子育て支援・少子化対策特別委員会会議記録

子育て支援・少子化対策特別委員会委員長  工藤 大輔
1 日時
  平成18年9月5日(火曜日)
  午前10時5分開会、午前11時48分散会
2 場所
  第4委員会室
3 出席委員
  工藤大輔委員長、高橋雪文副委員長、及川幸子委員、千葉康一郎委員、関根敏伸委員、
 ザ・グレート・サスケ委員、三浦陽子委員、樋下正信委員、工藤勝子委員、飯澤匡委員、
 小野寺好委員、高橋博之委員 
4 欠席委員
  なし
5 事務局職員
  菊池担当書記、石井担当書記
6 説明のために出席した者
  参考人 公立大学法人 岩手県立大学 社会福祉学部 福祉臨床学科
       助教授 三上 邦彦氏
7 一般傍聴者
  1人
8 会議に付した事件
  児童虐待とネグレクトについて
9 議事の内容
○工藤大輔委員長 おはようございます。ただいまから子育て支援・少子化対策特別委員会を開会いたします。
 これより本日の会議を開きます。本日は、お手元に配付いたしております日程により会議を行います。
 これより児童虐待とネグレクトについて調査を行います。本日は講師として、岩手県立大学社会福祉学部福祉臨床学科、三上邦彦助教授をお招きしておりますので、御紹介申し上げます。
○三上邦彦参考人 三上でございます。きょうは、どうぞよろしくお願いいたします。
○工藤大輔委員長 三上先生の御経歴につきましては、配付をいたしているとおりでございますので、御了承を願います。
 本日は「児童虐待とネグレクトについて」と題しまして、三上助教授より御講演をいただくこととしておりますが、三上助教授には御多忙のところ御講演を引き受けていただきまして、心から感謝を申し上げます。
 これから御講演をいただくわけでありますが、後ほど三上助教授を交えての質疑、意見交換の時間を設けておりますので、御了承願います。
 それでは、三上先生、よろしくお願いいたします。
○三上邦彦参考人 それでは、児童虐待と子供のネグレクトについてお話をしていきたいと思います。
 先生方のお手元の方に資料がございますので、その資料に沿いましてお話を進めてまいりたいと思います。
 岩手県でも子供の虐待に関しては、平成15年に相談受理件数が200件を超えて、16年227件、それから昨年度も250前後ぐらいの虐待の相談件数が上がっておるわけですけれども、昨今子供の虐待に関しては非常に関心が高くて、マスコミ等でも取り上げられて、何か事件があればその中でもさまざまな課題を提起しております。
 もともとは、大もとで児童虐待がどこからどういうわけでこういうふうに浸透してきたのかというようなことを若干最初に説明させていただきます。実は1874年にアメリカのニューヨークで、親から殴られて飢え死にしそうになっているメアリー・エレンちゃん、この左側の女の子ですね。これを見ますと、足元が汚れていたりとか、手に非常に傷があったりとか、顔が汚れていたりとかしますけれども、この女の子がきっかけになっております。
 当時は、子供の人権が非常に無視されることが多くて、虐待されたりとか、あるいは放置された子供を保護する活動というのはほとんどなかったわけですけれども、このメアリーさんに同情したニューヨーク市民が、事件がきっかけとなって子供の虐待防止が始まりました。1874年にニューヨーク市で、世界で初めて児童虐待防止協会が創設されております。それにかかわった人たちがヘンリー・バーグさんと、エルブリッジ・ゲリー弁護士などです。
 大もとは子供の虐待で、虐待の防止協会ができたのですけれども、その前身が動物の虐待防止の活動をこれらの人たちがやっていたのです。動物の虐待も子供の虐待も虐待というような点では同様の視点であるというところから世界的なところで始まっているということがございます。
 アメリカでは、1962年にドクター・ケンプという方なのですが、バタード・チャイルド・シンドローム、被殴打児症候群、いわゆる現在で言う身体的な虐待ですけれども、このケンプさんたちが研究した身体的な虐待に関連する研究がWHOを通じて世界的に広がってきたという経過がございます。一方で我が国は、本格的に子供の虐待に対して対応するようになったころというのは1990年代でわずか十数年ぐらい前から始まっています。
 それで、ちょっとおさらい程度なのですけれども、児童相談所が2004年度に虐待件数として相談処理した数が3万3,408件ほどあります。その内訳を見ていきますと、これは年度別ですけれども、1990年から見てももう30倍ぐらいの件数がふえてきています。特に2000年に、いわゆる児童虐待防止法ができますけれども、それを境に急にふえている、そういった状況もございます。
 これは、平成16年度分の内訳ですけれども、身体的な虐待が4割強、あとはネグレクト、いわゆる保護の怠慢であるとか養育拒否とかと言われる内容ですけれども、それが36.7%、それから心理的な虐待が15.6%、性的な虐待が3.1%。主に身体的な虐待とネグレクト、それから心理的な虐待が主な虐待として児童相談所の方で受理しています。
 それから、これは当然といえば当然なのですけれども、実母が62%を超えていますけれども、これは日々日常生活の中でこの数値ですけれども、実母が虐待者の割合の中で6割以上占めています。日常生活の中で子供と一番接する時間が長いのは母親が多い現状があって、それに対してそれらの人たちに対するサポートが非常に必要があるのだということだと思います。
 それから、被虐待児の年齢構成ですけれども、3歳未満、3歳から就学時、これを合わせますと4割を超えるわけです。5割弱ですけれども、45%を超えるわけで、そういう意味では1つは就学前までの段階です。それから、小学生が37.4%となっています。これを合わせますと約8割ぐらいになっていますけれども、小学校6年生までで8割前後ぐらいありますので、これらの子供たちの年齢が非常に虐待を受ける、そういった可能性が高いということが示されています。
 強制措置申立件数というものは、児童福祉法28条により家裁に申請している件数ですけれども、親の同意を必要としない形での児童福祉施設への入所というのがあるのですが、その申し立てを家庭裁判所の方にするわけですけれども、平成11年度が88件の申請がありまして、認められたのは48件。それから、平成16年度は、全体で186件の申請のうち認められたのは147件ありまして、ここ5年余りにかなりの数、3倍ぐらいの申立件数がふえて、なおかつ承認された件数もまた多くなってきている現状があります。これは、親が同意しないような形での児童福祉施設の入所ということで、児童相談所が対応する中で、早い段階で児童福祉施設の方を利用しながら子供のケアもあわせて考える、そういった体系をつくっていく。
 虐待相談の処理種類別内訳ですけれども、面接指導といった基本的には在宅で支援するということがありますけれども、その他に施設入所ですね、それから里親等の委託、そういった形での処理があります。ただし、この0.7%の里親等の委託については非常に全体的には少ない数になっていまして、厚生労働省の方では里親の積極的な活動、援助活動の推進に取り組んでいます。ただし、全体的には面接指導というのが多いわけですけれども、要は在宅でかかわることがとても多いわけですが、この辺のかかわりがもう一つどういうような中身をとっていくのかということが課題になってきます。
 それから、続いて、死亡事例の発生ということで、これは平成12年の11月から平成16年の12月までで、どれぐらいの件数があったかということと、どういった機関がかかわっていたのかというようなことを示す数字です。平成12年ですから、児童虐待防止法施行の部分があるわけですけれども、それで亡くなっている数が202件あるのです。それで、そのうち専門機関として児童相談所がかかわっていた事例が約3割、29.2%。それから、関係機関が虐待やその疑いを認識していたが、相談所がかかわっていなかったのが30.7%。それから、関係機関と接点はあったが、家庭への支援の必要性はないと判断していた事例が21.3%。これは、児童相談所はかかわっていませんけれども、それとなく疑いを関係機関が認識していた、あるいは、かなりの数ですけれども、8割ぐらいは何らかの形で関係機関がかかわったのです。にもかかわらず死亡事例が発生しているということがあるわけで、この辺は危機介入であるとか、あるいはリスクアセスメントに関連する部分での課題が実は相談機関にもあるのだと話しております。
 次の資料は、平成12年に児童虐待防止法ができた、その主文であります。
 今のは、改正児童福祉法が2004年の11月に参議院の本会議で可決されておりますけれども、変わったポイントについて、ここでお示ししてあります。1つは、全市町村に児童虐待や非行、養育などの相談窓口を設置する。とにかく児童相談所というのは、その後方支援と難しい深刻ケースに対応する。
 2番目が学校、警察などが参加する地域の虐待防止ネットワークを要保護児童対策協議会として法定化して、参加者に守秘義務を課すと。この参加者に守秘義務を課すというのは、例えば民間で虐待のさまざまな相談を行っている機関などもあるわけですけれども、従来は守秘義務については民間の機関の方にはなかったわけですけれども、参加者に守秘義務を課す、という一文を入れたことで、民間の機関も参加しやすくなったのです。というところで、この虐待防止ネットワークの幅がより広がったというふうなことがあります。
 それから3番目が、親の同意がないまま子供を児童養護施設などで預かる場合、これまで無期限であったわけですけれども、それを2年間とした。つまり児童処遇というか、子供を預かる上での専門性を高めて、親との関連性、治療的な関係も含め、あるいは子供へのケアも含め、きちんとした形で道筋を立てるというようなことが背景にございます。
 4番目が虐待をする親の立ち直りを促すために、家庭裁判所が児童相談所に親への指導を勧告する制度を導入する等々です。家庭裁判所が、今まで積極的な形というのはそれほどないのですけれども、家庭裁判所が児童相談所に親への指導を勧告する、そういう形で児童相談所の親へのかかわりを法的機関が初めて保証する制度を導入したということです。
 ちょっと前後しますけれども、おさらいという意味で、児童虐待防止法の中では身体的な虐待、保護の怠慢と言われるネグレクト、心理的な虐待、性的な虐待とございますけれども、それらについて簡単に説明してまいります。
 身体的な虐待というのは、性的虐待を除いたあらゆる身体の虐待を示しております。虐待防止法の中で言えば、身体に外傷が生じる、または生じる恐れがある暴行を加えることとしております。実際これが写真で示した典型的な事例の幾つかなのですけれども、一般に転倒等の事故による打撲傷の場合は、手の先の部分だとか、足の先の部分とか、あとひじとか、一般に先っぽにけがをすることが多いのですけれども、顔面をけがするというのは乳児の場合は虐待を基本的には疑う余地があるわけです。この写真の子供は、乳幼児の段階の子供ですけれども、こういった乳幼児の場合に顔のあざがある場合は身体的な虐待を疑う必要性がございます。
 それから、打撲傷は着色が時間とともに変わるわけです。さまざまなこぶがあり、赤くなったり、ちょっとこういうところが黒ずんでいたりとかするわけですけれども、同じような場所に打撲傷があり、色が変わるのがある場合は、繰り返し虐待を受けていることを疑わせる、そういった可能性が高いです。
 それから、典型的な身体的な虐待の部位とすれば、臀部というか、おしりの部分も当たるわけですけれども、これなんかはプラスチックのパイプでたたいた跡ですけれども、こういった跡が複数、何回も何回もたたかれたと思われる場合は、当然虐待を疑うということです。
 これは、あえて示したのですけれども、活発な子供の正常な打撲傷の場合は、先ほども説明しましたけれども、これは足の例ですけれども、こういう場所に起こりやすいです。
 それから、目の下にあざをつくるのも虐待なのです。ただし、これは非常に活発な子供が額に傷をつくっていまして、内出血が目の下にたまったのです。ですので、こういった場合はドクターの判断も要する場合があると思います。目をたたかれた場合は、あざができたりとか、ここの部分がはれたりとかということがよくありますね。ただ、こういうところで、ちょっと間違いやすいこともよくあります。
 それから、これはたばこによるやけどです。お仕置きということで、たばこの跡がそのまま残っています。たばこのやけどは非常に治りづらいのです。中心部が非常に深いやけどになっております。
 これは、首を絞めた跡です。こういうような問題は、現場ではよくあります。私も児童相談所の勤務を14年間やっておりますけれども、その中で虐待対応チームで5年ほど専門でやっておりましたけれども、こういった例は結構ありました。
 それから、これはMRIで見た例なのですけれども、よく揺さぶりっ子症候群とかシェイキングベビーとかという言われ方をしますけれども、小さい赤ちゃんをこうやって頭を大きく揺すったりすると脳の内部がはがれてしまい、それで脳挫傷を起こすような例なのです。ちょっとこれはMRIの写真なので見えづらいのですけれども、はがれてしまっているわけです。
 今までが身体的な虐待ですけれども、次に多いのがネグレクトと呼ばれるものです。ネグレクトに関しては、これは私の方で示した考え方なのですけれども、基本的には保護の怠慢や拒否により健康状態や安全を損なう行為ですけれども、健康、安全への配慮を怠っていたりとか、あるいは子供にとって必要な情緒的な欲求にこたえていない愛情遮断であるとか、それから食事、衣服、住居などが極端に不適切で、健康状態を損なうほどの無関心であるとか、あるいは親がパチンコに熱中して、これは岩手県でもたしか何年か前にあったと思いますけれども、パチンコをやる親が車の中に子供を入れておいて亡くなった例が、たしか県南の方でもあったと思いますけれども、パチンコに熱中している間に乳幼児を自動車に放置して熱中症で子供が死亡したりとかというような例です。
 それから、基本的な教育を子供に提供することがない教育的なネグレクトであるとか、子供を遺棄するとか、これが一番大きいわけですけれども、子供を遺棄するということは、置き去りにしたりとかしてしまうというような状況でございますけれども、そういったことがネグレクトでございます。
 それで、これは岩手日報の7月24日の新聞の記事を載せたのですけれども、これはネグレクトについてですが、資料の方では少ししか載せなかったのですけれども、実は小児科のある病院の46%でネグレクトによって体調が悪化し、過去に入院した子供というのは400人を超えているということを厚生労働省の研究班が調査してわかったのです。それで、小児科がある全国の570病院を対象にして調査を実施したのですけれども、そのうち230カ所から回答を得て、子供の入院を経験したことがあるというのが160人、46%で、2005年の1年間については人数や年齢、病状などを詳しく尋ねて、2005年に入院した子供が106人で1歳未満が27%、1歳から3歳が21%、乳幼児の割合も高く、10歳以上も14%です。
 それで、その症状の内訳というのは、体重がふえないというのが31%、元気がないというのが18%、ほかには意識障害あるいはけいれんとか、そういったものも含まれていたのです。中には、こういった緊急的な対応が必要なケースもあったということで、実は養育放棄で入院している子供も、実際にはかなりの数があるということがわかっています。これは非常に岩手日報さんも着目してくれている点で、我々の方にも虐待の中でもネグレクトを注意深く見る必要があるというようなことをお示しした記事でございます。
 続いて、心理的に不適切なかかわりでございますけれども、いわゆる心理的な虐待、おまえなんかどうして産んだんだろうね、というような言葉によるような親からのおどかしであるとか、情緒的なネグレクト、子供からの語りかけにこたえない、無視するとか、それからあと心理的なトラウマ、拒否的な態度を示すことで子供の心を傷つけるようなことです。
 性的な虐待ですけれども、対応的には子供への性交であるとか、性行為の強要とかとありますけれども、そのほか性器を触ったりとか、露呈したりとか、その他の性的行為を伴う虐待とか、売春とかポルノ撮影などの行為とかありますけれども、いわゆる性的な行為が実際に行う性交ばかりではなく、性的な行為の強要がある場合を性的な虐待としております。
 程度ですけれども、重度、中度、軽度に一応分かれておりまして、重度というのは骨折、頭部殴打、裂傷など入院を伴うようなけが、あるいは栄養障害であるとか、部位が頭部であるとか、性器であるとか、あるいは内臓などの場合は重度。
 中度の場合は、足、腕などのけが、やけどなどの医療行為があり、医者へ行ったか、あるいは行く必要があったと判断されるもの、あと薬を飲む必要があった栄養障害。
 それから、軽度の場合は、たたいても跡が残らない程度のもの。
 それから、心理的な虐待の場合の程度については、まだ明確ではないのですけれども、例えば親が子供の前で自殺を企てる、心中を企てる、父母の暴力を目撃したなどで子供の状況が不安定であるなどがあります。
 それで、児童虐待を防止して、児童の健全な成長、自立性を促すための基本的な考え方とすれば、まずは発生の予防が必要だろうと、それから早く見つける、早く対応するというような早期発見・早期対応をする。その上で保護・支援ということが必要だということが基本的な原則になります。
 それから、虐待は身体的、知的、情緒面、あとは世代間を含む連鎖を引き起こすとされております。
 早期発見・早期対応の必要性ということで見ましたけれども、亡くなる子供は基本的にはゼロ歳が40%近くで最も多いですね。それから、1歳台、2歳台、3歳台、4歳以上が21.1%ですけれども、やはりゼロ歳から3歳までの間が非常にリスクが高いわけで、死亡事例もリスクが高いわけで、その上ではこの年代の早期発見・早期対応が最も必要だと思います。
 それと、実際に今保護を必要とする場合、児童養護施設等、乳児院等の子供を保護する機関があるわけですけれども、この機関の大体9割ぐらいまで埋まっている状態です。大体その施設に入っている子供たちの6割以上が虐待を受けた子供の割合となっているのです。そういう意味で、今まさに施設側の方も児童虐待の対応が急迫して、大変な状況もございます。
 以上が前半でございました。続いて、ちょっと後半の話を進めていきたいと思います。
 後半は、今叫ばれている地域ネットワークと、それからあと虐待をどうアセスメントしていくかというようなことについて話を進めていきたいと思います。
 子供の虐待は潜在化しやすく、多くの問題を抱えているわけで、問題はさまざまに構造化していることが多いために、単一の機関だけでは解決が困難だということがあるわけです。その意味で地域のネットワークが必要なわけですけれども、この地域のネットワークといいますのは関係機関の連携が円滑に行えるための有機的なつながりでありまして、そういう意味では連携基盤なのです。
 よく言われているのが3つのネットワークということが言われております。ネットワークの概念とか体系については、関係者の間で十分なコンセンサスが得られているとは言いがたいのですけれども、強いて地域のネットワークが展開されるこのエリアの大きさで体系化したのがこの図でございます。
 最初の都道府県のネットワークでございます。都道府県のネットワークが都道府県内の行政担当者や主な機関の長で構成され、当該都道府県における行政機関それぞれのチームがあるわけですけれども、それを超えた総合的あるいは横断的政策検討に比重を置いたネットワークにして、このネットワークは政策ネットというふうに言われます。
 続いて、市町村ネットワークですけれども、これは市町村レベルの行政担当者や機関の長で構成されて、協議あるいは研修等を通じて市町村域における虐待の実情や各機関の役割などについて、認識の共有を図ることを目的としたものです。そういう意味で、認識ネットというふうにいわれております。
 ここに実務者ネットワークがございますけれども、この実務者ネットワークというのは個々の事例の定期的あるいは必要性に応じて、ネットワーク・ミーティングであるとか、処遇検討会議と呼ばれるそれぞれの事例に関する情報交換を行いまして、処遇の検討を行い、役割分担のもとにチームで援助すると、そういう意味では、援助ネットとよく言われます。
 これらのネットワーク以外に、例えば児童相談所管内とか、あるいは郡部を単位としたものであるとか、それからあと市町村ネットワークとは別に市町村の幾つかの機関による定期的な会合が開催されているところがあります。そういう意味では、その目的、内容も都道府県単位のネットワークの研修などを通じた認識の共有化であるとか、個別の事例の検討を行っているところなど実際のネットワークは複雑、多様だということであります。
 この実務者ネットワークがその中でも一番大事なところですけれども、幾ら政策検討であるとか、虐待の問題に関する機関間の共通認識が図られても、実際に援助をしなければ意味をなしません。いわば都道府県ネットワークも市町村ネットワークも、実務者ネットワークが円滑に運営されるためのバックアップの役割を担っております。
 実務者ネットワークの機能としては、予防、発見、介入・援助、見守りの4つがあげられております。総体の流れというのは事例とか援助団体によって異なりますけれども、例えば介入・援助ネットワークでは情報の交換、認識の共有化、処遇の検討、役割分担、モニタリング、情報交換、というような中身になります。ネットワークが十分に機能するためには、機関の機能や限界を互いに理解したりとか、前向きに議論したりとか、あるいはキーパーソン、ケアマネジメントを行う機関を決めてやるとか、決定事項を確認し合う、次期の話し合いの時期を決めておく、そういうことが大事だと思います。
 それでは、今のは基本的にはネットワークをする上で一番大事なのは実際に仕事をする実務者のネットワークを組むことですよと。その前提として、バックアップ機能として市町村があったりとか、都道府県がありますよと話しましたけれども、実際に子供虐待とネグレクトに対応するような形で、どうアセスメントするか。特に、やっぱり危機が高い、リスクが高いアセスメントをどうするかということについて話を進めてまいりたいと思います。
 リスクアセスメントとよく言われますけれども、従来リスクのある状態についてどう対応するかという点では、あらゆる分野で示されているように1980年代の初めにアメリカにリスクアセスメント指標というのがつくられましたけれども、直接のきっかけというのが子供の死亡にありまして、早期に分離する必要性が論議されたことによります。あくまでもリスクアセスメントというものは、援助活動の中ではアセスメントを補佐する枠組ととらえることができまして、その目的というのは重症度を判断したり、的確な処遇決定を導きケースの優先性を考えたり、サービス決定のマネジメントであるとか、初任者のための研修であるとか、リスク要因の理解、機関連携の際の状況や理解を持つ、そういったことが挙げられます。
 アメリカの場合は、リスクを24時間以内に緊急と判断する場合と、まず調査をしてリスクを判断する2つのタイプがふだん使われておりますけれども、日本では大阪で初めてリスクアセスメント指標というのがつくられましたけれども、諸外国や厚生労働省が作成したリスクアセスメントがありまして、一時保護の分離の際に利用されるものとして提示されています。
 それで、そのリスクアセスメントする上で大事なことは、虐待という問題が発生したら、それをどうするか協議するわけですけれども、どうしてその問題が起こったのかというようなことを考え、その上で適切な援助計画をつくると、それが一番の目的なのです。それで、一方でリスクと、それからどこが安全なのかというようなことを見ていくことが必要でございます。
 最初に、リスクを見ます。まず子供の状態を見ましょう、それから虐待の経緯を見て、親子の関係や生活状況、家庭の状況を確認すると、ここがまず第1段階です。まず、危ないところを最初に見るわけです。第2段階としては、家族の力の把握。どのぐらい問題解決をする能力を持っているかどうか。それから、子供がその虐待に対して、親の虐待に対してどれくらいの対処能力を持っているか。それから、親がどれくらい虐待についての認識、自覚があるのか。援助機関との関係があるか、ないか。もしあった場合はどういう関係なのか。それから、第3段階がどういったことが今解決に向けて必要なのか。第4段階がどの点をだれがどのように支援していくのか。どこの機関がキーパーソンになって、それを取りまとめていくのはだれなのか、そこを決めていく。これがアセスメントのプロセスになります。
 それで、実際に私も虐待の相談を実施していた経験がありますので、それを踏まえて説明していきます。よくケースマネジメントというようなことを言いますけれども、大体ケースマネジメントはさまざまな複合的な問題があって、家族や関係機関で調整が必要な場面で用います。それから、本人であるとか、子供自身であるとか、家族であるとか、その自覚や変化への意欲が必要です。子供虐待の場合には、具体的で、日常的で、ネットワーク的な対応が必要になります。それから、個別の事例検討会もこの考え方に入ると思います。
 それで、一番リスクが高い中で危機介入があるということです。危機介入に関して、ある機関、虐待の場合は児童相談所ですけれども、危機介入が難しいケースの中で深刻なケースの場合ですけれども、その児童相談所がリーダーシップを発揮して、時には本人、家族も、子供や親、家族の意見を無視しても職権介入することで子供の安全を確保する。その際、立入調査であるとか、職権保護が典型的な例になります。前提になるものは、子供を保護するという公益性と、それから適切な手続も必要だと思います。そこで状況が安定すれば、先ほど言ったケースマネジメントに移行するということがあると思います。ただし、ネグレクトであるとか、軽度の身体的、心理的な虐待があるという場合は危機介入を使いづらくて、子供がけがをして、はっきりわかるような重度のケースなんかでは使いやすいということです。
 ケースマネジメントについてもですね、さまざまな保護者のタイプがあるわけですけれども、1つは自分から援助を求めてくる方があります。その方は、自分では虐待をしているというような自覚が子供に対してあるのです。その際に地域の保健師さんであるとか、あるいは保育所、保育園の保育士さんなど、地域の関係機関がこの保護者の方にかかわることが多いのです。その際に基本的な対応とすれば、サポートが原則になるわけですけれども、ただし子供が安全とは限りません。これはどうしてかというと、自分から援助を求めてはきており、実際に虐待の自覚はしていますけれども、私もいろいろ相談を受けている中で、それでは虐待はやらないのかなと思っていても、実際には子供との緊張関係や孤立関係の中で、こういう方でも子供に再度虐待してしまうようなことがあるのです。そういう意味では、子供が安全とは限りません。危険度は高いですけれども、その場合保護者との友好関係の維持が必要です。ただし、子供のリスクが高い場合には、親とけんかしてでも子供の命が大事だということです。そういうことが1つあると思います。
 それから、これは保護者のタイプの2番目なのですけれども、子供のことで確かに悩んでいるし困っていますと、ただし、自分が虐待している自覚がない方です。大体そういう保護者の場合は、頑張っていろいろな方法をとっています。それでも、うまくはいかないのです。ただし、虐待をしている自覚はないのですけれども、どこかに相談に行きたいという気持ちはあるのです。そういう相談をされた場合には、難しい子供なので専門の機関に相談しましょうというような対応が必要になることが多いのです。これを相談機関に絶対につなぎたい場合には、一緒に相談機関に行って、相談室に入れなくてもそばについてあげるというような対応が必要になってまいります。
 それから、3つ目のタイプ。これは、児童相談所の中で対応するケースがとても多く、中には8割ぐらいが含まれるのですけれども、自分が虐待していることを認めない、それから支援や援助、サポートを断る。それから、保護者が現状では困っていないし変える気持ちがない、そういう保護者なのです。その場合、相談機関はなかなかかかかわれないです。かかわる視点としては、虐待の危険度、緊急度の度合いを見て介入する。それから、さまざまな方たちの協力を得て、見守る体制をつくる。それから、援助者同士のネットワーク会議を定期的に開く。こういった虐待する保護者の中でも、自分が虐待することを認めない、支援やサポートを断る、現状では困っていないし、変える気持ちがないようなタイプの方にかかわるというところが非常に難しいところはありますけれども、やっぱりこのネットワーク会議、この辺が非常に大事になってきます。見守りが大事になってきているのではないのかなと、緊急度を早目に判断して対応するということが大事だと思います。
 それらを一応今の要保護児童対策協議会を中心とした形でまとめたときに、どういうふうな体系図になるかということを簡単にまとめたものです。いろいろ児童委員さんであるとか福祉事務所、児童課と言われる児童福祉の行政機関ですね。それから、児童相談所、家庭相談室、保健センターとか幼稚園とか、さまざまな機関がありますけれども、それらのメンバーが市町村ネットワークの中にあります。個別検討会議をその中で基本的にはやっていって、それで共通した在宅アセスメントの指標を利用しながら、このリスクを軽減したりとか、問題把握を役割分担しながら定期的に見直しをして利用していくという、そういう基本的な考え方でございます。
 これは、ちょっと別資料であげた資料なのですけれども、子供の家庭支援、東京都で取り組まれている中身なのですけれども、大きめの資料を1枚用意させていただいたのですけれども、これは岩手県で取り入れるかどうかということは、ちょっといろいろと議論が必要なところはありますけれども、ただモデルとして幾つか使えるところはあるかなと思うのです。虐待の予防防止も含め、子育て支援センター盛岡でも大きなところがアイーナにできましたけれども、そこは子供たちの育児相談であるとか、育児サークル支援などを行うセンターとして位置づけられておりますけれども、より虐待に特化するような形でのさまざまなかかわりができないかというようなことを考えたときに、これは、今まで児童相談所が行っていたところですが、児童相談所が一時保護所となり場合によっては施設を使い、そのかかわりの中で家庭復帰をするというような一連の流れがございますが、これは、東京都の場合ですけれども、子ども家庭支援センターの中では要保護児童対策調整機関としての位置づけがありまして、実際には調査、支援、相談をし、それからあと虐待防止の訪問事業、見守りサポート事業、育児支援ヘルパーの派遣、この3つの事業が行われております。虐待防止の支援訪問事業、見守りサポート事業、それから育児支援ヘルパーの派遣。よくイギリスなどでも訪問事業をやっていますが、その中で例えば家事であるとか、あるいは学校へのサポートであるとか、さまざま日常生活に対応する上でのサポートであり、一緒に取り組むのですね。
 日本の中では、この育児支援ヘルパー派遣を通すのですけれども、このヘルパーさんが大体みんな全面的にやってしまうというか、生活の日常的なサポートを全面的にやる傾向が強いというようなことも一方では言われていますが、この一緒にやるというような視点が必要だということはよく言われたりします。ただ東京都の中で虐待防止のための支援訪問、それから見守りサポート、それから育児支援の部分を含め、先駆型と書いていますけれども、こういう事業が取り組み始められていて、これが今後在宅での支援を進める上での1つのキーワードになるのではないかと思います。
 それと、これをやるために東京都の場合は、子ども家庭支援センターも地域の中でも虐待に対する相談にも中核的な機関の1つに位置づけておるわけですけれども、先ほど言いました要保護児童対策地域協議会との関連性といったことも強めているところもあって、岩手県でどういう位置づけを今後とったらいいのかということはいろんな議論がありますが、これは東京のモデルとして1つ挙げました。
 一応ちょっと簡単ではございますけれども、児童虐待と子供のネグレクトについて説明させていただきました。あとは、御質問をいただきながら、いろいろ質問に答えてまいりたいと思いますので、よろしくお願いします。
○工藤大輔委員長 ありがとうございました。それでは、これから質疑、意見交換を行いたいと思います。ただいまの御講演をいただきましたことに関し、質疑、御意見等がありましたらお願いいたします。
○及川幸子委員 三上先生、ありがとうございました。常日ごろからこの近年の虐待について、本当に新聞報道、テレビ報道を見るたびに胸が詰まるような思いでしたが、きょうも先生のこのパネルを見ながら、とても胸の苦しくなる思いをいたしました。やっぱり私も3人の子供、そして今孫3人を育てる中で、一体この虐待というのはどういうところから起きるのかなと常々思うところですが、先生が児童相談員として14年間勤務なさったという中で、虐待の相談を受けていろいろ対応なさったと思いますが、その結果うまく親子関係が保たれて、今はうまくいっているよというような状況をまず1点お話しいただきたいと思います。
 そして、また虐待をする親の生い立ちというのにも原因があるのではないかと思うのですが、そういう点では自分が小さいころ虐待を受けていたのか、平穏無事に親子関係がうまくいった中で、急に自分の子供をそういう痛ましい事故が発生するくらいの虐待をするというのはどういうことかなと思うので、その親の生い立ちとか環境ということをまず2点目お聞きしたいと思います。
 一回に質問させていただきます。それから、3番目ですが、虐待する親御さんが相談をするケースは絶対ないと思います。地区内であれば、隣近所で、やっぱりあの子供さんは虐待を受けているのではないかと。秋田の事例もそうでしたけれども、そういう点で近所でそういうのを見つけた場合に、いち早く相談するのは民生委員さんとかがいいのか。先ほどの説明では、児童相談員さんということですが、身近なところで児童相談員さんがこの地区内のどういうところにいるのかなというのをわからない方がいるので、やっぱり民生委員さんに相談する場合も聞いておりますが、そのときに民生委員さんの方で、専門ではないと余り受けつけてない方もいらっしゃるようなのです。そういう場合に、どういうケースを踏まえて、一番身近なところで相談をするのはどういうところがいいのか。よく聞くのは、警察に一挙に相談を持ちかけることで、その辺のところもちょっとお聞かせいただきたいと思います。
 最後に、先生がおっしゃったページ2の虐待ケースのマネジメントは、自分が虐待することを認めないということと、支援や援助、サポートを断る、それが一番の問題だと思うのですが、それであきらめて見過ごしてしまって痛ましい事故に至るというのがあると思うのです。ここが一番難しいと先生もおっしゃっていましたが、これをどうしていけばいいのか、この4点をお願いしたいと思います。
○三上邦彦参考人 ありがとうございます。児童相談所の方で、私も相当の数の虐待相談を受けております。いろんな対応もしていますけれども、立ち直りが早いのは、やはり初期の段階でかかわったケース、例えば育児ストレスとか、子育てに悩んでいたりとか、そういう段階でかかわれると、割と虐待が深刻化することを防ぐということはあるとは思います。
 児童相談所の場合であれば、どちらかというと重いケースが多いわけですけれども、重いケースの場合は、人によってさまざまです。例えば強制介入をして一時保護をしたりとか、あるいは家庭裁判所の方に上げて、結果的には親が折れて、それで同意をして入所するという方はありますけれども、児童相談所だと、どうしても最初の一時保護する段階で、親が了解しない状態の中で保護したようなケースですと、児童相談所と保護者との間で関係がうまくいかないんですね。子供を取られたということがあるのです。そういう意味では、後々の関係を見て、少しずつ関係は是正していきますけれども、児童相談所対保護者の中では、その関係がやっぱりうまくいかないというか、関係が安定した形で、信頼関係を得た状況の中で相談まで結びつくかどうかという点では非常に難しいところがあって、そういう意味では施設を利用したお子さんであれば、むしろ児童養護施設の先生方と親との関係の中で相談関係が結ばれているということなどもありますので、親へのサポートであるとか、治療的な関係であるとかというようなことが前提とすれば必要になるということがあると思います。
 大体は、親との関係と、それから子供の関係も含め、特に施設などを利用したときには専門機関である児童相談所が介入したりすると状況がよくなることが多いのです。ですので、やっぱりそれなりのかかわり方というのは必要だと感じてます。相談の段階まで乗せると、大体はうまくいきますね。先生から御質問いただいたように、その相談にのる前までの関係の構築にものすごく時間やエネルギーを使う。
 それから、2番目の親御さんの生い立ちですけれども、先ほども多少話しましたけれども、世代間の連鎖ということがありましたけれども、親御さん自身も自分の親から何がしか虐待的なことを受けている方はやっぱり多いかなと思います。非常に自分の親との関係が不安定であったりとかいうこともよくあります。
 それと、世代間の連鎖の部分では、自分の子供が大きくなったときに、やっぱり親の姿を見て育つわけですから、ある意味影響を受けていて、その子供もまた自分の子供に対して虐待してしまうというようなこともあったりして、それの連鎖を断ち切るというようなことが必要なところはあるのかなと思います。
 それから、3番目のよく民生委員さんが、虐待を発見したときに通報をしたときのその対応の部分ですけれども、法律が変わって市町村が窓口の1つになっているので、市町村の方に相談をするということはありますけれども、身近な例では当然民生委員さんもありますけれども、一番適切なのは主任児童委員さんです。市町村の方で受けて、その中で虐待相談を、早期に発見してその中で対応して、難しいケースについて相談しながら支援を進めていくということが必要かなと思います。
○及川幸子委員 自分が虐待すると認めない親とか、支援、援助、サービスを受けない人に対する、難しいところは。
○三上邦彦参考人 そこが一番難しいところですが、大体どこの子供だということはわかるので、そういう場合はわかりますよね。そういうケースが結構あったのですけれども、その場合は定期的な形で話し合いをして状況を確認するというようなことと、それからどの時点で、虐待が起こったときにどう介入するかという打ち合わせをしておいて、それで入っていくと。それから、日常的なかかわり方について、だれがかかわっていくかという、子供のフォローも含め、どうしていくかというようなことは一応役割分担を決めていて、定期的な会議を開くというのをやっています。それで、いざというときには入っていくというようなやり方をしないといけないと思います。
○及川幸子委員 ありがとうございます。子供さんが実際虐待を受けていても、子供というのは物すごくお母さんや、お父さんに対しての思いが強くて、いじめられたのではないかと言っても、いや、そんなことはなかったと言って、傷は自分でけがをしたと言う、そういう例も聞いているわけですが、やっぱり私は小さいころの幼児教育に原点があるのかなと考えますけれども。うちに捨て猫の親子が庭にすみ着いておりまして、そのえさを上げたときに、けさも子供が食べるまで親は待っているのです。そういう光景を、勉強以外の教科書以外のところで子供たちに教え込むことから、基本からやっていかなければだめではないかと思うのですが、先生、その点について最後お聞かせください。
○三上邦彦参考人 まさに先生がおっしゃるとおりでして、虐待を受けた子供たちは、特に幼児、小学校の低学年ぐらいまでは親のことをかばいます。虐待のことはほとんど言いません。本当に虐待を受けた当日ぐらいはやっぱり嫌ですから、そのときは担任の先生とか、受持ちの先生なんかに話したりとかということは若干ありますけれども、話さない子供が多いです、親を守るのですね。
 一方では、親元から適切な愛情を受けたいという思いなんかも背景にはあったりとか、もし自分がそのことを言ったらさらにやられてしまうのではないかとか、いろんな意味で、小さな子供なりに葛藤があったりとかして、親から何がしかの拘束を受けていたりします。
 そういう意味で、親と子供がかかわるところで、子供自身もそうですけれども、1つは子供が自分が受けたことについて、ちゃんときちんと話ができるというようなことで保証されていることについての教育の部分と、それからあとは親への育児をする上での教育というか、子供ができて、その上で赤ちゃんを産んで育てるという過程の中での教育というものはやっぱり非常に大事だなと思います。
○工藤勝子委員 大変ありがとうございました。子供を道連れに自殺をしてしまう、岩手県にもあったわけですけれども、そういう自殺した行為の子供が虐待という関係に入っているのか、ネグレクトの中に入っているのか。虐待の種類別割合の表がありましたが、どちらの方に入っているのかお聞きしたいと思います。
 それから、虐待する親の心理というものを先生としてどう分析していらっしゃるのかということをお聞きしてみたいと思います。
 子供を持ったときは非常に嬉しくて、かわいがってと思うのですけれども、それが年数がたってくると、そういう虐待行為に入ったりとか、いろいろ放置したりということになってくるわけですけれども、中でも例えば仕事のためにゼロ歳児から保育園に預ける、そういうふうに預ける親には余り虐待はないと。逆に24時間向き合っている親が多いという話を聞いておりますので、そういうところの向き合っている、仕事のストレスではなくて、逆に育児に対するストレスの方が多いのかなというふうなことで、こういう虐待を減らしていこうとしたときに、やっぱり親の心理というものをもっと周りが理解するとか、そういうことが非常に大事になってくるのではないかなというふうなことを考えながら、聞かせていただきたいと思います。
○三上邦彦参考人 ありがとうございます。1番目の質問に対しては、私自身の指針というか、考えなので、一般的なところはまだまだ言えないところがあって、実は議論が必要なところではあるのでございますが、子供を道連れに心中するとか、子供を死なせてしまって自分だけが生き残ってしまうとかということが新聞等で報道があるわけですけれども、基本的には子供が1個の人権のある存在として、その命を子供の意思に関係なく奪ってしまうというようなことですから、それに関しては、虐待という視点から見れば、最も子供にとってみれば過酷な状況なわけです。
 そういう意味では、親の都合によって子供の存在がなくなってしまうということは許されざるべきものなのかなと思います。ただし、その前の段階で相談できるような体制がどれくらい地域の中にあるかとか、例えば親の抱えている経済的な問題であるとか、その他さまざまな家族関係の問題だとか、いろいろ背景にあるのだと思いますけれども、それをどう相談するか、相談を気軽にできるかというような体制づくりみたいなのは必要かなと思います。
 親が子供を道連れにして子供が亡くなってしまうというふうなケースに関しては、これは心中と、それから例えば親は日常の生活を行っていて子供を殺してしまうというものとは質が違うので、だから養護が必要だというのはありますけれども、ただし虐待という大きな枠組みの中で見れば、基本的には不適切な養育があって、その結果子供が亡くなるということが前提になりますので、その枠組みの中の虐待には入りませんけれども、ただし子供を亡くしてしまうというようなことに関しては、もうちょっと議論が必要なところであります。
 それから、今の虐待が起こっている背景の部分ですけれども、いわゆる養育の基盤であるとか、あるいは経済情勢であるとか、あるいは育児ストレスとかというようなことがさまざま複合的に重なって起こったりとかということはあります。
 それから、子供自身が非常に育てづらかったり、発達的な課題があったりとかして、それに対して親自身がストレスがたまってしまったりというようなこともあって、非常に複合的な要素が背景にあると思います。ただし、深刻なケース以外にも中程度であるとか、あるいは軽度であるとかというような程度の虐待であるとして、これはどこのうちでもこういう状況はあるだろうと思います。やはり子育てをしているとストレスはたまりますし、例えば親と子供が24時間向き合うだけのその枠組みの中で生活をしていると、当然子供に関心が集中してしまって、子供が何かしでかすと、また悩んでしまうというような構図の中で虐待が生じるというようなことがあるので、育児環境をいろんなところでフォローアップできるような機関が必要なのかなと思いますし、対応の面でもやっぱり必要かなとは感じております。
○工藤勝子委員 今後いろいろなネットワークをつくったりとか、いろいろな対策がなされてくるわけですけれども、それでも分析していったときに、この少子化の中でこういう虐待というのは、まだ減ってはいかないものなのでしょうか。例えば、まだ隠れている部分で相談にのってこない、もっともっと数があるのではないかということもあるわけですが、そういう意味から考えると、まだ減らないというのでしょうか、この統計の中でも出てくるのでしょうか。
○三上邦彦参考人 これもよく言われるのですが、いろんな機関がかかわると虐待の相談件数がふえるということは潜在的にはあるのですよね。それが拾われていなくて、いろんな機関をこうやって光を当てることによって浮き彫りにされてきているのだと思うのです。まだ岩手県でも、もう少し数がふえていくようにも思います。
○ザ・グレート・サスケ委員 まずは、三上先生、常日ごろ県立大内外での御指導、御鞭撻、ありがとうございます。心より敬意を表する次第でございます。
 まず最初に、ちょっと大まかな質問をさせていただきたいのですが、このネグレクトということですね。割と新しめの言葉かなと思うのですが、このネグレクトという言葉も実は県議会では平成14年の6月の本会議におきまして、政和会の岩城先生が初めて発言なさったところから、我が県でも光が当たったような感じなのですが。私は、これは持論なのですが、ネグレクトというのは親が未熟であるということに尽きると思うのですが、ちょっと大まかな質問で申しわけないのですが、まずその点をお聞きしたいのと、それからもう一つは、私はネグレクトに限らず児童虐待全般と、DVということが非常に大きくリンクしているのではないかと思うのですが、その点いかがお考えでしょうか。その2点、まずはお聞きしたいと。
○三上邦彦参考人 ありがとうございます。1点目のネグレクトですけれども、ネグレクトの多くのケースというと、サスケ委員がお話しいただいた未熟な親御さんが多いですね。その未熟さというものも能力的に低い場合も結構多いのです。つまり例えばお金の管理がうまくできなかったり、食事がうまくつくれなかったり、洗濯ができなかったり、お掃除ができなかったりとかということがよくあるのです。やはり日常的なケアの部分で、非常になおざりになりがちな方が多いのです。つまりいわゆる食事であるとか、保健衛生であるとか、あるいは経済管理であるとかというような側面でできない方がかかわって、とても多い印象があります。
 ですので、私が児童相談所で職員をやっているときは、児童相談所しかないのでと言うとあれなのですけれども、児童相談所の児童虐待の対応チームも信頼関係をつくるまでにかなり時間はかかったのですけれども、何度も訪問をしていったのですが、やっぱり汚れているわけですよ。部屋に上がると畳がじめじめしていますし、それから赤ちゃんがいるのにほこりをかぶった紙おむつがあったりとか、洗濯物のじめじめしたのがその辺に置かれていたりとか。ごみも、台所には食べかけのラーメンとか何かがいっぱい置いてあったりとか、御飯ジャーに干からびた米粒がいっぱいついていたとか、そういう日常的なレベルで何とかしなければいけないと思って、信頼関係ができてからお母さんと一緒にお掃除をする。ごみ袋も数十袋も出ましたけれども、そんな関係を通した支援ができてくると、こういうやり方はお母さんへとしてもあるのだなと、こうやって関与できればいいのだなということはよくありますね。
 それと、未熟だということについてちょっと思い出したことがあって、あるネグレクトケースの小学校6年生の女の子ですけれども、一時保護されたその子供が、私のうちはずっとこういうおうちだったから、それが当たり前だと言うのです。一時保護所だと3食御飯を食べれるし、朝何時に起きて勉強もできるしとなるのでけれども、それが物すごく窮屈なのですね。そういう意味では、生活環境の中で学習していることがとても多いので、そのモデルとなるものを少しずつ提示していくやり方ということは必要かなと思います。
 それから、2点目のDVと虐待の関連ですけれども、これは物すごく関連があります。ほとんどイコールではないかと思います。虐待には4つの分類がありますけれども、身体的虐待、心理的な虐待、性的虐待、ネグレクトとありますけれども、これはすべてリンクしているかなと思います。私は、仙台の児童相談所におったのですけれども、そのときにちょっと調査したことがあって、身体的な虐待の中の父親が占める割合で、その大体8割ぐらいは奥さんに暴力を振るっているのです。ということは、やっぱり父親の奥さんに対するDVなんかが直接的な引き金になっていたりすることなんかもありまして、このDVと虐待の関連というのはとても大きいですね。
 それと、直接子供にも暴力を振るっている場合と、自分のパートナーだけに暴力を振るっている場合もありますけれども、一見違うような感じですけれども、子供として見れば母親に対して暴力を振るっている様子を見ているのです。見ていますから、非常に心理的にも影響を受けていて、傷ついている場合がとても多いかなと思います。
○ザ・グレート・サスケ委員 ありがとうございました。続きまして、ネグレクトなのですが、県福祉総合相談センターのデータによりますと、過去5年で急激に右肩上がりでふえていると。5年前ですと百二、三十件だったはずなのですが、平成17年度では250を突破していたと思うのですけれども、これはどのように分析をしていますでしょうか。やはり実数で伸びているのか、あるいはネグレクトということがどんどん浸透していって、今までは同じような数があったのがただ明るみになっただけなのかということです。
 それから、もう一つ、性的虐待なのですが、これも県のデータですと毎年10件程度だったと思うのです。これは横ばいでふえてはいないのです。ところが、全国的なデータはこの性的虐待が、特に実の親による性的虐待が物すごくふえているというデータがございます。これは、もしかしたら今後県でもふえる傾向にあるのでしょうか、その辺をお伺いしたいと思います。
○三上邦彦参考人 データ的なことに関しては、児童相談所の方がより詳しいと思うので、私の見方としてのお答えになってしまうのですけれども、1点目としてはネグレクトが岩手県内でも随分ふえてきているというようなことがありますけれども、我々が児童相談所にいたときに、虐待といったら身体的な虐待と性的虐待の2つだけだったのです。2000年に法律ができてからネグレクトというようなことを考え始めたのです。実はネグレクト状態にある相談というのは、以前から児童相談所でも受けてはいたのです。いわゆる養護相談という枠組みの中で受けてはいたのです。それを虐待防止法ができたので、ちゃんとした概念として、法的な概念として位置づけたというようなことで、それを見るようになってきてから、だんだん、だんだんふえてきたということはあるのですけれども、最近5年間ではやはり虐待防止法ができて、そのネグレクトに対する関心が非常に高まってきているところがあるのではないかと思います。
 それから、2点目の性的な虐待の数は少ないですけれども、潜在的にはかなりの数があるのではないかと思います。特に性的な虐待は表面化することがほとんど少なくて、特に親子間で行われている性的な虐待に関しては、子供がSOSを出さない限りはなかなか拾えない状況であって、そのサインも小さい場合が多いのです。保健の先生に少しだけ話した、でも1回話したのだけどそれから話せなくて、しばらくない。先生とすれば、もうないのかなとか、実はちょっと話したことが物すごいSOSだったりすることがあるので、やっぱり性的な虐待に関してはアンテナを高くしてかかわる気持ちが必要ではないかなと。
○ザ・グレート・サスケ委員 ありがとうございました。それと、去年の3月ですね、三上先生は御本を出版されて、子どものためのネグレクトアセスメント・マニュアルというCD―ROMがついて、これはネグレクトアセスメントスケールというソフトが入っているということで、これについてちょっと詳しく説明願いたいと思います。
○三上邦彦参考人 お持ちすればよかったんですけれども、それはネグレクトアセスメントをする上で、最初はできるだけ専門家が簡単にできればなと思ったのです。それで、ネグレクトというのは、今お話しのように、ある面、身体的な虐待みたいに表立ったものではないので、発見しづらいのです。それを発見するためのアセスメントをつくって、それを乳児用と幼児用と、児童用、3種類つくりまして、3種類つくったというのは赤ちゃんの場合とある程度学童の場合は、同じネグレクトでも例えば赤ちゃんの場合であればミルクを飲まないと栄養障害になったりとかということがありますけれども、それで自分で飲めないわけですが、ある程度児童になれば食べれるわけです。自分でとって食べたりもできるので、同じ食事の場合でもリスクが多少違ってきますので、食事だけではなく、さまざまな段階がありますが、それを乳児用と幼児用と児童用と3つのタイプをつくって、それをネグレクトのタイプを6タイプぐらいに分けて、どのネグレクトが高いですよとかということをレーダーチャートで示すようなこととか、あとネグレクトのリスクを示せるようなものをつくったと。それも数字を入れ込むと勝手にパソコンが計算して、自動的に診断できるようなシステムとしてつくったのですけれども、言葉だけなので何ともあれなのですけれども、そういうものです。
○ザ・グレート・サスケ委員 先生が出版されたその御本と、それからネグレクトアセスメントスケールというソフトですね。これは利用する対象というのは児童相談所の職員なのでしょうか、それとも実際の親御さんなのでしょうか。
 それと、最後ですが、法改正などいろいろしておりますが、後半の部分のスライドの1ページにありますが、一番右の方で、都道府県ネットワークの政策ということですね。三上先生が現在県に対して、この児童虐待に対して望むことといいますか、これはもう政策という部分で、例えば県条例なども含めて何か望むことがございましたら、ぜひ最後にお聞かせ願いたいと思います。
○三上邦彦参考人 1点目のネグレクトアセスメントスケールの、利用する対象ですけれども、直接保護者の人ではなくて援助する人たちですので、児童相談所職員も入りますし、それから市町村の虐待対応とかする方も入りますし、いわゆる子供にかかわる専門職の方々が対象になります。
 それから、2点目の政策的なところということなのですけれども、今の児童虐待に対する対応については、まず入り口の部分は、少し緊急対応なりといったところでの部分の対策はできています。今ないのは、その前の段階の予防的な段階を充実させることと、それから出口ですね。出口というのは、例えば子供が施設を退所する際に今度は親子に対してどうサポートするか、この2点です。予防的なところと出口の部分で、子供が施設等を退所したり、あるいは児童養護施設を退所したりする、要は地域に戻るときのケア対策が必要だと思います。大きなところはですね。
 その予防的なところでは、子育て支援センター等いろいろ育児に対する相談であるとか、さまざまな相談、支援するところがあるわけですけれども、例えば親御さんが育児に疲れてしまって、どこか預けたいと、気軽に預けたいと。児童相談所の一時保護所だといろいろな調査が入ったり何とかと緊急的な対応がありますけれども、そうではなくて、一時的に預けたいと、そういうときに預かってくれるような場所とかが、もう少しふえたりとか。
 それから、先ほども言いましたけれども、訪問事業。訪問事業でもいろいろ親御さんと一緒に共同しながらということの支援ですけれども、そういう枠組みの中で、地域に出かけていって、その中でサービスを提供するというような、そういう側面が必要だと思います。
 それから、出口の部分では、数は少ないのですけれども、深刻なケースが出てくる可能性が高いので、施設を利用しまして、状況がよくなったということで親元に子供を返しました。ところが、再発して子供が亡くなってしまいましたというような例も最近は出ているのです。そういうときに、返すときもアセスメントといいますか、返す基準をどう設けるか。親との関係だけがよくなったから、では戻せるかとか、あるいは経済的な状況を見て子供が生活できるような経済的なベースができたから返すだとか、いろいろありますけれども、そのアセスメントがきちんとできていたとか、その後フォローアップをどう児童相談所だけではなくて地域の中でできるかという、そのサポートネットワークがまだまだできていないところであって、その辺はやっぱり必要ではないかなと。
○三浦陽子委員 三上先生、大変ありがとうございました。私も質問したいことを前の先生方がたくさんお話しされましたので、大変私自身も納得しているところもあるのですが、実は私は歯科医師という立場もありまして、乳幼児健診とか、学校健診とかで子供たちの口の中を見る機会が結構ありましたので、比較的お口の中の状態を見ると、そこの家庭の様子がわかるという部分も実はあります。
 それで、小児科の先生ももちろんそうだと思いますけれども、そういう健診業務の中で、比較的早期に発見して、それを保健師さんとタイアップして情報を共有して、例えば私の場合だったら歯科指導をしながら、家庭の状況を把握しながら子供を見守っていくといった、それから親に対する忠告といいますか、警告というか、警鐘を鳴らす意味でも、例えば乳幼児の場合だったら、私も指導するのですけれども、聞く耳を持たないお母さんたちも結構いらっしゃるのです。そういう場合は、何かあるのかなとか、それから学校健診なんかすると、やはり洋服の状態ももちろんそうですし、お口の中もひどかったり、そういう子供さんの状況を学校の先生と共有するとか、そうしたことで、もうちょっと早く発見することができるのではないかという立場におりましたので、もっとそこを強調していって歯科医師会とか、医師会の先生方とタイアップするということも大事なのではないかというふうに思ったということが1つ、それの御見解をお願いします。
 それから、子供が私も4人おりましたので、PTAの方の役員をやらせていただいて、10年ほど前にハッピーバースデーという、青木和雄先生って御存じかと思いますが、その先生の原作のアニメーションを県内各地で皆さんに見ていただく上映会を企画して、県内を一生懸命PRして回って、各学校で取り組んでいただいたことがありました。
このハッピーバースデーも、やっぱりネグレクトの問題を取り上げたものでしたけれども、この場合はお兄ちゃんと妹さんがいますが、妹に対するネグレクトだったのですね。お母さんがお兄さんに対してはとてもよく対応するのだけれども、妹にはなぜか冷たくあしらってしまうという、その子供の心の傷を非常にクローズアップしたという作品でしたけれども、そうやって兄弟において、同じ親なのになぜそういうふうになってしまうのか、そういう心理的な、要因的なものというのがもしあれば、おわかりになるようなところがありましたら教えていただきたいと思います。
○三上邦彦参考人 1点目についてですが、先生が歯科医師だということで、物すごく私も心強く思いながら御意見を聞かせていただいたのですけれども、アメリカでは先生も御存じかなと思いますけれども、デンタルネグレクトという、つまり歯に関するネグレクト、それを1つの分野としてまとめているのです。アメリカの歯科医師の学会などでは、それを特化していろんな対策を組んでいます。アメリカで虐待の具体的な施策が始まったのは1960年代以降ですけれども、早期の段階でそのデンタルネグレクトに取り組み始めているというところもあって、先生もこちらの方での御実践は非常に役立つのではないかと思いました。
 それから、2点目ですけれども、私もたまにハッピーバースデーを学生に見せて感想文を書かせたりするのですけれども、心理的なネグレクトという部分なのですが、いわゆるネグレクトというのは要は簡単に言うと構わないことなのです。虐待、アビューズは乱用するものですね。だから、暴力を乱用したり性的なものを乱用したりとか。ネグレクトは心理的に構わないわけです。構わないことによって生じる心理的なダメージということなのです。ハッピーバースデーなんかは、そういった例の典型だと思いますけれども、兄弟間で違うということはよくあることなのです。親の期待、これは過剰な期待ですよね。過剰な期待があって、子供が親の期待に沿えない、沿える場合はお兄ちゃんですけれども、沿えない場合は、ハッピーバースデーの中での主人公の女の子ですけれども、そこでやっぱり対応の差が出てくるということはあるかなと思います。
 それから、そのネグレクトを考える上で、親の過剰な期待という項目をアセスメントの項目の中に入れたりとかするのですけれども、この辺がひとつ背景になっていたりすることもあるのではないかなと思います。
 ちょっと簡単ですけれども、申しわけございません。
○高橋雪文委員 ありがとうございました。私の方からは2つなのですが、児童憲章とか世界規模での取り組みがあるわけですが、近年日本では急激にこの虐待がふえているという現状と指摘いただいたのですが、世界と比べてみて先進国と後進国、また日本周辺とか、日本特有にこれほどふえているのか、その辺の分析はどのようなのかが1点と。
 あとは、先生方は専門家としていろいろ改善していこうということで、現状分析はなるほどなと聞いてわかるのですけれども、それではそこから我々はどういうアクションをし、こういう制度的なものをつくっていくというのはそもそも大事なのでしょうけれども、もう少し内在的なもの、文化的なもの、そういうものを解決していかなければならないのではないかと思うのですが、専門家の視点から今後どうすればこれを減少傾向に持っていけると考えるのか、その辺を少し教えていただければと思います。
○三上邦彦参考人 手元にちょっと数字がないので、すぐに確かなことは言えないのですけれども、一番虐待先進国と言われているのはアメリカでして、100万単位で通報があって、そのうちのかなりのパーセンテージが誤報だったりするのですけれども、ただしやっぱり電話帳を見ても、テレビを見ても、電話帳の1ページ目には虐待の通報番号が載っていますし、それからテレビを見ても何十分かに1回は虐待のテロップみたいなものが出てきますし、国民に対して虐待に対する啓蒙というのが非常に浸透しているのです。虐待ではないかというような疑いも含め、通報するシステムが各州ごとにできているということで、それだけ数が多いということなのです。それから、いわゆる警察等の虐待への対応も非常に厳しいです。家庭に対する介入などの現状があるということで100万単位であるのです。
 これは、今イギリスもしかりで、似たような傾向があります。ただし、例えばアジア各国であるとか、アフリカであるとか、そうなってくるとまたちょっと違った傾向があって、生活の水準自体が非常に低かったりすると、親が一生懸命やっていても、非常に食事が貧しかったりとか、あるいは医療的にも乏しかったりするような状況があって、それが果たして例えばネグレクトだと言えるかどうかとなると、やはり先生の方から御指摘があったように、文化的なものであるとかというようなことで、ある程度の水準の中で見ていかなければいけないところはあるのだと思います。
 一度アメリカで、その虐待の研修を受けたことがあって、そのときにアメリカの虐待問題を非常に研究している研究者の方から言われたことがあって、あなたたちは日本人でしょうと。日本人には日本人の虐待のとらえ方がありますよと。アメリカはアメリカで文化、歴史の中での虐待のとらえ方がある。考え方については、吸収できるところは吸収していいけれども、あなたたちの文化の中で虐待をとらえていったり、虐待に対する対応について考えていきなさいというようなことを言われて、非常に印象に残っているのですけれども。
 そういう視点ということも一方では考えながら、それで日本に対する子供の虐待についてのいろんな比較的なことであるとか対応について、あるいは基本的なことについてはまだ十分だとは言えない状況があるので、その一方ではつくりながら、世界との対比の中で見ていくという必要性はあるのかなと、今先生のお話を聞いて思いました。
 それから、2番目ですけれども、どうしたら虐待が減少するのかということなのですけれども、一番教育の問題があるのかなということは思いますね。
 それと、あといろんな機関と連携を図っていくときに、教育機関は物すごく力を持っているのです。福祉の機関と教育の機関と、あるいは医療保健機関と連携すると物すごく力を発揮できると思います。私も仙台にいたときに助かったのが、教育機関とスタッフが一緒なのです。同じ相談機関の中に出向で何人もいるのです。やっぱり教育機関のスタッフがいると、その教育機関、学校あるいは教育委員会との関係なんかでもうまく連携がとれるということがあって、それが大きい感じがしましたね。どうしても行政だと縦になってしまうわけですけれども、それを機関の中で一緒に仕事をする中でやっていくと、もう少し連携にしても有機的な連携が図れるのかなと思います。確かに減らしたいし、減らすところでの教育の問題がとても大きいかなと思います。
○千葉康一郎委員 先生は、仙台の子供虐待マニュアルというものの作成に携わったということでございますけれども、その内容がどういうものなのか、ちょっとお聞きしたいということと、それから、よく私たちが要するに悪餓鬼といいますか、そうであったころに、よく先生からはたたかれたり、あるいは親からそれこそ、何だ、それはと、バンとやられたという教育的虐待といいますか、そういうのはないかな。そういうしつけがあって我々は育ってきたのですよね。そういうふうなのは虐待の部類に入るのか。虐待という言葉のどこまでが教育的虐待なのか、どこからが、いわゆる身体的あるいは精神的な本当の虐待といいますか、そういうのになるのか。それがどうも、大体はわかるのですけれども、専門家から言わせるとどうなるかということをお聞かせいただきたい。
○三上邦彦参考人 2番目の質問は非常に難しいのですけれども、1番目の方は、仙台で虐待のマニュアルをつくるときに考えたのは、自分も今大学の教員をやっていますけれども、何か知識を注入するような形のマニュアルというのは余り意味がないと思ったのです。それで、一番虐待にかかわるスタッフというのは、いろんな機関の実際の実務者なのです。実務者でまとめた、実際にかかわる人たちがまとめたマニュアルで、それはどういう意味があるかというと、実務者がまとめるとその実務者はそれぞれ連携をとりますので、それで顔も覚えますし人も覚えます。どんな考え方をしているのかというのもわかるし、そうすると連絡しやすいし、話ししやすいのです。特に私が児童相談所にいたときは、敷居が高いと言われました。児童相談所に連絡すると、何か頼んでも動いてくれないしとかというのをよく言われたのです。そのときに、このマニュアルをつくるときに、かかわる人がつくっていき、いろんな話し合いなんかしていると、連携がとりやすくなるかなということがまず前提としてあります。それで、大体マニュアルはどこの機関でも似たようなのをつくったりしているのですけれども、結果的にはそういうのができて、法務省か何かの行政で出している報告書なんかの賞か何かもらったりしたやつなのですけれども、ただ基本的にはそういうふうな視点でつくっておりました。
 そのことで、随分ほかの機関との連携がしやすくなったというか、むしろ気軽な形で児童相談所の方に連絡をくれたりとか、相談してくれたりとかですね。それで、つくったメンバーは実務者なので、大体主査とか主任とか、あと係長クラスの人です。その人たちがつくっているので、自分たちの立場から虐待を見て、それでそれなりにマニュアルをつくったので、自分たちも何かやらなくてはいけなくなるのです。そういう点では、実務的なマニュアルです。
 それから、あと2番目の方のどこまでが虐待かというと、これは難しいのですね。一応大学で教えている都合上、子供がどう感じているかとか、あくまでも子供の立場で見ることが虐待を認識する上で大事だということをよく言われたり、あるいは言ったりとかしているのですけれども、確かに私も含め、自分の親父から何回もやられたりしたこともありますし、学校の先生からもやられた記憶ありますし、そのときに虐待かといったら、全然そんなこと思いませんでしたし、そこに何か含まれるものが多分何かあったからなのです。それなりに子供として、子供時代の自分としては理解できた部分があったのではないかと思うのです。
 それで、虐待の場合は例えば暴力が乱用されるということ、何回も何回もしつこくやられたりとか、そうなるとやっぱり虐待にはなると思います。ですので、ある意味、ただ手を出したりすること、1回だけやったりとかすることが虐待かどうかとなると、またそれはちょっと質が違うような感じが私はしています。
○三浦陽子委員 関連してなのですが、学校の先生の身体的な暴力ではない、言葉による暴力のようなものによって学校に来れなくなってしまうお子さんも結構いるのです。私の子供たちの周りにもそういうお子さんがいて、例えばちょっと体格がいい女の子に、先生が、あんたは太っているからと、ちょっと一言水泳の時間に言われた、それがきっかけで学校に行けなくなって、お母さんがすごく悩んで、もうお母さんと子供が学校に足を運べなくなってしまって、結局登校拒否になって、最後の卒業式には私も立ち会って卒業式を別にやったというお子さんもいるのですが、本当に意外と学校の先生の何気ない言葉で、それが虐待というか、登校拒否につながっていく場合があるのですが、先生の方にはそういうような御相談はありますか。
○三上邦彦参考人 これもよく言われるのですけれども、心理的な虐待が虐待の本質だということをよく言われるのです。言葉でもそうですけれども、言葉自体が持つ重さというか、子供の自信を傷つけるということになるわけで、それがどういう形で子供に影響を与えたのかというのは個別の事例を見ていかなければちょっとわからないところがありますけれども、そういった言葉による虐待ということも気をつけていかなければいけないと思います。
 それから、それにかかわるような人たち、委員の方からは学校の先生のお話がありましたけれども、かかわる者は気をつけていかなければいけないところもありますし、ある意味で教育機関の、先生方も含めてこの虐待に対する認識の中でより深めていく必要性があるかなと思います。
○工藤大輔委員長 ほかにございませんか。
 (「なし。」と呼ぶ者あり。)
○工藤大輔委員長 ほかにないようですので、本日の調査はこれをもって終了いたしたいと思います。
 それでは、三上先生には本当に貴重な御意見等をちょうだいしまして、本当にありがとうございます。心から感謝を申し上げます。
 先ほど来の説明等の中で、児童虐待等が起こり得るということは1つだけの要因ではないと。専業主婦等によるストレスもあったり、また子育て環境の変化や経済的情勢等が影響しているということで、それらをやはり一つ一つ、各家庭や各個人の中でクリアしていかなければ、これは潜在的にだれもが持っている、そういうことが起こり得る要素なのだということを社会全体で認識をしながら手を差し伸べる、フォローするという仕組みをどうつくるかということがこれからも求められてくると思います。
 非常にその判断等が難しいものということと、プライベートにかかわることということで難しい点もあるわけでございますが、先生等から今後とも御教示をいただきながら、県内において児童虐待またはネグレクト等が一切なくなるような環境をつくれるように協力をし合いながら、これからの県勢発展に努めていきたいというふうに考えています。
 きょうは、そういった観点から貴重な御講演を賜りまして、心から感謝を申し上げ、委員会を代表しましての御礼の言葉にかえさせていただきます。きょうは、大変ありがとうございました。
 委員の皆様方には、次回の委員会運営等について御相談がありますので、しばしお残り願いたいと思います。
 次に、1月に予定されております次回の当委員会の調査事項についてでございますが、御意見はありませんか。
 (「なし。」と呼ぶ者あり。)
○工藤大輔委員長 特に御意見がなければ、当職に御一任を願いたいと思いますが、これに御異議ございませんか。
 (「異議なし。」と呼ぶ者あり。)
○工藤大輔委員長 御異議なしと認め、さよう決定いたします。
 なお、当委員会の全国調査につきましては、さきの委員会におきまして決定をいただきましたとおり11月13日から15日までの2泊3日の日程で実施をしたいと思います。追って御通知をいたしますので、御参加の方をよろしくお願いいたします。
 以上をもって本日の日程は全部終了いたしました。
 本日はこれをもって散会いたします。

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