2階
総合展示室
県土の誕生[地質分野]
展示品のご案内
鯨類 マエサワクジラBurtinopsis sp.
マエサワクジラ・復元骨格模型
1981年2月のある日、束稲山麓(たばしねさんろく)ののどかな田園地帯の道を通りかかった前田正元さんは、道路端に落ちている不審な物に気が付きました。
見るとそれは何かの骨の化石のようです。そうです。なんと海に住むはずのクジラの尾骨(びこつ)が上から落ちてきたのです。見ると、崖の途中に丸い背骨が見えています。
こうして翌年より、近くのお寺の和尚さんにクジラの供養をしてもらってから、本格的な発掘調査がはじまりました。
前沢町生母(せいぼ)から発掘されたクジラはマエサワクジラと名付けられました。クジラは約4千万年前に出現していて、このクジラは地層より約百万年前と推定されます。産出したクジラの骨格は、ほぼ全身がそろっているという世界的にも貴重な標本だとわかり、連日新聞などを賑わせました。先の1954年にこの近くから発掘されたミズホクジラと共に、あまり解明されていなかったクジラの進化の様子を探る上で、重大なカギを握っているのです。
マエサワクジラは、ミズホクジラと同じヒゲクジラ亜目に属しますが、現在生きているナガスクジラ科のコイワシクジラに近い種類と考えられます。一方ミズホクジラは絶滅したケトテリウム類で、これは、いわば食肉目のイヌ科とネコ科ほどの違いがあります。同じ時代にいたミズホクジラの仲間は絶滅し、なぜマエサワクジラの仲間は生き延びたのか?非常(ひじょう)に興味深いところですね。
マエサワクジラの発掘にともなって、同じ地層から二枚貝・巻貝・カニ・ヒトデ・サンゴ・サメの歯・植物の葉などの化石も出てきました。どうやら、ここは陸地に近い浅い海だったようです。
今皆さんの目の前にある骨格復元模型(こっかくふくげんもけい)を見ていると、「昔、ここは海だった」、そんなうそみたいな本当の話は、おおいに想像力を刺激します。
こうして広い海原(うなばら)を頭に描きつつ、古生物学の研究はこれからも続くのです。