岩手県立博物館

岩手山を望める丘のミュージアム

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いわての今[生物分野]
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ハヤチネウスユキソウ(キク科)Leontopodium hayachinense


高山植物群落 早池峰山

本格的な登山シーズンを迎えると、山は大勢の登山者で賑わいます。短い夏の間、高山帯では高山植物が色とりどりに花を咲かせ、登山者の目を楽しませてくれます。県内では、岩手山、八幡平(はちまんたい)、早池峰山(はやちねさん)などに高山植物が生育しています。なかでも県の東部に連なる北上山地の最高峰・早池峰山(1917m)は、約200種にもおよぶ高山植物の宝庫で、国の特別天然記念物にも指定されていて全国的に有名です。とくにこの山にしか見られないハヤチネウスユキソウは、早池峰山を代表する高山植物となっています。


ハヤチネウスユキソウ

 ハヤチネウスユキソウは、キク科の植物です。高さは15~30cm程度で、全体がうっすらと雪をかぶったかのように白い綿毛で被(おお)われています。花は、7月から8月にかけて綿雪のようにふんわりとした真っ白な星の形に並んだ葉の上に、4~8個の黄色のかたまりとなってつきます。花そのものは小さくて目立たないために、星の形の葉が、よく花に間違えられます。
 この花は、アルプスに咲くエーデルワイスに似ていることでも有名です。これが縁で早池峰山のふもとにある大迫町は、オーストリアのベルンドルフと姉妹都市になり交流を深めています。

 早池峰山には、ハヤチネウスユキソウの他にもナンブトラノオやナンブトウウチソウなどの特有な植物が見られます。また、北海道以外、本州では早池峰山だけに生育するチシマコザクラが見られるなど、多くの貴重な植物が生育しています。近年、登山道入口までの道路の整備によってマイカー登山者が増え、登山コースが混雑し、登山道以外の道に踏み入る人々が出てきています。このため、希少な高山植物の生育場所が踏み荒らされたり、心ない人による盗掘(とうくつ)の被害もおこっています。マイカー規制やコースにロープを張るなどの保護対策が行われいますが、生育地の環境の変化に伴い、高山植物の数は減少しています。

 早池峰山の高山植物が一斉に花を開くのは7月から8月。険しい山を登る人々の疲れをやさしく癒(いや)してくれるこの貴重な植物を、私たちは大切にしていきたいものです。


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