(平成19年5月23日掲載)

マツノザイセンチュウ抵抗性苗木を開発しました
松くい虫にまけないアカマツを植えよう!

〜松くい虫被害防止のための「抵抗性品種」〜

 当センターでは松くい虫被害の対策として、昭和61年(1986年)からマツノザイセンチュウ抵抗性品種の開発を行ってきました。
 今般、約20年の研究の成果として、従来のアカマツと比べて1.7倍の抵抗性を持つ品種が生まれ、平成19年度から東北各県に先がけて岩手県で苗木の供給が始まりました。

 去る5月22日、一関市花泉町涌津の悪法師堤において、地区住民の方々と市・県関係者により、このアカマツ苗木70本が植栽されました。

 

""一関市内での抵抗性アカマツ植樹
平成19年5月22日

 一関市抵抗性アカマツ植樹事業

"" マツノザイセンチュウ被害と抵抗性

マツノザイセンチュウ写真
""マツノザイセンチュウ顕微鏡写真
 マツノザイセンチュウは、カミキリムシが枝先につける傷口からマツ樹体内に侵入すると爆発的に増殖し、ついにはマツを枯らします。 もともと日本にはこれほどひどい病害を引き起こす材線虫はおらず、輸入木材から抵抗力のない日本のマツに感染した結果、松くい虫被害が拡大したと考えられています。
  ところが、この材線虫の原産地であるアメリカ東海岸中南部では多くのマツが生育しているにもかかわらず、被害は軽微なことから、現地のマツには先天的な抵抗性が存在すると考えられたのです。

"" 抵抗性品種の開発

 岩手県では、昭和61年から抵抗性品種の選抜をスタートさせました。
 県内の採種園で育てているアカマツ1本ごとにタネを取り、苗を育て、材線虫を人工的に注入する接種試験を行い、先天的な抵抗性をもつ親木を選び出しました。
 この抵抗性の高いアカマツを1カ所に集め植栽することにより、抵抗性の高いタネを生産する採種園を作ります。平成11年に作った採種園から、平成16年には600gというわずかな量ながらタネを採り始め、平成19年に苗木の出荷を開始することができました。

"" 抵抗性は従来アカマツ の1.7倍

 材線虫を接種して、苗がどの程度生き残るかを調べた試験の結果、岩手県産アカマツの平均生存率は31%であったのに対し、今回出荷された苗は平均生存率が54%になりました。
 これは従来の県産アカマツと比べ、生存率が1.7倍も改善されていることを示しています。
抵抗性の高いアカマツ苗木 抵抗性の低いアカマツ苗木
""抵抗性の高い苗木 ""抵抗性の低い苗木

"" 抵抗性品種の今後

 採種園からとれるタネの量は現在わずかな量ですが、採種園の成長とともに今後増えてきます。
 現在、抵抗性の高いもの同士の交配を行ったり、県内の松くい虫被害地で生き残った強いアカマツを集め、さらに抵抗性の高いアカマツを提供できるように取り組みをすすめております。

"" 関連する資料

""このトピックスに関するお問合せ

研究に関すること: 岩手県林業技術センター 森林資源部 電話 019-697-1536 ファックス 019-697-1410
苗木の注文:     岩手県山林種苗協同組合 電話 019-622-2729 または最寄りの森林組合へ
植栽に関すること: 最寄りの森林組合 または最寄りの岩手県地方振興局林務担当部へ

岩手県林業技術センター