nnnnnnnnnnnnnnnnnnnn産業・雇用対策特別委員会会議記録

                    産業・雇用対策特別委員長 中平 均 

1 日時
  平成22年1月20日(水曜日)
  午前10時3分開会、午前11時26分散会(うち休憩午前11時25分〜11時26分)
2 場所
  第1委員会室
3 出席委員
  中平均委員長、小西和子副委員長、渡辺幸貫委員、佐々木博委員、五日市王委員、
 小野寺研一委員、平沼健委員、工藤勝子委員、吉田洋治委員、阿部富雄委員
4 欠席委員
  伊藤勢至委員
5 事務局職員
  多賀担当書記、菅野担当書記
6 説明のため出席した者
  財団法人いわて産業振興センター 医療機器事業化戦略マネージャー 大森健一氏
7 一般傍聴者
  5人
8 会議に付した事件
 (1) 調査
   「医療機器に求められること」
 (2) その他
   次回の委員会運営について
9 議事の内容
○中平均委員長 ただいまから産業・雇用対策特別委員会を開会いたします。
 なお、伊藤勢至委員は欠席とのことでありますので、御了承願います。
 これより本日の会議を開きます。
 本日は、お手元に配付いたしております日程により会議を行います。
 これより、医療機器に求められることについて調査を行います。本日は、講師として、財団法人いわて産業振興センター医療機器事業化戦略マネジャー、大森健一様をお招きしておりますので、御紹介申し上げます。
 大森様の御経歴につきましては、お手元に配付いたしておりますとおりでございます。
 それでは、ただいまより大森様から御講演いただくこととしておりますが、大森様におかれましては御多忙のところ御講演をお引き受けいただきまして、改めて感謝を申し上げます。ありがとうございます。
 これから御講演をいただくわけでありますが、後ほど大森様を交えての質疑、意見交換の時間を設けておりますので、よろしくお願いいたします。
 それでは、大森様、よろしくお願いいたします。
○大森健一講師 おはようございます。大森と申します。簡単に自己紹介をさせていただきます。
 1943年生まれの66歳、間もなく67歳ですから、決して若くはないのですけれども、まだ現役で頑張っております。生まれは北海道、エンジンの勉強をしていましたのでエンジンメーカーに入社しました。平成元年に二つ目の仕事として、医療機器を選択したという経歴があります。その後、外資系企業に勤めて欧米のビジネスを勉強した後、1999年に技術コンサルタントとして独立しました。現在は、医療機器企業の顧問、それから筑波にあります独立行政法人の研究所といくつかの大学での業務、今般のいわて産業振興センターの仕事など、いわゆる産学官の三つの立場でさまざまなことにかかわっております。
 わかりやすく言いますと、会社員として33年、それから技術コンサルタントとして11年、業務経験上からはエンジンの設計屋として24年、医療機器の技術屋として20年ということになります。
 まず初めに、釈迦に説法になるかもしれませんが医療制度についてお話しします。二つ目は医療機器とは一体何か、それから医療機器に求められることは何か。最後に現在計画中ですが県単事業で推進中のいわて医療機器事業化研究会について、簡単に紹介させていただきます。
 このスライドは、OECDのデータで社会保障制度の国際比較です。御存じのとおり社会保障給付費、GDP比で見ますと日本は医療、年金、福祉において決して高い給付レベルでないわけです。医療費ですが、OECD30カ国中で日本は21位、医療費の負担というのはそんなに高い国ではありません。それから消費税率は、OECDの中で5%を維持しているのは日本と台湾とシンガポールの3カ国だけなのです。このような関係から言うともう少し消費税なりなんなりで医療費に手厚く、という話が出てきて当然だと思うのです。
 日本の医療制度は国民皆保険制度、世界でこのような制度をとっているほかの国はないわけです。それから安い医療費、ここにデータがありますけれども1回当たりの医療費、日本は大体平均で7,000円程度だそうです。これがアメリカ、スウェーデンに行くと6万円とか8万円とかいう高額な医療費がかかるわけです。1年間にどれぐらい病院に行きますかというアンケートに対して日本は年に平均14回ですが、スウェーデンや英国では年に二、三回です。これだけ高い医療費を払うとなれば年に十何回も行っていられないわけです。
 それから、もう一つ、アメリカと比較すると、特に際立つのはフリーアクセスです。日本では、お金があるからないから、偉いから偉くないからということで医療を受けるときに差別を受けることはまずないのです。日本の乳児死亡率は世界最低かつ最長寿国です。安い医療費にもかかわらず、世界保健機構の医療制度評価では、国民の健康度は第1位という高い評価になります。
 医療システムですが、日本は1,000人当たりの病床数はほかの国に比べて圧倒的に多いのです。医療従事者の方のことを考えますと、お医者さんの数が日本では少なく看護師を含む医療関係者の方々も非常に少ないわけです。まとめますと、病気等の治療基準がまだ整備されているとは言えないことから、検査、投薬等の入院が多く平均在院日数が非常に長くなり、したがってベッド数が多いにもかかわらず医療従事者が手薄で入院中心の医療が行われています。アメリカと比べても、スタッフの数並びに医師の数は圧倒的に違い、ベッドの数も非常に多いのです。このギャップを埋めるために何が必要かといいますと、少ない人手で効率的かつよい医療を行おうとすると、最先端の医療機器というものが求められます。こういう国情であるがゆえに、日本が率先して医療機器の開発をやらなければいけないと個人的には思います。
 このスライドは高齢者の健康と疾患です。ちょっと古いデータで1998年ですが、在宅高齢者の80%は元気です。高齢化とともにだんだん日常生活に影響があるという人の比率はふえるのですが、ほとんどのお年寄りは元気です。支障がある方で介護が必要となる要因には何があるかといいますと、加齢とともに進行する衰弱や痴呆を除くと、まず脳血管障害それから心臓病などの循環器系、次いで整形外科系の骨折だとかリウマチや関節炎という病気があります。
 このスライドは、縦軸に10万人当たりの入院患者数、横軸に高齢化率をとっています。都道府県別です。岩手県はかなり高齢化が進んだエリアなのですが、相関係数から見ると入院患者の数はそんなに多いエリアではありません。人口当たりの患者数を受診率といいますが、高齢者ほど受診率が高いというのは当然です。ところが、長野県は高齢化率が高いのに入院患者は少なく、一方、沖縄県や福岡県は高齢化率が全国平均より低いのに入院患者数が多いという地域性があります。これは何が要因かということはまだ明確にはされていませんけれども、岩手県は非常に頑張っているエリアの一つでしょう。秋田県もそうですし、山形県や新潟県もそうですね。このデータをつくったときの高齢化率が20%なのですが、現在でも22.8%、2025年には30%に達してこのスケールからはみ出るほど急激に高齢化が進んでいるというのが日本の現状です。
 このスライドは、都道府県別に見た人口10万人当たりの65歳以上高齢者の入院患者数です。これだけばらつくのです。これが全国平均で岩手県はここにあります。高知県と最も少ない長野県では、2.5倍もの違いがあり、西日本や北陸で入院患者数が多く、東日本は非常に入院患者の数が少ないということが際立って見えます。地域によって、例えば風土病は日本にはないですし、それから医療技術の程度が地域によってそんな大きな違いはないはずなのに、なぜこんな大きな差が出るのか。制度的な問題という表現がされていますが、このあたりは真剣に考えなければいけないことなのだと思うのです。
 次に医療機器とは何か、という話をさせていただきます。
 まず、医療というのは医術、すなわち病気や傷を治すための技術で病気を治すことです。端的に言うとこういうことになります。ただし、医療は、健康の維持、増進、病気の予防から検査、それから治療とその後のリハビリ、介護、福祉と社会生活全般に及ぶので極めて広い定義になります。医療機器は、端的な表現をするとこの医療で使う機械器具のことです。これは薬事法という法律が強く絡みます。なぜかといいますと、病院や診療所等でお医者さんが患者に使用するものなので、特別の安全性なり品質保証が強く求められるからです。ですから薬事法という法律でかなり縛りがきついわけです。
 このスライドはちょっと複雑ですけれども、横軸は医療のプロセスで、予防、検査、診断、それから治療、リハビリ。縦軸は医療施設の規模です。さまざま医療機器がありますが、例えば予防、健康医療機器の血圧計や体温計で日常の健康管理をするわけですが、おかしいなと思ったら高機能病院へ行って高度の診断系機器で検査を受けなければいけない。病気が見つかると高度治療機器を使って治療をする、あるいは埋め込み型の人工臓器を入れる。当然、手術中には生体情報モニターとか、あるいはICUに入ると生体の状況をモニタリングするいろんな機器が要ります。無事治療が終わり、退院した後の方の在宅医療機器というものがあります。これを串刺しするような形で病院の診療科というのがあり、ここに専門の先生方がいらっしゃるわけです。医療機器は、薬事法という法律で定義されております。病気の診断、治療もしくは予防に使用され、体の構造もしくは機能に影響を及ぼす器具器械。影響はあくまでもよい影響を及ぼすということが大前提です。それから、政令で定めるもの。法律で決められたものでないと医療機器とは言えないのです。大きくは、五つのカテゴリーがあって、器具器械、医療用品、歯科材料、衛生用品、動物専用医療用具となっています。
 この医療機器なのですが、全部が同じというわけではなくて、侵襲性、例えば外科手術において内視鏡でおなかに穴があく程度なのか、それとも開腹手術で大きな傷をつけなければいけないのかということが、患者に対してどれぐらいの侵襲を与えるかということです。それから、体に対してどれぐらいの能動性を与えるか。生物由来材料が使われているのか等々、それぞれの項目についてリスクが高ければ法規制を厳しくしなければいけないというのが原則です。一般、管理、高度管理と分類されます。旧薬事法ではクラスTからクラスWという言い方をしていましたが、上にいくほどリスクが高くなおかつ法規制が厳しくなるということになります。ハザードというのは危険性、有害性なのですが、リスクというのはこのハザードの大きさにハザードの起こりやすさを加味したものです。しょせんは人間のつくったものを人間の体に使うわけですからリスクはあります。大事なことは、常にベネフィットとのバランスで使われるものであり、この判断というのは専門のお医者さんがされるわけです。今これをしなければ助からない患者のためには、リスクがあってもそれを使わざるを得ないというのが医薬品であり医療機器ということになります。
 医療機器の分類、ちょっと細かいスライドですけれども、先ほど言いました一般、管理、高度管理、この三つのグループがあってそれぞれ多くの品物があります。全部で今3,000品目ぐらいあります。この中で、特に保守管理に厳しいのが特定保守管理医療機器であり660品目あります。また、医療機器のレベルに応じての業態、すなわち製造販売業なのか製造業なのか、あるいは販売業なのか修理業なのか、それぞれによって高度管理医療機器であれば製造販売業の許可を、あるいは製造業の許可をとらなければいけません。また、医療機器の品目ごとに厚生労働省の承認をとらなければいけません。非常に規制の厳しい世界です。先ほど言いましたが、非常にリスクが高いものから下のほうに行けば行くほど規制は緩くなります。特に製造販売業というのはマーケットに対し、臨床で使われていて製品としての問題を起こせば責任をとるのはこの業態です。責任をとらなければいけないという責務を負うことにより、この製造販売業という業態の会社だけが製品を研究開発しつくり売ることができます。製造業というのは、製造販売業から受託して物をつくることです。みずから売ることはできません。
 医療機器は新しいことなのでみずからやってみたいというときに、では何を考えなければいけないかという話になりますと、まずは業の形態です。つくるだけかそれともつくって売るのか、あるいは売るだけか修理するだけか、どんな業態でやっていこうとするのかです。それからつくろうとする製品区分はクラス分類でいうとどこをねらうのか。製品力ですが、今までの製品にない製品力を生み出すためにみずからの会社が持っている固有技術の活用で済ますか、あるいは新技術を導入しなければいけないのかということになります。望ましいのはみずからの固有技術の活用が一番望ましいと思います。こういう三つの切り口で医療機器へ参入する場合は考えなければいけないわけです。
 医療機器の値段の話です。医療機器が保険診療で使用される場合は、診療報酬も含めて医療保険から医療機関へ償還されます。その中に特定保険医療材料というのがあります。これは手術料、薬剤料とは別に算定できる特別な医療材料です。厚生労働省はその料金を医療機器の品目ごとに材料価格基準として告示します。基準材料価格は特定保険医療材料の保険償還価格として機能区分ごとに定められる価格で、国が値段を決めてしまうわけです。機能区分とは何かというと、類似していると認められる特定保険医療材料の一群であり、これが非常に大事なわけです。例えば、新開発された機器があり、これがあるグループの中とすると、幾ら新規性があっても国からこれはこのグループと一緒ですねと認定されてしまうと、せっかくお金をかけて開発したものであっても、高い値段はつけられないのです。要するに製品開発のインセンティブがなかなか働きにくい世界なのです。企業が自由に設定できるいわゆる定価と国が決める保険償還価格、これは消費税入っていませんけれども、これが同一になることが望ましいのですが、どうしても売り込みの競争の結果、企業が設定する定価は保険償還価格より安くなります。したがって、医療機関への納入価格というのは、この保険償還価格と一緒ではありません。
 例えば償還価格の例としてペースメーカーを挙げますと、ここにありますように一番安いので99万1,000円、一番高いものになりますと178万円です。これにリード線だとか、アクセサリーがつきます。かなり高額な医療機器です。厚生労働省がもう10年ほど前から日本の医療機器は値段が高過ぎるので、内外価格差を1.5以下にしましょうということで、2年ごとに償還価格の見直しをしてきております。2002年時点から見ると既に35%値段が下がっているわけです。それで今この値段です。
 次は、医療機器に求められることという話です。
 疾病の高精度診断と病変部の把握が正確にできる医療機器が欲しい。何のためにというと高品質かつ効率的な医療の提供のために、医療過誤や誤診も防止したいという要請からです。
 日本人の3大死因というのは、トップはがん、二番目が心疾患で三番目が脳梗塞です。現在がんで死ぬ方が非常に多く、そのがんの病巣部の正確な診断というのは非常に大事な話です。最先端の検査機器というのはまずPETです。これはポジトロン・エミッション・トモグラフィーというアイソトープ検査です。ブドウ糖で特殊な放射性物質が入ったものを静脈注射します。これががんの病巣部へ行くわけですが、なぜかといいますと、がん細胞はブドウ糖を正常細胞よりも多量に消費するために、がん細胞に多く集まる特性があるからです。がんの病巣部がPET濃淡画像で表示されます。大きさも場所も正確とはいえないのでこれをX線CTの画像と重ね合わせることによって、どこの部位にどれぐらいの大きさのがん組織があるかということが診断できます。これが現在のがんの全身病巣検査をするのに、有効な検査機器なのです。
 画像診断機器の市場ですが、日米を合わせると大体9,300億円。市場規模の大きなものから言うとレントゲン写真撮影機器、それから超音波検査機器、MRI、X線CTの順位となります。日本市場は2,600億円、アメリカが4,800億円でヨーロッパが2,000億円という売り上げになっています。企業別のシェアを見ますと、1996年時点ではドイツのシーメンス社、アメリカのGE、それからオランダのフィリップス社、このトップスリーがシェアの50%を占めました。その後わずか5年経過後にこのアメリカのGE、それからオランダのフィリップス社、それからドイツのシーメンス社の3社の世界市場シェアが8割になっています。日本企業の製品力が相対的に落ちているのではと危惧されます。
 それから、御存じの内視鏡で昔は胃カメラとも言われましたが、現在日本製でよい製品が開発されています。特に今は表面を見るだけではなくて、患部へ照射する赤外線を表面で反射するものと表面層下で反射するものの2種類を使用しています。特に胃がんの病巣部の表面だけではなく、深さ方向の病巣の情報もある程度得られる最新型の内視鏡が臨床で使われています。
 内視鏡の世界市場ですが、日米欧でいいますと日本のマーケットが約19%、アメリカが47%でヨーロッパが34%です。アジアの市場は、まだまだほかのエリアに比べると小さいです。これは、国別の企業ごとのシェアなのですが、日本では圧倒的にオリンパスが強く、フジノン及びドイツのカールストルツ社がこれに次ぎ、それからペンタックスです。アメリカでは、2004年で古いデータですが、オリンパスがトップで、次いでドイツです。ヨーロッパでもオリンパスがトップで、オリンパスのマーケットシェアがもう少し広がっているという話も聞いています。グローバルで大体7割方をとっているのが現状と言われています。日本の企業でグローバルシェアの7割を獲得しているというのは立派なものです。何とかほかの分野でもこういう企業がたくさん出てきてくれることが日本にとっては望ましいことだと思います。
 次に医療機器に求められることとしては、治療用医療機器の充実と低侵襲治療の適用があります。患者の受ける負担が軽減されることが重要であり、低侵襲治療であれば入院期間が短くなり早期の社会復帰につながります。もう一つは、入院期間が短くなるということは、医療費の抑制にもなるということです。
 高齢化と生活習慣病の関係も大切です。高齢化が進めば進むほど糖尿病の患者がふえますし、男性に特徴的なものは狭心症で、心疾患では圧倒的に男性の比率・罹患率が非常に高くなります。それから女性に多いのが骨粗鬆症と言われる、いわゆる骨が弱くなるという変性疾患です。
 診断用や医療用品は別として、手術で使われる治療機器の中で日本国内において何が一番多く使われているかということを、売り上げ金額で順位を見ますとトップが人工腎臓です。次に人工関節で整形外科系、そして血管系メタリックステントでこれは冠動脈の狭窄を治療する医療機器です。大体この整形外科系と循環器系というのが多くなります。
 人工腎臓は血液透析ですが、議員さんの中にも血液透析を受けていらっしゃる方がおられるかも知れませんが、非常に患者にとっては負担の重い治療法です。腎機能がだめになったわけですから、血液中の老廃物や水分をろ過する機器が必要になります。技術のコアはダイヤライザーで、ミクロンサイズの中空糸が数万本この中に詰まっているのですが、この中空糸の中に血液を流して半透膜を介し、外の透析液との不純物の交換をするという機器です。通常は週二、三回、1回当たり4時間から5時間を要しますが、医療行為になりますので、必ず病院へ行かなければいけないという決まりになっています。この病気にかかると社会生活における患者の負担が非常に大きくなります。一方、自宅でもあるいは仕事しながらでもできる透析法というので、腹膜透析というのもあります。これは4時間に1回、お腹の透析液を交換しなければならず、夜寝ている暇もないわけでこれはこれでまた大変です。この血液透析でよいものをと思うのですがなかなかまだ出ていません。
 マーケットサイズで1,200億円、透析患者数は30万人ぐらいです。
 経皮的冠動脈拡張術という治療法があります。これは心臓の冠動脈が狭くなると狭心症を起こしますが、カテーテル検査で冠動脈の詰まったところを見つけてバルーンで拡張して狭くなったところを広げます。さらにステントという金網状のものをバルーンで広げ拡張させて血管内の血流を確保するという治療法です。新しいものはこの金網の表面に薬剤を含むポリマーがコーティングされた薬剤放出型のステントです。再狭窄を防ぐということで非常に症例数がふえ、2007年度国内市場は840億円です。手術手技料は2万2,000点、すなわち22万円です。これにステントが25万8,000円から37万8,000円、1本で済む患者もいるし何本も入れなければいけない人もいらっしゃいます。
 現在、35万本ぐらいが年間使われています。2005年にマーケットサイズが一気に増加しましたが、これはアメリカからの薬剤徐放型のステントが日本に導入されたことによります。これだけのマーケットがありながら日本製品はわずか1.5%で輸入品の独占状態です。
 心臓ペースメーカーを入れている方も多いのですが、心臓の拍動回数が極端に減少する病気に対して、電池と電気回路を組み合わせた電気パルス発生器です。五百円玉と同じぐらいの大きさのものなのですが、これを鎖骨の下のほうに入れ電気刺激を心筋部分にリード線で伝達するというインプラントで、これも非常に大切な医療機器です。中にリチウム電池があり、長もちするとはいえ5年から8年に一度取り出して電池の交換をしなければいけないという課題もあります。
 現在マーケットサイズは427億円で、このペースメーカーの移植術が13万8,000円から20万5,000円、ペースメーカーの値段は先ほど言いました99万円から178万円です。年間に大体6万個ぐらいのペースメーカーが使用されていますが、残念なことに100%輸入品で、日本製は一個もありません。
 人工関節全置換術。人工関節にさまざまなものがありますが、ここでは症例数の多い人工股関節を取り上げます。変形性股関節症という病気になりますと骨の形が変わり、軟骨がすり減って痛くて歩けなくなりほうっておくと寝たきりになってしまいます。これを治すために人工関節という人工の軸受けにかえると、たちどころに痛みが消えるという有用性があります。
 金属材料と高分子材料の組み合わせが一般的ですが、金属対金属あるいはセラミック対セラミックの組み合わせの関節もあります。症例の多い人工膝関節においても、金属と半月板に相当する超高分子量ポリエチレンが使用されています。
 骨折も非常に多いのですが、特に患者にとって大変な骨折というのは大腿骨の頸部骨折で、足のつけ根の大腿骨の首のところが折れる症例です。この骨折を起こすと寝たきりになります。もう一つは腰椎の圧迫骨折でありこれも寝たきりの大きな要因になります。この頸部骨折の治療法なのですが、ひびが入った程度なのかそれとも骨折部がまだくっついているのか、完全に骨折を起こして位置がずれているのか、もしくは骨折を起こして完全に骨片が離れてしまっているのかという、ステージ分類があります。それに応じて内固定材という金属のプレートとスクリューで固定すれば、この骨頭部位に血流が回復して生き返るかもしれない。それは無理だという診断になると、人工股関節を入れるということになるのです。
 これが内固定材ですが、スクリューとプレートで骨折部を固定する、またはガンマネイルという大腿骨の中に髄内釘を入れ、この穴に太いスクリューを通して固定するという治療法です。これはバイポーラ型の人工股関節で、骨盤側の軟骨は正常ですから、大腿骨側だけをインプラントに入れかえます。バイポーラというのは、回転中心が二つあるということです。外側球状関節の回転中心と中の球の回転中心がずれていることから、上から荷重がかかると自動的に脱臼しないように自動調整をする機能があります。
 人工関節の国内市場ですが、2007年度で888億円。人工股関節の症例が8万5,000症例、膝関節が4万8,000症例、2007年度で年間大体13万4,000人の方々が手術を受けていらっしゃいます。人工関節製品の輸入比率はどれぐらいかというと、大体85%で日本製品は15%しかありません。
 医療機器の自給率をもっと上げなければいけないのではないか、そのためにはものづくりの技術をもっとうまく活用しましょう。そうすればもっと日本人にとっていいものがたくさん安く手に入るのではないですか、というお話はよく聞きます。大事なことは、規制緩和と承認の迅速化です。厚生労働省からの承認取得にはとても時間がかかります。アメリカが1カ月で承認をおろしたりするものが、日本の場合は下手すると4年も5年もかかるのです。医療機器の国内産業育成の阻害要因の一つといえます。
 医療機器の世界市場ですが、大体2005年時点で26兆円弱、どの年代においても大体日本のマーケットシェアというのは10%ぐらいと言われています。国別で見ますと、トップはやはりアメリカで11兆円、ドイツと日本は大体2兆数千億円で、ヨーロッパの国が続きます。中国は人口が多いですけれどもまだまだこれからの市場です。
 それから、医療機器の分類別のマーケットサイズですが、この青色が輸入品の比率です。眼科用品及び関連製品、眼科が何でこんなにマーケットが大きいのかという話になりますが、主体はコンタクトレンズでこれは医療機器なのです。コンタクトレンズは、圧倒的に輸入品が多いのです。それから輸入比率が高いのは生体機能補助・代行機器で、先ほどの人工関節もこれに入ります。それから、検査用の処置機器、それからすぐできそうとみんながすぐ飛びつく鋼製の手術用の器具ですが、これも輸入品が多いのです。何でこんなに輸入品が圧倒的に占めるような産業になってしまったかいいますと、怒られるかもしれませんけれども、行政上のシステムエラーであろうと思います。薬事法という法律が示すとおり、薬と同じ縛りを器具器械にかけたことによります。材料から製品の最終工程までを一貫製造とし、アウトソーシングは認められませんでした。これでは工業製品である器械器具でよいものができるわけはないです。数年前に厚生労働省は薬事法を抜本的に改正してアウトソーシングを認めるという方向に変えました。
 このスライドは、医療器具をつくるためのプロセスですが、市場情報やお医者さんの臨床情報をうまく取り込めたら製品改良や開発ができます。新規性のある新製品であれば、研究の世界での新しい材料とか新しい機構と臨床ニーズとのマッチングを図ることにより、新製品の芽が出てくるわけです。ここが医工連携と言われます。製品開発を担当するのは企業です。製造販売元企業が設計しますが、当然これは企業の技術部隊だけではなく臨床医チームとの共同開発になります。これがいわゆる産学連携です。新材料であれば必ず臨床治験という患者の協力による臨床評価をしなければいけないことに加えて、何よりも大事なことは臨床医の臨床ニーズに基づいたものでなければならないのです。前臨床試験でよい結果が得られれば、臨床治験を経て臨床試験のデータを整備して承認申請と承認取得という手順になります。私は、真の意味での産学官連携が本当に役に立つのはこの承認申請の段階ではないかと思うのです。先ほど言いましたとおり、薬事法は長きに渡り医療機器に対して一貫製造という縛りをかけてきました。なおかつ今でも前臨床試験の生物学的安全性データはGLP適合施設内でとったデータであることが求められ、大学等の研究機関のデータを厚生労働省は参考資料としてしか見ないのです。またGCP適合医療施設以外での臨床試験は認められませんし、ものづくりする上での品質管理においても非常に厳しい規制がありますが、これらは当然のことなのですが、産学官の連携という以上は、費用負担が安くなおかつ短期間で新製品が承認されて臨床現場で使われることが理想的だと思います。
 少し話が長くなりますが、次は人口股関節の課題について説明します。このスライドは縦軸に問題の発生率、横軸は術後の経過年数です。人工股関節置換術後、比較的早期にまれに感染という問題が生じますがこれは非常に怖いことです。さらに時間が経過すると入れたインプラントが緩んでくるという課題、軸受けですから摩耗しさらには破損を生じることがあります。
 形状の最適化は大切であり、その手順は患者のX線CTデータをベースに3次元的な形状評価を行うことが求められます。あわせてどのような材料を選択するのかということも決めねばなりません。
 金属材料や高分子材料あるいは無機材料が適材適所に使われることが重要です。高分子材料というのは非常に劣化しやすいし、強度も低く摩耗もしやすい。無機材料すなわちセラミックスは生体にとって非常によい材料なのですが、ガラスのように突然壊れるという脆性破壊という問題を抱えています。さらに焼き物ですから非常につくるのが難しいのです。金属材料というのは、大体バランスのとれた材料だといえます。ただし、磁性材料なので、MRI診断対応のときは問題を起こすことがあります。
 このような材料を体内に入れると、生体はいろんな反応を起こします。急性的に問題を起こすのは血栓反応、それから炎症反応、次いでアレルギー反応です。異物に対して生体は拒否反応を起こし、それは異物反応と言いますが自己と非自己の識別なのです。臓器移植でも問題を起こすというのは、結局自分の体の一部なのか、それとも違うものかということを生体が認識するということです。医療機器で材料に何を使うかということは、生体に対する直接的な安全性であり非常に重要です。そのために厚生労働省はこういう評価試験で安全性を担保しなさいというガイドラインがあります。
 設計段階で、CAD形状データで3次元形状を光硬化性樹脂でモデル化するという技術があります。これは臨床医とのコミュニケーションをとる上で非常に有効です。臨床の先生に図面で示しても御理解いただけない。こういう形ですよとその現物の形を臨床医に示すことが非常に大事になります。
 設計形状で本当に壊れないかという確認での疲労試験や強度試験に先立ち、コンピューター解析であらかじめその強さを予測する方法も一般的です。
 それから金属材料に限定すれば、その材料は鋳造材か、あるいは鍛造材なのか、これらの材料の棒材や板材を切削加工で最終の形をつくり仕上げ加工をするというのが金属材料の製造プロセスですが、これだけでは最終の医療製品たり得ないのです。
 さらに、付加価値として人工関節であれば、骨とインプラントの境界で緩まないようにしなければいけないので、表面の凹凸形状をポーラスといいますが、物理的結合のためにポーラス形状をつくらなければなりません。骨組織がポーラス形状の中に侵入しやすくするように、無機材料をコーティングして化学的な結合も考えねばなりません。
 このスライドが表面のポーラス材料で、純チタンのプラズマスプレーコーティングです。また、これはコバルトクロム合金や純チタンの小さなビーズを焼結する方法もよく適用されます。純チタンの細いワイヤーを焼結して凹凸形状をつくる製品もあります。もう一つはマクロ的なステップ形状を機械加工で作製し、骨組織への荷重伝達をうまく分散させるという工夫もされています。
 これがハイドロキシアパタイトコーティング、先ほどのポーラス構造の上にハイドロキシアパタイトコーティングが施されます。そのことにより時間経過とともに骨との固着性がよくなるというような機能が求められるわけです。ですから、機械加工ができれば、インプラントが完成するかというと、そういう単純なものではないのです。
 このスライドは同一メーカーでの製品ですが、このように多様な製品バリエーションがあります。また、リビジョン、すなわち再手術ではその患者の骨形成の状態に応じて多様なデザインのものが必要になるのです。
 人工股関節の機能の一つに軸受けとしての耐久性がありますが、これについては非常に多くの研究がなされています。基本的には高分子材料というやわらかい材料と金属のかたい材料の組み合わせにするか、それともかたい材料同士にするのか、例えばセラミック対セラミックあるいは金属対金属の組み合わせです。かたい材料同士にすれば高分子材料より摩耗量を減らすことが期待されますが、これは身体の中に入れるわけですから、人間を使ってデータをとるわけにいかないのです。
 このスライドは人間が歩くときの動きと荷重をそのままシミュレートする試験装置で、この技術はアメリカを中心に発展した関節シミュレーターといわれるものです。
 金属対ポリエチレンあるいはセラミック対ポリエチレンに比べて、金属対金属あるいはセラミック対セラミックでの摩耗量というのは画期的に減少しました。これがよいことかというと、そうとも言えないのです。やわらかい材料で摩耗量が多いということは、産生される摩耗粉の形が大きいということです。大きなものが体内にあるとどうなるかというと、細胞が周りを取り囲んでカプセル状になるのです。ところが小さな摩耗粉が出てくると、マクロファージという細胞がその摩耗粉を食べるわけですが、そうすると骨を溶かす生理活性物質を放出するというメカニズムがあるのです。摩耗量は減少するが、かたい材料同士がすり合うと出てくる摩耗量が少ないのですが、摩耗粉の数もかたい材料同士のほうが多いという研究論文もあります。骨融解、オステオライシスという病名ですが、骨を破壊するリスクもやはり残るわけです。ただし、この結論が出てくるのに人工関節の製品は10年から15年の期間をかけて評価しなければいけません。
 最後に、いわて医療機器事業化研究会のお話をします。まだまだコンセプトの実現までは至っていないのですが、岩手県でやる以上は岩手県の地の利といいますか、その地域の利点を有効活用しなければいけません。
 岩手医大という立派な病院があり、県内の県立病院の数は都道府県の中で全国一多いと聞いております。これらの医療施設の臨床医の方々の持っている医療ニーズを把握し、これを会員企業の持っている技術シーズ、すなわち強みとマッチングさせてよいものをつくる可能性が大いにあるものと考えます。岩手医大は、私立の大学で医学系3学部、医学部と歯学部と薬学部がありますが、この3学部ともあるのは日本には3校しかないのです。あとは、昭和大学と日本大学です。
 医療機器の製造販売業者は、製造業も含めて大体日本国内に1,543社あります。これは、ほかの産業構造と一緒で中小企業が大半を占める世界です。このスライドで見ていただきたいのは投資額です。医療機器の年間売り上げ5,000万円以上の企業からのアンケートをとり、厚生労働省に回答が来たのが平成17年で376社、研究開発費の1社平均というのは3億8,000万円、それから設備投資額は2億4,000万円、これが平均値です。500億円以上の売り上げ9社とありますけれども、この中には外資系の販売会社も入っています。この中には欧米の研究開発費、それから設備投資額も入っていると考えられます。医療機器というのはこの程度の投資の要る世界です。また、この表に挙げているのは医薬品ですが、医薬品企業では研究開発費も設備投資も医療機器の1けた上の世界です。マーケットサイズも当然1けた上です。日本国内の医療機器全体のトータルのマーケットは2兆数千億円ですが、医薬品は医薬部外品等も入れると20兆円を超える世界です。
 いわて医療機器事業化研究会の現状ですが、企業会員が57社、それから特別会員、これは岩手医大や工業技術センター並びに岩手大学等のサポート機関として13機関で総会員数は70社・機関です。正会員57社の内訳ですが、開発設計、製造が15社、ソフトウエアは3社、それから金属加工専門18社と樹脂加工8社及び表面処理が1社、その他販売業も含めて12社。研究会の役員は、いわて産業振興センターや県などは直接関与せず、会員企業の自主的な活動に期待し、代表幹事ということで3社の方に役員をお願いしています。事務局は、いわて産業振興センターがこれを担います。
 業界団体3団体、日本とアメリカとヨーロッパから厚生労働省へ行政への要望ということで3項目を挙げています。それは、ことしの4月からまた償還価格が見直されるということを想定しての話ですが、償還価格の適切な価格設定をしてくださいということです。イノベーションが適正な評価を受けていませんと先ほど言いましたが、償還価格というのは品目の分類に入ってしまうとその価格以上の値はつけられません。それを何とかイノベーションを適正に評価していただき価格に反映してくださいという要望です。二つ目は、非常に償還価格が低い製品がありますが、安くてもうけが少ないからだれもつくろうとしないという問題があります。それだと医療機器を使用する臨床の現場は困るわけです。どんなものでも必要だからあるわけで、このみんながやりたがらない医療機器の安定供給のための維持、確保のための施策が欲しいとの要望です。それから為替変動への柔軟な対応です。一度その時点で為替相場を決めてしまったら2年間そのまま固定相場ですが、もう少し再算定ということに取り組んでほしいという要望です。これが業界3団体から去年の12月に出された厚生労働省への要望です。
 いわて医療機器事業化研究会の事業化のスキームですが、まずはその研究会の会員企業と岩手医大を初めとする臨床医との協力関係の構築です。臨床ニーズがあり企業にはこういうシーズがありますが、これを何とか具現化できませんかという試みです。これが研究会活動のその1で、情報収集です。研究会活動のその2として、開発対象が決まれば設計・試作と試作品の評価を行います。でき上がった試作品を岩手医大の先生方に機能評価をしていただきますが、この段階ではいろいろ専門的な評価をしなければいけませんから、工業技術センターや岩手大学のような特別会員の支援が求められます。比較的規制が緩い一般医療機器や管理医療機器であれば、会員企業みずからが製品化あるいは事業化の可能性があります。高度管理医療機器で非常に承認申請だとか品質管理のうるさいところについては、やはり大手の医療機器の製造販売元企業の助けをかりなければいけないでしょう。大手企業との話を提案するというのが研究活動のその3になるでしょう。これはうまくいけば環境を整えて委託製造という形で返ってきます。このようなステップで何とかいかないかなというところで、現在模索しているところです。
 このスライドは内視鏡使用の手順です。患者に挿入して体内を観察・撮影・診断し、必要ならば処置をします。使用後は感染防止のために洗浄し保管します。これらの手順からわかることは内視鏡は診断にも使われるし治療にも使われますが、内視鏡が入れやすくとかあるいは見やすくとかいう臨床ニーズ、すなわち診断プロセスごとにいろいろなことがあります。この診断プロセスのニーズに対応する形で技術シーズがあります。挿入しやすくするための軟性鏡、やわらかいファイバースコープを使いましょう、それから見やすくするためにCCDカメラを使いましょうとかいうのは技術シーズです。単に処置だとか診断だとかいう直接的な製品だけを見るのではなく、プロセスごとにそれぞれさまざまな技術シーズがあるということです。その気になってみれば、さまざまな新しい発見があるはずです。このような観点が、医療機器事業化研究会での開発案件としての一つの切り口になるのではないかと思います。
 このスライドは、総理府から高齢社会白書というのが毎年出されますが、横軸が年度で縦軸が人口の年齢分布です。生産年齢人口は15歳から64歳までと定義されていますが、2000年度で見ますと大体8,600万人ぐらいの生産年齢人口がありました。これが高齢化とともに、もう一つは少子化とともにこの生産年齢人口というのが減少していくわけです。2030年を見ますと6,900万人で7,000万人を切るわけです。同じ生産年齢人口が必要ならば、お年寄りもみんな働かなければいけないのですが、それが無理な場合この不足を何が補ってくれるかというと、ロボットのような機械力もあるでしょうし、あるいは海外からの労働力に頼る部分もあるでしょう。日本人自体で生産形態が保たれるためには、元気なお年寄りがいっぱいいなければいけないのです。死ぬまで元気で働けるという世界でなければいけないのです。そのために医療機器というのは非常に大事なものだと思います。
 昔から言われる暮らし向き3要素として衣・食・住があります。衣、身にまとうことですが、今やもう寒さ暑さを防ぐということを超えてかなり多様化しています。日本人で生まれた以上は、日本人としての衣、伝統、このあたりを見直す必要があるのではないかと思います。それから、食、これは自給率40%程度ということで非常に問題視されていますが、これを確保するというのは非常に大事です。ヨーロッパの寒い国に行き驚かれるのは、いじけたりんごでも自分たちの国でとれた食料品、高くても彼らは自国の農産物を食べることを当然と考えます。安くておいしいものは輸入すれば手に入りますが、自分たちの国の農業が衰退してしまう危機感があるのです。そういうことを日本人はちょっと失いかけているのではないかという気がします。もう一つは住の問題です。こんな環境のいい岩手県に住んでいるとわかりませんが、都会では高齢世帯の大きな問題です。マンションだとかアパートの建てかえのお金がなければその支援体制もなく、高齢化社会の住環境の維持をどうするかは非常に大きな問題です。紀元前500年ぐらいの中国の春秋時代の斉の宰相管仲の言葉で、衣食足りて礼節を知るというのがあります。生活に余裕ができて初めて礼儀や節度をわきまえられるようになるとは言われているけれども、人間というのは実に浅はかな生き物でいつまでたってもなかなか礼節を知ることはできないのかと落ち込むこともあります。
 暮らし向きにきょうの話のまとめとしてつけ加えたいことは、医療の医です。病を治すこと。医療の公平性と医療費の負担をどうするか、大きな問題ではありますけれども、衣料の衣よりは医療の医を加えた医・食・住がいかにうまく機能するかということが非常に大事なことのような気がします。
 早口で申しわけございませんでしたがこれで私の話は終わりとします。御清聴を感謝いたします。
○中平均委員長 御講演ありがとうございました。
 それでは、これより質疑、意見交換を行います。ただいま御講演をいただきましたことに関し、質疑、御意見等ございましたら、よろしくお願いいたします。
 私から一つ。産業振興センターのほうで、医療機器の事業化のスキームということでやられているということですけれども、具体的に言ったら岩手県内でどういうものができているのか、どういう動きがあるのかということを先生のほうではどう感じていますか。
○大森健一講師 正直なことを申しますと、非常に忙しい臨床医の意見をお聞きし、それをものづくりとして企業との連携をとるという、そういう右の端と左の端の話をうまくつなぐような話で非常に難しいことです。岩手医大リエゾンセンターの協力をいただいて、臨床医のアンケートをとりました。どんなことに課題があり、どういうものの開発を望んでいらっしゃるかという意見集約をして、できそうなものから二、三のテーマについて、企業と調整を始めたところです。本当にものになるかどうかというのはこれからの話であります。
○中平均委員長 先ほどの御説明ですと、結構、技術的に難しく専門技術が要るとか、ちょっと長い期間がかかるというお話でしたけれども、岩手県内の企業さんが持っている技術、そのような中で医療機器の事業化ということは、先生のほうから見て可能性というのはどれくらいありますか。今、開発段階ということでしたけれども、どのような感じでしょうか。
○大森健一講師 私は期待しています。公には医療機器の製造販売元でも製造元でもありませんが、特定の大手企業からのOEM受託生産でビジネスをやっていらっしゃる企業さんも県内にある程度いらっしゃいます。企業機密として公表されていませんが、さまざまな経験を積まれている会員企業さんはほかにもたくさんいらっしゃると思っています。
○中平均委員長 そういうふうな意味では、こういう形でも大丈夫、あとはマッチングということでしょうか。
○大森健一講師 ものづくりは、何でもそうですけれども、その会社のトップがどれだけ熱心に取り組んでくれるかということに尽きると思います。行政頼みといいますか、支援策があるんだったら何とかちょっと手を出してみようかなという、そういうことではやはり難しいでしょう。医療機器という会社にとって大事なものを最終製品化するというところまでいくのは無理なような気がします。どうやって各企業さんのやる気を引き出せるかというのが、恐らくはいわて産業振興センターとしての一番大事な仕事のような気がします。単に予算的な補助だけではないと思います。
○中平均委員長 ありがとうございます。
 各委員のほうから御質問、御意見等ございませんでしょうか。
○渡辺幸貫委員 私はよくわからないのですが、歯なんかはインプラントというのがありますね。大腿部のものなど私の母もやっていますが、次第に摩耗していく確率が年数でどれぐらいか、心配の度合いを、さっきのグラフには年数がなかったものですから、もうちょっと詳しく聞かせてもらいたいと思います。あともう一つ、歯なんかの場合はインプラントなんていうのは大分普及しているのですけれども、自由診療というので物すごく高く、岩手県だったら1本40万円も50万円もするらしいです。だけれども、入れ歯をするよりははるかに使いやすいので、そういうものが自由診療ではなくて、規制された部分でちょっとの補助でいいですから何とかならんものかなという気がするのですが、そういう制度的な障害というのですか、その辺はどういうふうに感じていらっしゃるかお伺いします。
○大森健一講師 まず、どれぐらいもつものかということですが、横軸に時間、縦軸に生存率という言い方をしますが、手術した直後は生存率100%です。時間とともに問題を起こし、そのインプラントを撤去して新しいものに入れかえる。そういう患者さんがふえてくれば生存率が下がるわけです。生存率は今の人工関節で言うと、大体、術後15年から20年たっても90%以上の方は問題ありません。特に日本の場合は非常に問題発生が少なく、それは人工関節の適応する年齢にある程度の制限があるからです。これは、お医者さんが人工関節適応年齢というのを一般的には50代以上と限定されています。50代までの若い患者さんというのは、保存療法といいますが人工物を入れずに何とか生活の質を維持しようとします。高齢者になって、ほとんど日常生活だけで、特に労働だとか、そういうことがなければ、恐らく20年、25年はもちます。年齢制限を設けているというのは、例えば50歳代で手術をして20年もつと、70歳になります。問題を起こして、また新しいのに入れかえてそこからまた20年もつ。そうすると、トータルで40年ですから、90歳まで一応もつことができるわけです。3回目の手術となると、非常に患者に対して負担が大きいわけです。いつまでこの患者さんが生きられるかということも想定して、手術適応年齢というのを決めていらっしゃるのです。ですからそんなにはすぐ壊れたり、すり減ったりするものではありません。
 もう一つは、歯科で適用されている混合診療のお話ですけれども、一般の医療保険と混合診療とがありますが、すべて保険適用されるのが原則です。特に厚生労働省、行政側、政府の考え一つだと思うのですけれども、医療費の負担というのは患者個々が受けなければいけませんが、国民一人一人の税負担というのもふえる方向にいかざるを得ないと思います。一般医療でも混合診療は導入されるかというと、その方向性も否定はできないと思います。現にアメリカは民間保険しかないわけです。アメリカは現在医療の格差があり、お金がない人はもう真っ当な治療さえ受けられないという状況もあります。患者がいてその治療法を決めるのは、お医者さんが決めるわけでもなく病院が決めるわけでもなく、保険会社が決めるとさえ言われます。どれくらいのレベルの医療保険に入っているかによって、その患者が受けられる医療のレベルというのがおのずから決まってしまうというのがアメリカの医療システムです。アメリカではその反省もあって、オバマ大統領が非常に頑張って、公平な医療のためのシステムづくりについてアメリカ議会で協議しています。日本は逆に混合診療の方向に行かざるを得ないような気が私はします。よいとか悪いとかいうことではなくて、必要なことにはそれなりの負担は覚悟しなければいけないと思います。
 医療機器がなぜ日本では育たなかったかという理由は、先ほど行政側のシステムエラーと説明しましたけれども、余りにも過剰な規制をしいたがために、企業の腰が引けてしまったのです。原材料を供給するかなり大手の企業であっても、医療機器に使われているという話が伝わった途端に材料の出荷をやめたりするのです。いつも感じるのですが、材料分野で強い国でありながら、日本で医療機器のものづくりしている企業が使用するチタン合金やコバルトクロム合金等は輸入品なのです。なぜかというと、医療機器というのはそんなに年間何十トンも材料を使うようなものではありません。極めて少なくていいのです。その少ないということに対して、なおかつ医療機器であるがゆえに不純物がないとか、生体材料としてさまざまな基準がありますから、大手の材料メーカーは対応してくれないのです。材料が欲しいと言いますと、何十トン要るのですかと聞かれます。そんな話ではないのです。年間に数百キロあったら済む話です。もう少し材料を含めて医療機器の最終製品に至るまで、いろいろな革新が求められているような気がします。済みません、答えになっていないかもしれません。
○渡辺幸貫委員 ありがとうございます。
○中平均委員長 ほかにございませんでしょうか。
○阿部富雄委員 例えばペースメーカーだとかステントなんかであれば、規格のものをつくればどなたにでも合うといいますか、それで対応できると思いますが、今お話しいただいた人工関節なんかの場合は、長さだとか、大きさだとか、強さだとか、みんな個々その人その人によってばらばらですよね。したがって、できた製品が必ずその人に合うのではなくて、必ず加工するということが出てくるわけですよね。そういうところの加工の部分に力を注いだほうが、むしろ私はいいのではないかなと思うのです。既にこの人工関節なんかの製品というのは、もう市場が満杯になっているような状況だと思うので、その人その人の個人に見合うような製品に加工するという技術のところに力を入れていくということにはならないのでしょうか。
○大森健一講師 かつて欧米でカスタムメイド型の人工関節、患者さんのCTデータとX線写真等のデータに基づいて設計をし、その患者さんのためだけに製品をつくるというビジネスが試みられました。カスタムメイドといいますけれども、コストが非常に高くつくという課題があります。現在は、既定のデザインのものであっても、1ミリごとに洋服のサイズと同じように多くのサイズや形状が用意されているのです。ですから、なるべくどんな患者さんでもどんな体格の人でも合うような工夫がされているのです。そこへあえてその患者さんの骨格にうまく合ったものをつくらなければいけない場合というと、手術を繰り返した結果、大切な骨がなくなってしまっているような特殊な症例に対するものです。このカスタムメイドというのは、現時点では必要数が少ないのです。ほとんどの場合は洋服で言うと既製品でまず間に合うのです。
 それから、カスタムメイドをやること自体に厚生労働省が非常に難色を示します。1個当たりの価格が高くなるからです。いかにして医療費を下げるか、足りない分をどうやって税収で賄うかというのが厚生労働省の一番大きな行政上の課題です。
 ペースメーカーもステントもほとんどアメリカ製なのですけれども、ペースメーカーなんて簡単なものは、日本の技術を使えばもう簡単にできそうなのですが、なかなかこういうのをやろうとしません。技術を持っている企業につくろうとする意志や意欲がないことに加えて、先行の海外企業に特許でかなりプロテクトされているということもあります。それから、冠動脈のステントで金網なのですけれども、実はあの金網の模様、パターン1個1個が特許なのです。血管が曲がったところに入れる場合もありますから、拡張力があると同時に血管の曲がったところで折れ曲がらず、血管の内側に張り付いてくれないと困るのです。新技術というのは特許でプロテクトされます。後発で入ろうとすると高いライセンス料を払わなければいけません。
○佐々木博委員 ありがとうございました。
 本県ではものづくり産業として、まず自動車、それから半導体を中心とする電気の次の第3の柱にこれがならないかというようなことで今取り組んでおるというふうに認識しています。今も先生からのお話いろいろ伺いましたけれども、一つには随分特許の壁もあるのでありますけれども、例えば自動車でも、あるいは半導体関係でもそうですけれども、岩手県の場合、製造基地にはなっていますが、残念ながら頭脳の基地にはなっていない、これが実態だというふうに思います。それで、例えばこの医療機器も、あるいはニーズはある程度把握できるかもしれませんし、あるいはOEMの供給もしているということでしたから、製造の技術があるところもあるかもしれませんが、問題はその設計開発の部門、ここがきちんとしないと、一つの柱としての産業化は非常に難しいのではないかなというふうに思うのです。ただその開発、製造をするためには、それなりの大学だとか、高度な研究機関だとか、そういったところとの連携も必要だと思いますし、そういった点ではどうしても置かれているこの地理的な条件とか、やっぱり不利なところも現実にあるだろうと思うのです。大都市のいろんな大学があるとか、研究所があるようなところとは違います。そういった中で、どうなのでしょうか、それでも本県として、やはりこれからものづくりの第3の柱としてやっていける下地といいますか、可能性というのを先生はどう考えていらっしゃるのか、率直なところをお伺いしたいと思います。
○大森健一講師 医療機器というのは特別なものではありません。非常にシンプルで、実に単純なものなのです。ペースメーカーを見ても、リチウム電池とレギュレーターにワイヤーを組み合わせたものです。特別な設計技術が要るかというと、必ずしも必要としません。大手の下請企業として、部品を設計・製造している技術があれば、ある程度の医療機器はできます。X線CTやMRI、先ほど説明しましたPET―CTだとか、こういう高度診断機材についてはすぐには無理です。少なくとも今の医療機器の2兆数千億円の中の半分ぐらいは県内の企業さんの技術でできる話なのです。特別なものではありません。特別なのは使用目的が医療ということと、使用するのがお医者さんという特殊な技能を有する方々が使われるということだけなのです。ですから特別なものだということではないのです。一般的な工業製品と一緒なのです。患者のために医者が使いやすく、そこをどう工夫するかということだけです。ここを県内の企業さんが理解できれば、いろいろなものができる可能性はあると思います。機会があるごとに県南から県北まで企業さんを訪問し、社長さんや工場長さんとさまざまな話をしますが、理解していただくことの難しさも痛感しております。
○佐々木博委員 ありがとうございます。
○中平均委員長 ほかにございませんでしょうか。よろしいですか。
 (「はい」と呼ぶ者あり)
○中平均委員長 ほかにないようですので、本日の調査はこれをもって終了させていただきます。
 大森様におかれましては、医療機器に求められることというテーマで、その可能性についてもいろいろ教えていただきましたし、今ニーズをすくうというところからまず入ったという御説明がありました。やはり私どもどうしてもすぐに成果が出ることを期待してしまうところがありますけれども、すぐにはできるものでもないかもしれませんが、これがうまくいくことを期待いたしますし、また私どももそれに向かって議会のほうで活動していきたいと思います。
 本日は本当にお忙しいところありがとうございました。
 委員の皆様には、次回の委員会運営等につきまして御相談がありますので、少々お待ち願います。
 次に、4月に予定されております次回の当委員会の調査事項についてでありますが、御意見等はございませんでしょうか。
 (「なし」と呼ぶ者あり)
○中平均委員長 特に御意見等がなければ、当職に御一任願いたいと思いますが、御異議ありませんか。
 (「異議なし」と呼ぶ者あり)
○中平均委員長 御異議なしと認め、さよう決定いたしました。
 次に、委員会調査についてでありますが、当委員会の県外調査につきましては、1月26日火曜日から28日木曜日までの2泊3日の日程で実施いたしますので、前もって御連絡していたかと思いますが、よろしくお願いをいたします。
 ちょっと休憩させていただきます。
 (休憩)
 (再開)
○中平均委員長 休憩を終わります。
 以上をもちまして本日の日程は全部終了いたしました。
 本日はこれをもって散会いたします。