イヌワシと出会うには
イヌワシという名前は知っていても、実際に見たことのある人は多くないと思います。ここでは、イヌワシに出会うためのいくつかのヒントを紹介します。
  岩手県にはイヌワシの生息地が多いので、出会う機会も相対的に高いと言えますが、それでも簡単に見られる鳥ではありません。経験豊富な観察者でも発見は運任せの部分があり、観察の機会は決して多くありません。また、現れた鳥がイヌワシであることを識別するためには、それなりの知識と熟練が求められます。
 なお岩手県では、人為的な悪影響が繁殖活動に及ぶことを避けるため、イヌワシの営巣地の場所等を公開しておりませんのでご了承願います。また、過度な接近はイヌワシを強く警戒させ、生息場所の放棄につながる可能性もあるため、観察に際しては十分な距離をおくこと、頻繁な接近を避けること、目立つ行為などでおどかすことのないよう配慮が必要です。
 
 <場所と時期>
 イヌワシは山地に生息していますので、観察には山間地や山の望める場所を訪れる必要があります。ただし、定着していない若鳥は広域的に飛び回っていると考えられるため、平地部でも出現の可能性はないとは言えません。観察には一般に広い視界が得られ、遠くまで見渡せる眺めの良い場所が適しています。イヌワシは上昇気流のある山の上で旋回していたり、山の斜面にそって低く飛んでいたり、牧野や伐開地の近くにある目立つ樹木に止まっていたりすることがあります。こうした場所を丹念に探しながら個体が現れるのを待つ根気も求められます。年間を通して生息している留鳥ですので、季節にかかわらず観察の機会はあります。なるべく好天で空気の澄んだ日が適しています。
 
 <観察道具>
 飛んでいる鳥の発見には多くの場合道具は使わず、肉眼で見つけます。しかし、距離が遠いため種の識別には8倍程度の双眼鏡や20〜60倍の地上望遠鏡が用いられます。遠方の対象物をすばやく望遠鏡の視野に捉えるには、ある程度熟練が必要です。
 
 <識別>
 現れた鳥がイヌワシかどうかの識別は一番経験を要する部分です。遠かったり、特徴のわかる向きから見えなかったり、すぐに山かげに隠れてしまったりすることも多く、熟達した観察者でも必ず識別できるわけではありません。大きさ、形、模様、飛び方など、個体の特徴を確認し、可能性のある種の範囲から絞り込んでいく技術は、実際に観察を重ねながら習得する必要があります。山でよく見かける「飛んでいる大きめの鳥」がイヌワシかどうかを判断するための基本的な特徴については、環境省猛禽類保護センター(鳥海イヌワシみらい館)ホームページの「鳥海山周辺の猛禽類」が参考になります。
 
 <飼育個体に会う>
 イヌワシに出会うもう一つの方法は、動物園を訪れることです。以下の動物園等でイヌワシが飼育展示されています。岩手県内でも2004年3月から、盛岡市動物公園でイヌワシの飼育展示が行なわれています。
 
  盛岡市動物公園:     メスの「空」や、オスの「翁」「出羽」がいます。 ※2023年春までリニューアルのため休園中
 秋田市大森山動物園:  「空」の両親である「信濃」と「たつこ」を含め、10羽が飼育されています。
 仙台市八木山動物園:  オスの「阿賀野」、メスの「福井」の2羽がいます。
 東京都多摩動物公園:  国内で最多の21羽が飼育されています。
 石川県いしかわ動物園: 「白山」などオス2羽とメス1羽がいます。
 那須どうぶつ王国:    「颯」と「朝日」のつがいがいます。
 札幌市円山動物園:    オス2羽がいます。
 須坂市動物園:       オス1羽、メス1羽のつがいがいます。
 大阪市天王寺動物園:  親子3羽がいます。
 
 <展示を見る>
 イヌワシの標本を見たり、生態について学べる展示があります。
 
 環境省猛禽類保護センター(山形県酒田市): イヌワシをはじめ、猛禽類について解説したパネル展示、剥製などを見ることができます。
 岩手県立博物館(岩手県盛岡市): イヌワシ営巣環境のジオラマ、剥製、ビデオ映像などが見られます。猛禽類各種の剥製も展示。