一戸町へIターン
わたしの IWATE LIFE

面岸おもぎし職人(修行中)
延原有紀のぶはらゆきさん
〈兵庫県出身 / 2014年に移住〉

箕づくりで、ここでしか得られない
山暮らしの豊かさを楽しみたい

山ともっと関わりたい。
県庁を退職し、工芸の道へ

 一戸町(いちのへまち)の東端にある面岸(おもぎし)地区は、古くから穀物の選別や運搬に使う箕(み)がつくられてきた、山の中の小さな集落。ここで箕づくりの修行をするため、延原有紀さんは2014年4月、当時住んでいた大分から移住してきました。
 もともと山が好きで、大学で林学を学び、林業職で岡山県庁に就職した延原さんですが「机の上ではなく、もっとじかに山と関わりたい」と11年務めた県庁を退職。山と暮らす術を身につけようと大分県の竹工芸・訓練支援センターに入所します。修了後も製作活動を続けますが「これでいいのか」と迷う日々。そんなとき、面岸の箕づくりを紹介する動画を偶然目にします。

暮らしの道具が整然と並ぶ台所。集落に飲食店やコンビニはなく、食事のほとんどは自炊が中心。

 「材料選びの知識や加工技術に驚き、伝えられてきた先人の知恵と経験に感動しました。箕づくりは、山と生きることそのもの。私がやりたいのはこれだと思いました」。
 さっそく一戸町役場に『箕づくりの職人さんにお会いしたい』と問い合わせ、今や地域で1人だけとなってしまった箕職人・戸部定美(とべさだみ)さんを紹介してもらった延原さん。2014年1月下旬、戸部さんに会うため面岸を初めて訪れ、そのわずか3ヶ月後、今度は移住者としてこの地に戻ってきたのでした。

うまくいかなくて落ち込む時もあるけれど、箕を作るのはやっぱり楽しいです。

サルナシ、ヤナギ、サクラ、ネマガリタケなど複数の材料を使い編み上げる箕。写真は師匠・戸部さんがつくったもの。

箕は、単なる道具ではなく
地域の自然と文化を象徴するもの

 「山の中にいる戸部さんは振る舞いがとても自然で、知恵や経験が頭でなく身に付いているんだなと感じます。視野も広く、どこに何があるかがすっと分かる。私はまだ、身体が思うように動かないです」と笑う延原さん。
 修行を始めて1年半。作業は一通り覚えましたが、まだまだ。箕づくりだけで生計を立てるのも難しく「週の半分はアルバイトをし、残りの日を製作にあてるなど、いいバランスを模索中」と話します。

右から、縁巻きにつかうキリ、材料を削るときに使うナイフ、箕を編むとき皮を切るハサミ、縁を固定するための針金を止めるプライヤ。

 現在の住まいは、廃校した小中学校の教員住宅だった建物。窓から入る朝日とともに起き、夜は早めに就寝。畑を耕し大好きな豆を育てたり、この地域の昔ながらのおやつ「がんづき」をつくったりと、素朴だけど豊かな山の暮らしを楽しんでいますが「地域の人ともっと交流したい」という思いがあるといいます。
 「外に広く発信するのも大事ですが、地域の人にこそ箕のすばらしさを再認識してほしいと思います。山の恵みを利用し、この地の雑穀文化とも結びついている箕は、面岸の本当の豊かさを象徴するものだと思うから。それが途絶えてしまわないよう、時間をかけて知恵と技を身に付けていきたいです」。

ぴりっと辛い七味唐辛子と味噌を入れて作った、延原さんお手製の「がんづき」。豆や野菜なども育て、畑仕事を楽しんでいる。

日中は窓いっぱいに光が差し込んで、気持ちがいい。自家製の干し柿もつるされ、じっくりと食べ頃になるのを待つ。

Q&A

Q1住まいはどうやって探したの?

物件が見つからず、最初の1ヶ月は空き家状態になっていた役場の人のご実家をご好意でお借りしていました。その後、戸部さんの紹介で今の住宅を借りることができました。

Q2山ではどんな暮らしですか?

明るくなったら起きて仕事を始め、夜は早く就寝。まさに太陽と一緒に暮らしています。お風呂がないので車で温泉に行ってますが、そのうち桶の薪風呂が欲しいなあとも考えています。

Q3来てよかった、と思うときは?

窓からの景色をぼんやりみているとき。箕づくりをしているとき。箕は、山がそばになければつくれない。ここで作業をしていると、山とともにいることを実感し、うれしくなります。

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