エゾアワビ
−これでも巻き貝−

 

岩手県のアワビは、
マキガイ綱(腹足類)
 マキガイ亜綱(前鰓類)
  オキナエビス目(原始腹足類)
   ミミ貝科の
    エゾアワビ(haliotis discus hannai Ino)と呼ばれる種類です。
 日本に分布するアワビの仲間は合計10種類いますが、通常アワビというと、エゾアワビ、クロアワビ、メガイ、マダカを指し、エゾアワビは、クロアワビの北方種と考えられています。

 

アワビの雄雌

アワビ(♀)の産卵

 アワビは、9〜11月にかけて産卵します。産卵時期になると、上左の図のように、生殖腺が発達し、メスは緑色、オスは白色になりふくらみます。天然では海が時化(しけ)た後に良く産卵が確認できるようですが、種苗生産施設では、時化を待っていられませんので、人工的に産卵させます(産卵誘発)。かつては温度刺激(水温を上げたり下げたりする)、乾出刺激(空気中に出してからまた水中に戻す)などで産卵させていたようですが、成功する率はあまり高くなかった様です。今では、紫外線を照射した後の海水にアワビを入れ産卵されています。この方法は、東北区水産研究所で発見され、同時に親貝の飼育方法も発表されたため、その後、アワビの種苗生産が、飛躍的に進歩しました。  

   
 

アワビの幼生は、こんな形をしています。生まれたての時は、このように巻き貝の形をしっかりしていますし、フタもちゃんと持っています。泳ぐための繊毛を持ち、海水中を泳ぎ回っていますが、びっくりさせたりすると、繊毛の運動を止め、フタを閉めて、底に沈んでしまいます。4〜5日泳ぎ(浮遊し)、ちょうど良い付着場所があると、繊毛を落として付着生活に移ります。

 
 左は、15mm程度のアワビ稚貝です。泳ぐのをやめたアワビは、付着珪藻という微少な植物を食べて育ちます。アワビの殻の色は、食べ物に由来しており、水槽育ちのアワビは、付着珪藻の後、コンブあるいは人工餌料を食べていますので、緑〜青の殻をつくります。天然では、この様な色になりませんので、大きくなった時も稚貝だった部分の殻を見れば、天然か人工かは容易に区別出来ます。(下の図)
 

 
 稚貝は通常30mm前後になると放流されます。放流場所としては、餌が豊富で、隠れ場所になる岩石があるところ、害敵のヒトデ、カニ等が多くないところ、を選びます。放流後、2〜4年で殻長9cmを越え、漁獲の対象になります。
岩手県では各漁協が合計800万個の稚貝を毎年放流しています。
 
 秋になると、今まで繁茂して海底を覆っていたコンブ、ワカメが枯れ始めます。ワカメは、そのまま根から剥がれて流れてしまいます。コンブも先端から枯れ始め、根本部分、数10cmを残すだけになります。こうなったとき、夏場は、石の奥に隠れて、夜だけ行動していたアワビが、移動を始め、昼でも岩の上の方に出て、コンブの根元とかに集まるようになります。そうなると、船の上からでも見えますから、アワビの漁獲は(産卵期が終わった時期という理由も確かにありますが)この時期からなのでしょう。
 
アワビの口開けは、11月から始まります。朝早くから、船を出し、カガミと呼ぶ箱めがねで海底を見ながら、竿の先についたカギでアワビを岩から剥がして船に取り込みます。箱めがねは、歯で噛んで固定しますので、歯の悪い人はアワビ獲りが難しくなります。あやまって9cmより小さなアワビを獲ってしまった時は、海にもどします。ですから、漁師さんはみんな、そのために、アワビをはかる定規を持っています。
 
漁獲されたアワビは、ナガシと呼ばれる台の上で傷の有無、商品に出来る位太っているかどうかを検査をされます。
 
 天然貝と放流貝です。アワビのお尻(殻頂)部分が緑色(グリーンマークと呼ぶ様です)なのが放流貝、そうでないのが天然貝です。
   
アワビは生で食べられる事が多いのですが、中華料理の材料として乾鮑(かんぽう)に加工され、出荷されもします。獲ってきたばかりの鮑の殻をはずし、塩ゆでして、糸をとおされて、堅くなるまで天日干しにします。三陸町吉浜の鮑は、江戸時代から中国に輸出され、高級品のキッピン鮑として流通していたそうです。今でも、乾鮑を使った料理は中華料理の中でもかなり値段が張り、アワビ研究者としては、一度は食べてみたい、料理となっています。
   

 岩手県のアワビ生産量です。平成10年で500トンを越えました。かつては2000t獲ったこともあり、より多くのアワビが獲れる可能性もあります。変動はありますが、そのうち100t程度を放流貝が占めています。