施し、理解を促している。

 前述の盛岡商業高校に出向いた吉田主事は、高校担当。県内全域の高校に働きかけ、学校サイドの希望に応じて講師の調整や見学先の調整などを行うが、他部署の職員と連携して動くこともある。というのも、「ものづくり産業人材の育成と定着」は、若者の雇用や地域の産業振興に深く関わりがあるからだ。時には、定住推進・雇用労働室の菊地主事と同行して高校を訪問したり、県南地域の企業を訪ねる際には、県南広域振興局経営企画部で産業振興を担当する小林主事と同行することもある。
 また、小・中学校を担当する広瀬主任の場合は、地域ものづくりネットワーク等によるキャリア教育という点から教育委員会との連携が欠かせない。共通の目的のもと、他部署と連携して取り組むことで、互いの情報やノウハウを共有し合い、それぞれの仕事に生かしているのだ。

ものづくり産業全体の魅力づくりが、岩手に対する若者の意識を変えていく。

 小・中・高校の各ステージでそれぞれ反応は異なるが、特に高校生の場合は企業見学に行くと意識が変わる生徒が多いという。「企業の様子を見ると、リアルに働くイメージが明確になる。就職に対して真剣に考えるようになりますし、地元にこんな企業があったのかと再認識する生徒もいます」と、秋山担当課長。このように地元企業に触れることで気づきを得る生徒がいる一方で、これを県内の全ての生徒に体験させるには一層の働きかけと、学校サイドの理解と協力が必要だ。

 「まずは、地域のものづくり企業を多くの子どもたちに知ってもらうことが最優先。その体験が残れば、県外に進学したとしても就職先の選択肢の一つになる可能性があります。一方で、企業側も仕事の内容を高度化し、労働環境も含めて魅力づくりをしていく努力が必要ではないでしょうか。先輩や友人がやりがいを感じながら働いている、そんな企業が増えれば、若者も入社するために自分を磨く。人材も企業もそれぞれ高め合い、ものづくり産業全体を底上げしていくことが大事だと思います」と、金野課長は展望を語る。
 岩手県が目指すのは、「世界最先端のものづくり」を創造し、支える人材の育成と定着。国際リニアコライダーの誘致も進む中、世界が注目する「ものづくりの拠点」として、さらなる人づくりと産業育成が期待されている。