岩手県立博物館

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恐竜 モシリュウの上腕骨Mamenchisaurus sp.


「モシリュウ」の上腕骨/岩泉町茂師(もし)

 これは肩(かた)とひじの間の骨です。ずいぶんがっしりしているし、重そうですね。この大きな骨の持ち主の名前は「モシリュウ」。今からおよそ1億年前にいた体の長さが22メートルもある大型恐竜(おおがたきょうりゅう)です。この化石は、1978年の夏に岩泉町の茂師(もし)で発見されました。当時すでに長崎県でカモノハシ恐竜ではないかという骨もみつかっていましたが、1993年に北九州市立自然史博物館の研究により、これが実はホニュウ類だということがわかったため、「モシリュウ」は堂々「日本最初の恐竜化石」ということになりました。

 恐竜は、およそ2億年以上前に現れて、6500万年前に絶滅(ぜつめつ)した陸生(りくせい)のハチュウ類です。長い間、日本では中生代(ちゅせいだい)の陸地の地層(ちそう)が少ないので、恐竜はみつからないだろうと思われていました。ところが、「モシリュウ」は意外にも海に堆積(たいせき)した地層から発見されたのです。巨大(きょだい)な生物の場合、死がいが完全に土の中にうまるまでに何週間もかかります。その間、風雨にさらされたり、屍肉をほかの動物についばまれたりするため、骨格(こっかく)が必ずといっていいほどバラバラになってしまいます。「モシリュウ」も川沿いで死んだ後、バラバラになり、海まで流されてしまったのでしょう。そして、この骨だけが偶然(ぐうぜん)発見されたのです。これをきっかけとして、日本各地から恐竜化石 発見のニ ュースが聞かれるようになりました。

 では、この「モシリュウ」はどんな動物だったのでしょう。恐竜はワニやトカゲと同じハチュウ類の仲間に入ります。しかし、脚(あし)が体の真下にのびているなど現在のハチュウ類とは違うところもあるようです。恐竜は「竜盤目(りゅうばんもく)(トカゲのような腰=こしを持つ)」と「鳥盤目(ちょうばんもく)(鳥のような腰を持つ)」という大きく二つのグループに分けられます。そしてさらに竜盤目は「けもの竜」と「かみなり竜」に、鳥盤目は「剣竜(けんりゅう)」「鳥竜」「角竜」「よろい竜」に分けられます。それぞれの代表は下の表のとおりです。

竜盤目 けもの竜 ティラノサウルス、ディノニクス 肉食、二足歩行
かみなり竜 ブラキオサウルス、マメンチサウルス 草食、四足歩行
鳥盤目 剣竜 ステゴサウルス、ケントロサウルス 草食、四足歩行
鳥竜 イグアノドン、パキケファロサウルス 草食、二足と準四足
角竜 トリケラトプス、プロトケラトプス 草食、四足歩行
よろい竜 アンキロサウルス 草食、四足歩行

 モシリュウの場合、左のひじから上の骨の一部しかみつかっていませんが、その形や大きさがそっくりなことから中国で発見された「マメンチサウルス(竜盤目、かみなり竜)」の仲間に入ります。マメンチサウルスは巨大な体を4本の頑丈(がんじょう)な足でしっかりと支え、10メートルもある首をのばして、木の葉などの植物を食べていました。頭は体のわりに小さく、鼻の穴が上向きについていました。また、むちのように長い尾は敵(てき)を追い払うのに役立ったことでしょう。今となってはその大きさを想像しては、ただただおどろくばかりで、生きている姿はもちろん、死がいを見ることもできないのが残念です。

 恐竜は、化石からしかその姿やくらしぶりを知ることができません。その数も、現在確認されているものだけで350種類、でも実際は1000種類はいただろうと言われています。まだまだ謎(なぞ)の多い生物です。岩手からも、早く「モシリュウ」に続く化石が発見され、もっと恐竜のことがわかるようになるといいですね。


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