八幡平市へIターン
わたしの IWATE LIFE

安比塗企業組合 理事長
工藤理沙くどうりささん
〈奈良県出身 / 2005年に移住〉

漆工芸を学ぶために岩手へIターン。
企業組合を設立し漆文化の発信者に

大学で出会った漆工芸の世界を
より深く学ぶため、単身岩手へ

 伝統工芸に興味を持ち、進学した愛知教育大学で漆工芸に出会った工藤理沙さん。「漆の製作過程には人の力でコントロールできない部分がある。それが面白くて、一生の仕事にしたら絶対に飽きないと思いました」と目を輝かせます。そんな工藤さんが大学の教授から紹介された場所が、漆の樹液の採取量全国一の岩手県にある安代漆工技術センター。奈良出身の工藤さんにとって、初めての東北でした。
 「見学に来たとき、指導する冨地原文隆先生から『自分の持つ技術は全て教える』と言われて、ここだ!って思いましたね」。
 センターでの研修期間は2年でしたが、修了後、センターの助手をしながら隣接する安比塗漆器工房で働かないかと誘われた工藤さん。「もっと漆の勉強をしたい」と工房へ入り、塗師に加え『漆器の販売』という仕事も引き受けるようになりました。結果として取引先とのやり取りやビジネスマナーといった経営に関する経験や知識が身に付き、それは自身にとって大きな収穫となっていきます。また工房へ入って2年後には安代町出身のご主人と結婚、男の子と女の子、二人の子どもに恵まれました。

現在は事務や業者との折衝や接客、PR活動などにも関わる工藤さん。合間を見ながら塗りの作業も手がけている。

安比塗という工芸文化を次代へ
繋げるために企業組合を設立

 工房に勤務して12年目となった平成29年3月、工藤さんはセンター卒業生の女性塗師仲間4人と「安比塗企業組合」を設立しました。日本の伝統的なものづくりへの期待の高まりや安比塗としての技や販売実績など、「色々なタイミングが整った」と設立の動機を説明する工藤さんですが、メンバーが揃ったことも大きかったといいます。
 「メンバーは県内と県外出身者がちょうど半々で、伝統文化を受け継いでいきたいと考えている人たち。ものを作る技術は大事だけど、それを続けるための経営も大事。自分たちでお金を回し、安比塗を次の世代に繋げていくのが私たちの目標です」。

安比塗企業組合のメンバー。左より岸田奈津希さん、工藤さん、豊原智美さん。女性目線で新しい安比塗を構想中。

 仕事はもちろん、6歳と3歳の子育てにも奮闘中の工藤さん。朝7時半過ぎには家を出て保育園へ子どもを預け、8時には工房でミーティング。17時半には子どもたちを迎えに行き、夕食と入浴を済ませて21時には一緒に就寝するそう。忙しい毎日ですが「主人も家事を手伝ってくれるし、工房の人たちの理解もある」とにっこり。「初めて来た時から、岩手の人には親切にしてもらった記憶しかないんです」と続けます。
 工房や自宅のそばに豊かな自然が広がる八幡平での暮らし。「四季がはっきりしているので、季節を迎える喜びは大きい」と、日々の中に楽しみを見いだしている工藤さんです。

休日や仕事の合間に、地域にある産直施設へ行くのも楽しみ。初夏は子どもたちの大好きなブルーベリーが豊富に出回る季節で「冷凍しておやつにします」。

Q&A

Q1安代漆工技術センターってどんな施設?

昭和58年に誕生した、漆器の基礎から独立までを視野に入れた実践的な指導を受けられる、全国的に見てもまれな施設です。入所者は道具の作り方や漆に関する考え方から漆の精製、そして日常の椀と作品的なものづくりの2つを経験して「自分が作りたいもの」を表現できる技術を2年間で身につけられます。さらに希望者は1年の専攻科コースに進むことも可能になりました。専攻科は安比塗漆器工房に勤務して、漆器の大量生産の技術や販売などを学びます。

Q2企業組合設立。どんなサポートが?

岩手県中小企業団体中央会から、事業計画書の作成や経営ノウハウなど1年をかけて指導を受けました。伝統と歴史は守りつつ、4人にしか出来ない新しい安比塗を展開したいですね。

Q3漆文化を広めるためにやってみたいことは?

地域内にはまだ、漆器に対して「高い」「使いづらい」というイメージを持つ人も多いので、学校や町内行事など地元のコミュニティの中で漆器を使ったイベントを出来たらいいなと考えています。

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