奥州市へIターン
わたしの IWATE LIFE

及源鋳造おいげんちゅうぞう株式会社 ブランドプロデューサー
橋本太郎はしもとたろうさん
〈神奈川県出身 / 2011年に移住〉

飛び込んだのは伝統ある南部鉄器の世界、
ものづくりの可能性を広げてみたい

大好きな岩手のために、
自分にできることはないか

 「両親が岩手出身なので、夏休みはいつも祖父母の家へ里帰り。祖父とは一緒に虫取りや栗拾い、をして…楽しかったな」。当時の思い出を楽しげに語る橋本太郎さん。東京の美大を卒業後は、創作活動の拠点とすべく当時空き家になっていた盛岡の実家に転居。「軽い気持ちで移住したものの、横浜と違ってバイトを見つけるのもひと苦労。賃金も安く、岩手の厳しさを知りました」。

商品のイメージカットの撮影で、よく工場に足を運ぶという橋本さん。

 そんな折、橋本さんはウェブで奥州市(おうしゅうし)の鋳物(いもの)メーカー・及源鋳造株式会社が取り組んでいた海外展開のための新ブランド「k.i.w.a」シリーズを目にします。南部鉄器という伝統工芸の世界で新しいものづくりに挑戦する及源鋳造は、岩手の工芸文化に興味を抱いていた橋本さんにとって新鮮な存在に見えました。
 「こんな試みをする会社が岩手にあったんだ!って、驚きました。伝統の継承とは違う形で東北を発信したかったから、及源のしようとしていることに共感したんです」。面接で訪れた奥州市の本社は、昭和の時代を色濃く残す歴史ある鋳物工場。併設された古めかしい鉄器販売所を見て「こういう場所から変えていきたい」と感じた橋本さん。自分のすべきことが見えた瞬間でした。

及源鋳造の人気商品「タミパンクラシック」。昔ジェラルミン製だったパン焼器を南部鉄器で復元したもの。

いつも持ち歩いているノートにはアイデアや絵がびっしり。

手探りで始めたショップ改装、
鉄の魅力と可能性を信じて

 改装にあたり、橋本さんは販売所を「ファクトリーショップ」と改名。「売り買いだけではなく作り手との距離が近い場所を作りたい。自分が初めて入った時に感動したような、工場の魅力を引き出したかったんです」。リアリティを追求するために内装のほとんどを自分たちで手がけ、5ヶ月かけて完成させました。
 現在は、会社のブランディングのほか製品開発にも取り組む橋本さん。手がけた鉄瓶は、コーヒーポットにインスピレーションを受けたモダンなデザイン。「琵琶(びわ)」「鼓(つつみ)」という名前は和楽器の複雑な音色をイメージしたもので、「鉄器も同じで、使い込む中で出くる味わいは全部違う」と話します。

橋本さんがプロデュースした及源鋳造のショールーム。社内にあった古い什器や川原で拾った流木などを使って、モダンにディスプレイ。

 昨年結婚し、今は一関(いちのせき)市内で奥さまと二人暮らし。キッチンには自社製のグリルパンが必需品で「これで焼くと、野菜の甘さが全然違うんですよ」と、料理も楽しんでいる様子です。
 地域との交流も広がっており、及源鋳造をはじめ食に関わるシェフや生産者によって開催されているローカルイベント「風土・Food・風人」では事務局を担当。食を介したコミュニティを通じて、活動フィールドも広がっています。ここで得た新たな出会いや発見も、作品のアイデアや次のステップへ向けた力になるはず。橋本さんの挑戦は、始まったばかりです。

ブランディング部門で一緒に働く関根涼さん(右)も、埼玉県からのIターン。伝統工芸を海外に発信したいと思い、入社したという。

及源鋳造では、生産者やシェフたちと「風土・food・風人」という食のイベントも開催。地域の人たちと交流する貴重な機会だ。

Q&A

Q1移住して苦労したことは?

仕事が少なく経済格差が大きいため、ここで暮らしていけるのか不安でした。車もなかった頃、片道6キロのバイト先まで自転車へ通ったのは辛かった…。真冬の自転車通勤では凍えそうになりました。

Q2岩手のいいところは?

いい意味で何もないところ。都会みたいにモノや情報があふれていないので、新しい価値観を作っていくことができるんです。地域の魅力は経済的豊かさだけではないことを、岩手は大事にしていくべきだと思う。

Q3移住希望者へのアドバイスを!

大事なのは「ここで何をやるか」。自分のスキルを生かせるかどうか、そういう場所を探すのが重要だと思います。最初は見つからなくても、必要とされる場所や出会いは必ずあると思いますよ。

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