いわての水を守り育てる条例
平成20年12月12日条例第73号

 水は、全ての生物にとって必要不可欠なものであるとともに、有限で代替するものがない貴重な資源です。また、水は、経済社会の健全な発展や私たちの生活の安定向上の基盤であることから、価値ある共有の財産として有効に利用されなければなりません。
 しかしながら、近年、世界人口の増加、経済の発展、気候変動等によって、世界の一部地域において水は量的に不足し、質的にも汚染、汚濁などの問題が懸念されており、また、わが国でも平均気温の上昇、降水量の減少などによって渇水などの被害が発生しています。豊富な水資源を有する本県においても、水は上流の水源から海に至るまで汚染、汚濁などの危険にさらされるとともに、気候変動により、将来、水の安定した利用が損なわれることが憂慮される状況となっています。
 これまで、私たち県民は、四季を通じてもたらされる水の豊かな恵みを活用して生活を営むとともに、過去に産業活動によって汚染された北上川を清流に戻す取組を行うなど、先人の知恵と努力によりいわての水を守り育ててきました。また、水を活用する中で生み出された文化と伝統は、各地域と水との深い関わりの中で育まれ、継承されてきました。
 私たちは、この北上川清流化をはじめとする先人の取組の歴史、そして水に関わる文化や伝統を誇りにし、いわての良質な水の価値を再認識するとともに、水を限りある資源として守らなければなりません。
 ここに私たちは、地域の水文化を将来の世代に引き継ぎ、全ての生物が持続的に共存できる良好な水環境と豊富な水資源を守り育てるため、たゆまぬ努力を傾けることを決意し、この条例を制定します。

 (目的)
第1条 この条例は、本県の水を守り育てるための取組について、県、市町村、事業者および県民の役割を明らかにするとともに、施策の基本となる事項を定めることにより、水を大切にする気運の醸成を図り、もって水環境の保全および水資源の確保に寄与することを目的とします。

(用語の意義)
第2条 この条例において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ各号に定めるとおりとします。
 (1) 水環境 河川や湖沼などにおける水質、水量、水生生物、水辺地などの水に関する環境の総体をいいます。
 (2) 雑用水 雨水ならびに事業所および家庭からの排水等を原水として、人の飲用その他これに類する用途以外に利用する水をいいます。
 (3) 水文化 水に関わる祭事、行事、伝統施設、工法、伝統工芸、生活様式などの有形または無形の文化および伝統をいいます。
 (4) 水辺景観 川辺、湖畔、海岸などの水際の地形または空間が生み出す外観をいいます。
 (5) 水環境への負荷 人の活動によって水環境に加えられる影響であって、水環境の保全上の支障の原因となるおそれのあるものをいいます。

(基本理念)
第3条 本県の水を守り育てるための取組は、県、市町村、事業者および県民が相互に連携、協力し信頼関係を築きながら、次に掲げる事項を基本理念として進めます。
 (1) いわての良質な水は、良好な水環境を保持し、多様な生物の生息空間と生態系を保全することによってもたらされるものであり、人と自然が共生する潤いとやすらぎに満ちた県民生活を維持するうえで欠くことができないため、水環境の保全を図ること。
 (2) 限りある水資源は、本県の地域産業、地域社会の持続的な発展や県民生活の向上にとって重要なものであるため、水資源を確保し、有効に利用すること。
 (3) 県民の共有財産である水資源は、次代を担う子供たちに引き継がれる必要があるため、次世代を中心として県民の水と親しむ機会を拡充することによって、水を大切にする心を育むこと。
 (4) 世界に誇れるいわての水の価値は、各地域における水文化を保存および継承する活動によって高められてきたものであるため、その価値を再認識し、水文化を引き継いでいくこと。

(県の責務)
第4条 県は、前条に定める基本理念(以下「基本理念」といいます。)にのっとり、いわての水を守り育てるため、次に掲げる施策を実施するものとします。
 (1) 水環境の保全および水資源の確保に関する施策
 (2) 効率的で持続的な水の利用を推進する施策
 (3) 雑用水の利用その他水の再利用(以下「水の有効利用」といいます。)を推進する施策
 (4) 水の価値を再認識するための施策
2 県は、第6条第2項および第7条第2項から第4項までに規定する取組に対し、指導、助言その他の必要な支援を行うものとします。

(市町村の役割)
第5条 市町村は、基本理念にのっとり、その市町村の地域の特性に応じて、それぞれの立場において、水を守り育てるための施策を実施するよう努めるものとします。

(事業者の責務)
第6条 事業者は、基本理念にのっとり、いわての良質な水の安定した利用が損なわれることがないよう、その事業活動において、次に掲げる事項に取り組むよう努めるものとします。
 (1) 水環境への負荷を少なくするための対策
 (2) 節水型の機器または設備の活用
 (3) 水の有効利用
2 事業者は、その事業活動が水環境に及ぼす影響について必要な情報を地域住民に提供するとともに、地域住民から要望があった場合には、説明および意見交換を行うことにより、その理解を得るよう努めるものとします。

(県民の役割)
第7条 県民は、基本理念にのっとり、いわての良質な水の安定した利用が損なわれることがないよう、次に掲げる事項に取り組むよう努めるものとします。
 (1) 洗剤、農薬、肥料などの水環境に配慮した適正な使用
 (2) 日常生活における節水および水の有効利用
2 県民は、水を大切にする心を育むため、日常生活において水の価値について相互に教え、および学ぶとともに、水と親しむ機会を持ち、水環境の保全に関する活動を行うよう努めるものとします。
3 県民は、地域に生まれた水文化が持つ高い価値を改めて認識し、その水文化を保存および継承していくよう努めるものとします。
4 県民は、森林および水田の持つ水源のかん養、水環境の保全などの役割に関する理解を深め、水源地域が維持されるよう努めるものとします。

(水環境の保全および水資源の確保に関する事業)
第8条 県は、水環境の保全および水資源の確保を図るため、次に掲げる事項を基本的な内容とする事業を推進するものとします。
 (1) 河川などの生態系の維持および多様な生物が生息できる親水空間の創造
 (2) 森林および水田が持つ水源かん養機能の維持および増進
 (3) 都市部の道路または公園における雨水の浸透面の保全および浸透能力の向上

(効率的で持続的な水の利用に関する事業)
第9条 県は、効率的で持続的な水の利用を図るため、次に掲げる事項を基本的な内容とする事業を推進するものとします。
 (1) 生活用水、農業用水、工業用水その他の用水の合理的または効率的な利用
 (2) 地下水および河川水の適切な利用
 (3) 家庭または事業所における節水型の機器または設備の導入促進

(水の有効利用に関する事業)
第10条 県は、水の有効利用を図るため、次に掲げる事項を基本的な内容とする事業を推進するものとします。
 (1) 公共施設における雑用水の利用を図る設備の導入促進
 (2) 公共施設および民間施設における雨水貯留設備の導入促進
 (3) 雑用水の利用を図る設備に関する情報発信および技術の普及
 (4) 温泉水、雪および氷の特性を生かした地域の取組の奨励
 (5) 水の有効利用に関する技術開発および調査研究の推進

(水の価値の再認識のための事業)
第11条 県は、水の価値に関する県民の認識を深め、水を守り育てる意識の高揚を図るため、次に掲げる事項を基本的な内容とする事業を推進するものとします。
 (1) 生態系の調査および保護に関する情報の発信
 (2) 学校および家庭における水の大切さに関する環境学習の奨励
 (3) 県民および事業者が実施する水環境の保全および水資源の確保に関する活動ならびに水の有効利用に関する顕彰
 (4) いわての水の価値、水文化および水質保全活動の歴史に関する情報の発信
 (5) 水辺景観の保全に関する情報の発信

(事業者の自主的な情報提供の促進)
第12条 県は、第6条第2項の規定に基づく情報の提供が促進されるよう、広報、啓発活動その他必要な措置を講じるものとします。

(市町村への支援)
第13条 県は、第5条の規定に基づいて市町村が行う施策について、必要な支援を行うものとします。

(財政上の措置)
第14条 県は、第8条から第11条までに掲げる事業を推進するため、必要な財政上の措置を講ずるよう努めるものとします。

(実施状況の公表)
第15条 知事は、第4条第1項に掲げる施策の実施状況を公表し、広く県民の意見を聴くものとします。

   附 則
この条例は、平成21年7月1日から施行します。

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