平泉-HIRAIZUMI-は、2011年6月世界遺産に登録されました。

世界遺産平泉の文化遺産の総合案内 いわて平泉 世界遺産情報局

世界遺産平泉・東北復興対談 達増拓也岩手県知事×ドナルド・キーン氏(日本文学研究者)

世界遺産平泉の魅力、価値

「心がつながる浄土そのもの」キーン氏

中尊寺 新覆堂(ちゅうそんじ しんおおいどう)

――大震災の年に、平泉が東北初の世界文化遺産に登録されました。被災地である東北、岩手にとって非常に大きな意味があると思いますが。

キーン 私は1955年に松尾芭蕉の『おくのほそ道』をたどる旅行をしましたが、その時、一番印象深かったのが中尊寺です。以来、平泉を数回訪れ、その魅力を知れば知るほど、平泉が世界遺産になっていないことが不思議に感じられました。今回の地震で中尊寺の仏像が壊れたりすれば、登録が難しくなるのではと心配していましたが、大きな被害がなく胸をなで下ろしました。
 平泉が世界遺産になったことによって、これまで中尊寺を参拝したことがない人が全国から訪れていると聞きます。大勢の人が来るのは、復興のために大事なことです。一方で、観光客がたくさん来ると、雰囲気が台無しになるのではないかと心配しましたが、それもありませんでした。

――キーンさんが感じる平泉の魅力、世界遺産としての価値はどんなところですか。

キーン 一つは場所です。周囲に森があり、すぐ近くに池があって、非常に静かな所に立派なお寺があります。金色堂に最初に入ったとき、「これは単なるお寺ではない。ここにあるのは単なる仏像ではない。浄土そのものだ」と思いました。何度行っても感動します。いつ行っても新たな発見があります。

――それほどキーンさんを引きつける中尊寺の魅力とは。

キーン 日本のほとんどの寺は山号がありますが、実際には名前だけで山がありません。京都の寺にしても平地の場合が多い。一方、中尊寺には山と森があり、自然の中にあります。金色堂について米国人に説明すると、「金ぴかで趣味が悪い」と誤解されたりもしますが、決してそうではありません。自然と調和して、美術的、美学的に優れた効果を感じます。
 私が初めて金色堂を見たのは、観光客がいない時代でした。だから金色堂の中に入ったり、国宝の華鬘(けまん)を手に取ったりすることもできました。その写真も残っています。今はとてもできませんが、その体験は忘れられません。

――祈りの場として神聖なものを感じ取られたのですね。

キーン 中尊寺には数回参りましたが、実はその美術的な見事さに感嘆するばかりで、祈りの側面をあまり感じたことはありませんでした。しかし、震災後に行くと印象がまるで違いました。東北には、地震で家族や親類、友人を亡くした方が多くおられます。それらの方々にとって中尊寺がいかに大切な存在であるかを感じ、涙が出ました。参拝する人に高齢者が多かったこともあり、私とも「つながり」があると感じました。今は、美学よりももっと深い、祈りや信仰を感じます。

出典:平成24年1月8日付岩手日報