岩手県議会基本条例
平成20年12月12日条例第72号


目次
前文
第1章 総則(第1条―第3条)
第2章 県民と議会との関係(第4条―第8条)
第3章 知事等と議会との関係(第9条―第11条)
第4章 議会運営(第12条―第14条)
第5章 議会の機能の強化(第15条―第22条)
第6章 政治倫理(第23条・第24条)
第7章 定数及び議員報酬等(第25条・第26条)
第8章 議会事務局等(第27条・第28条)
第9章 補則(第29条・第30条)
附則

 戦後の日本を支えてきた中央集権型の行政システムが、社会の構造的変化を受け、様々な問題への対応力を失いつつある今日、自立した地方の創意工夫が生かされる分権型社会の実現が強く求められている。
 平成12年の地方分権の推進を図るための関係法律の整備等に関する法律(平成11年法律第87号)の施行により、本格的な地方分権に向けたスタートが切られたが、その実現は未だ道半ばである。地方分権改革を成し遂げ、地方自治体の自主性や自立性を高め、住民主導の行政システムへの転換による「真の地方自治」を実現するため、地方議会の果たすべき役割と重要性は、確実に増してきている。
 本県議会は、これまで議会の改革及び活性化に努めてきたが、県政に関する政策の立案及び提言や知事の事務執行の監視及び評価、主権者たる県民への議会活動に関する説明責任や情報公開が未だ十分とは言えない。住民に近い存在であるべき議会が、ともすれば遠い存在として捉えられていたこともまた事実であり、議会及び議員は、その果たすべき本来の機能と存在意義を問われている。
 本県議会は、知事と議会が対等で切磋琢磨の関係にある二元代表制の下、合議制の機関として多様な民意を反映しうる議会の役割及び議員の活動規範並びに県民主権の実現に向けた実効ある仕組みをここに明らかにし、県民参加の下で地方議会政治を成熟させていくとともに、議会改革に継続的に取り組み、県民の負託に応える議会のあり方を不断に追求していくことこそが、真の地方自治に結びつくものと確信する。
 ここに本県議会は、県民から選ばれた県民全体の奉仕者であることの誇りと、果たすべき役割を自覚し、県民の意向を的確に反映し、県民に開かれた議会、県民に信頼される議会を構築することにより、県民福祉の向上及び県勢の発展に寄与することを決意し、この条例を制定する。

   第1章 総則

 (目的)
第1条 この条例は、岩手県議会(以下「議会」という。)の役割及び活動方針並びに議員の活動及び活動方針を明らかにするとともに、県民と議会との関係、知事その他の執行機関(以下「知事等」という。)と議会との関係その他の議会に関する基本的事項を定めることにより、議会が、その果たすべき役割を全うし、県民の負託にこたえ、もって県民福祉の向上及び県勢の発展に寄与することを目的とする。

 (議会の役割及び活動方針)
第2条 議会は、県民を代表する合議制の機関として、次に掲げる役割を担うものとする。
 (1) 議会に提出された議案の審議及び審査を行うほか、積極的に政策立案及び政策提言に取り組むことにより、県の政策を決定すること。
 (2) 知事等の事務の執行について監視及び評価を行うこと。
 (3) 前2号に掲げるもののほか、議会の意思又は見解を対外的に表明すること。
 (4) 前3号に掲げる役割を的確に果たすことを通じて、県政の情報及び実状を県民に明らかにすること。
 (5) 合議体としての議会を適正かつ効率的に運営し、及び管理すること。
2 議会は、前項の役割を果たすため、次に掲げる方針に基づき、活動するものとする。
 (1) 議会活動の透明性を高めること。
 (2) 県民の議会に対する信頼を確保すること。
 (3) 県民の意向を的確に把握し、県政に反映させること。
 (4) 議会活動に関する県民への説明責任を果たすこと。
 (5) 知事等と対等でかつ緊張ある関係を構築し、これを保持すること。
 (6) 他の地方公共団体の議会との交流及び連携を行うことにより、議会活動の成果をより高めること。
 (7) 県民の負託にこたえる議会のあり方を不断に追求し、議会の改革に継続的に取り組むこと。

 (議員の活動及び活動方針)
第3条 議員は、県民全体の奉仕者、県民から選挙により選出される代表者及び合議体の構成員として、次に掲げる活動を行うものとする。
 (1) 県の政策形成に関わる調査研究、企画、立案及び提言を行うこと。
 (2) 県の政策形成に必要な情報収集、意向調査、住民との意見交換等を行うこと。
 (3) 議会に提出された議案の調査を行うこと。
 (4) 本会議(地方自治法(昭和22年法律第67号。以下「法」という。)第2編第6章第6節の規定による会議をいう。以下同じ。)、委員会等に出席し、質問、質疑、討論、討議等を行うこと。
 (5) 議会の適正かつ効率的な運営及び管理を確保すること。
 (6) 県が主催する記念式典その他の公的行事に必要に応じて出席すること。
2 議員は、次に掲げる方針に基づき、前項の活動を行うものとする。
 (1) 議員活動の透明性を高めること。
 (2) 県民の議会及び議員に対する信頼を確保すること。
 (3) 県政の課題及び県民の多様な意見を的確に把握し、議会活動に反映させること。
 (4) 議会活動に関する県民への説明責任を果たすこと。
 (5) 地域の課題のみならず、県政全体の課題の解決に取り組み、県民全体の福祉の向上を目指すこと。
 (6) 議員としての資質の向上を図ること。


   第2章 県民と議会との関係

 (県民意向の県政への反映)
第4条 議会は、県民の意向を的確に把握し、県政に反映させるため、説明責任を十分に果たすとともに、県民の議会活動への参加(以下「県民参加」という。)の機会を確保するよう努めなければならない。

 (県民参加の機会の充実等)
第5条 議会は、次に掲げる方法により、県民参加の機会の充実を図るものとする。
 (1) 参考人制度及び公聴会の積極的活用
 (2) 議会と県民との意見交換の場の設置
 (3) 政策立案等に際しての県民からの意見の聴取
 (4) 前3号に掲げるもののほか、議長が必要と認める方法
2 議会は、請願書又は陳情書が会議規則で定めるところにより提出されたときは、これを県民による政策の提案としてとらえ、誠実に処理しなければならない。
3 請願及び陳情の審査を付託された委員会は、その提出者から説明を受ける必要があると認めるときは、参考人としての出席を求めることができる。

 (本会議及び委員会の公開)
第6条 議会は、本会議及び委員会の公開に当たっては、県民が傍聴しやすい環境を整備するとともに、会議録その他の会議の内容に関する情報を広く県民の閲覧に供することにより、公開の実効を上げるものとする。

 (広聴広報活動の充実)
第7条 議会は、次に掲げる取組を積極的に推進すること等により、広聴広報活動の充実を図るものとする。
 (1) 県民の多様な意見の的確な把握
 (2) 議会活動に関する情報の多様な媒体による県民への提供
 (3) 議案等に対する議員の賛否の速やかな公表
 (4) 議員で構成する会議による広聴広報の充実強化

 (情報公開の推進)
第8条 議会は、岩手県議会情報公開条例(平成11年岩手県条例第61号)第2章の規定による公文書の開示と併せて、前2条に規定する取組のほか、議会の保有する情報の提供に関する施策の推進に努めなければならない。


   第3章 知事等と議会との関係

 (知事等との関係の基本原則)
第9条 議会は、二元代表制の下、知事等と対等で緊張ある関係を構築し、知事等の事務の執行の監視及び評価並びに政策立案及び政策提言を通じて、県政の伸展のために活動するものとする。
2 議会は、知事等と異なる立場及び権能を生かし、活動しなければならない。

 (監視及び評価)
第10条 議会は、予算、決算等の議案の審議及び審査のほか、報告等の受理、検査の実施、監査の請求、調査、承認、同意等を通じて、知事等の事務の執行が、適正かつ公平に、及び県民の意向を的確に把握しつつ能率的に行われているかどうかを監視するとともに、これが所期の効果及び成果をあげたかどうかを評価し、知事等に対し必要な是正措置又は対応を促すものとする。

 (政策立案及び政策提言)
第11条 議会は、議員発議による条例の制定、議案の修正、決議等を通じて、積極的に政策立案及び知事等に対する政策提言を行うものとする。


   第4章 議会運営

 (定例会の回数)
第12条 定例会の回数は、岩手県議会の定例会回数条例(昭和31年岩手県条例第44号)で定める。

 (本会議及び委員会の運営)
第13条 議会は、本会議及び委員会を公正に、及び円滑かつ効率的に運営するものとする。
2 本会議は、全議員で構成し、議会の最終的な意思決定を行う。
3 本会議における議員の質問及び質疑は、一括して行うほか、分割して、又は一問一答の方法により行うこともできるものとする。
4 議長の求めに応じて本会議又は委員会に出席する知事、教育委員会の委員長、選挙管理委員会の委員長、人事委員会の委員長、公安委員会の委員長、労働委員会の委員及び監査委員その他法律に基づく委員会の代表者又は委員並びにその委任又は嘱託を受けた者は、議員の質問及び質疑に対する説明をより的確に行うことができるよう、議長又は委員長の許可を得て質問及び質疑の趣旨を確認するための発言をすることができる。
5 委員会は、県の事務等の調査、付託された議案、陳情等又は事件の審査等を行う。
6 議会は、委員会における議員相互間の討議を積極的に推進することにより、論点及び争点を明確にして合意形成の方向性を見出す等、合議制の機関として期待される機能の発揮を図るものとする。
7 前各項に定めるもののほか、本会議の運営並びに委員会の設置及び運営については、会議規則及び岩手県議会委員会条例(昭和31年岩手県条例第43号)で定める。

 (会派)
第14条 議員は、会派(議会において、基本的政策が一致する2人以上の議員をもって構成し、活動を行う団体をいう。以下同じ。)を結成することができる。
2 会派は、合議体としての議会が第2条第1項の役割を十分に果たすことができるよう、政策等に関して会派内及び他の会派との間における調整を行い、議会の意思決定に向けて方向性を見出すよう努めるほか、議会運営に関して、議会運営委員会の場等を通じて会派間における調整を行うものとする。
3 前2項の規定は、会派に所属しない議員の活動を制限するものとして解釈してはならず、かつ、議会は、会派に所属しない議員の意見が議会運営に反映されるよう配慮しなければならない。


   第5章 議会の機能の強化

 (議会の機能の強化)
第15条 議会は、議案の審議及び審査、政策立案及び政策提言並びに知事等の事務の執行の監視及び評価(以下「審議、立案等」という。)に関する議会の機能の強化を図るものとする。

 (政策条例の会派共同提案)
第16条 各会派は、県の政策に係る条例案を共同して提出しようとするときは、委員会、会派間の調整を行う場として設置する会議等を積極的に活用し、その内容を協議するものとする。

 (制度の積極的活用)
第17条 議会は、法第96条第2項の規定に基づく議決事項の追加、法第100条の2の規定に基づく専門的事項に係る調査の委託等その他の法に規定する議会の権限に関する制度を積極的に活用するものとする。

 (研修及び調査研究)
第18条 議員は、審議、立案等に必要な能力の向上を図るため、研修及び調査研究に努めるものとする。

 (政務調査費)
第19条 議員の調査活動の基盤の充実を図り、もって議会の審議、立案等の機能を強化するため、政務調査費の交付に関する条例(平成13年岩手県条例第37号)で定めるところにより、議員に政務調査費を交付する。
2 議員は、政務調査費の交付に関する条例で定めるところにより、政務調査費の使途を明らかにしなければならない。

 (県政調査会)
第20条 議員は、その全員が自主的に参集し調査研究を行う場として、岩手県政調査会を組織するものとする。
2 岩手県政調査会は、議員相互間の討議を積極的に推進するとともに、県政に係る重要な事項の調査研究、議員の研修等の活動を行うことにより、議会活動の活性化を図り、もって県政の伸展に寄与するものとする。

 (議員連盟)
第21条 議員は、議員連盟、議員協議会、議員クラブその他名称のいかんを問わず、特定の県政の課題について調査研究を行うことに賛同する議員が当該課題について共同して調査研究を行う団体(以下「議員連盟」という。)を結成することができる。
2 議員連盟は、議員連盟を通じた調査研究が、議員個人でこれを行う場合に比べてより広範にわたり、かつ、効率的に行われるとともに、議員連盟の活動を通じて県政の課題に関する議員間の共通の認識が深められるよう努めるものとする。
3 議員連盟は、可能な限り広く会派を超えた議員の参加により、活動するよう努めるものとする。

 (議会改革の推進)
第22条 議会は、議会改革に継続的に取り組むため、常設の会議を設置する。


   第6章 政治倫理

 (政治倫理)
第23条 議員は、県民の負託にこたえるため、重大な使命及び高い倫理的義務が課せられていることを深く認識し、県民の代表として良心及び責任感を持ち、議員の品位を保持し、及び識見を養うよう努めなければならない。
2 議員の政治倫理に関しては、別に条例で定める。

 (資産等の公開)
第24条 議員の資産等の公開については、政治倫理の確立を期し、もって民主政治の健全な発達に資するため、政治倫理の確立のための県議会の議員の資産等の公開に関する条例(平成7年岩手県条例第45号)で定める。


   第7章 定数及び議員報酬等

 (定数)
第25条 議員の定数は、議会が県民の意思を県政に反映する機能を十分に発揮するとともに、議会を能率的に運営しその意思決定を円滑に行うことができるよう、県議会議員の定数等に関する条例(平成14年岩手県条例第37号)で定める。

 (議員報酬及び費用弁償)
第26条 議員報酬及び議員の職務の遂行に要した経費を償うための費用弁償については、特別職の職員の給与並びに旅費及び費用弁償に関する条例(昭和27年岩手県条例第7号)で定める。


   第8章 議会事務局等

 (議会事務局)
第27条 議会は、議会の政策立案能力を向上させ、議会活動を円滑かつ効率的に行うため、議会事務局の機能の強化及び組織体制の整備に努めるものとする。
2 議長は、議会事務局の職員体制の充実を図るため、専門的な知識経験を有する職員の配置に努めるとともに、職員の専門的能力の養成を行うものとする。
3 職員は、第2条の議会の役割及び活動方針を踏まえ、適正かつ的確に業務を推進するとともに、このために必要な能力の向上に努めるものとする。

 (議会図書室)
第28条 議長は、議員の調査研究に資するために法第100条第18項の規定により設置する議会図書室を適正に運営し、及び管理するとともに、その機能の強化に努めるものとする。


   第9章 補則

 (他の条例等との関係)
第29条 この条例は、議会に関する基本的事項を定める条例であり、議会に関する他の条例等を制定し、又は改廃する場合においては、この条例との整合を図るものとする。

 (検討)
第30条 議会は、この条例の施行後、県民の意見、社会情勢の変化等を踏まえ、必要があると認めるときは、この条例の規定について検討を加え、その結果に基づいて所要の改正を行うものとする。

   附 則
 この条例は、平成21年4月1日から施行する。


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