今回のオンラインイベントの開催にあたって、
千葉麻里絵さんにインタビュー。
日本酒の魅力や可能性について語ってもらいました。

今回のオンラインイベントの開催にあたって、 千葉麻里絵さんにインタビュー。 日本酒の魅力や可能性について語ってもらいました。

日本酒に興味を持ったきっかけは何でしたか?

麻里絵さん:学生の頃は日本酒っておじさんが飲むものだと思っていて、あまりいいイメージは持ってなかったんです。それが変わったのは、山形の酒蔵がつくった吟醸酒に出会った時。まず、香りに驚いて。日本酒は米からできているのに、どうしてこんなフルーティな香りがするのか。米からは想像もつかない味と香りが生まれることに、興味を持ったのがきっかけです。

本格的に日本酒にのめり込んだのは?

麻里絵さん:大学卒業後はSEとして働いていたんですが、飲食の仕事をしたくて「日本酒スタンド酛」に転職。でも最初は日本酒の味の違いもわからなくて、つくっている人に会えば勉強できるんじゃないかと思って、鳳凰美田(小林酒造)の酒蔵を訪ねたんです。そこで蔵人たちが真摯に愛情を持って酒造りをしている様子を見て、すごく感銘を受けたんですよ。

それからですね、日本酒にとことん向き合うようになったのは。もっと学んで酒蔵の人たちと共通の言葉で話せるようになりたいと、いろんな酒蔵に足を運んで、造りを勉強するようになりました。

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日本酒って、造り手の個性がそのまま表現されるお酒なんですよ。
どの段階で誰が関わるかでも味が変わるし、
チームのまとまり方でも味が変わる。
まさに、人間力の結晶なんです。

千葉さんの考案する酒ペアリングが注目されていますね。

麻里絵さん:昔はオフフレーバーがあるだけでダメなお酒だと思っていたんですが、料理と合わせることで弱点だと思っていたオフフレーバーがプラスに転じて、別の味わいや香りに昇華することに気づいたんです。

例えば、普通は絶対合わないと思われているコーヒーやお茶も、日本酒とペアリングすると新しい美味しさを発見できる。それがきっかけで、コーヒーやお茶のプロも日本酒の魅力に目覚め、自分たちの店に日本酒を置くようになって、そこから新しいお客様が広がりました。

何事も一つの側面だけで見ていると、考えや世界観が狭まってしまうもの。
思い込みや常識にとらわれず、新たなものと日本酒をつなぐペアリングを開拓していくと、これまでにはない出会いが広がります。

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結局のところ日本酒の魅力って何ですか?

麻里絵さん:人をつなぐ力、それに尽きると思います。
私は日本酒を通して、尊敬できる酒蔵の人たちと出会い、自分の世界を広げることができました。そして今、ペアリングを通して、フレンチやイタリアンのシェフ、バーテンダー、焙煎士など、異業種の人たちとつながることで、日本酒ファンにはもちろん、今まで日本酒を飲まなかった新たなお客さまが日本酒と出会う入り口を広げています。

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飲む場合でも杯を酌み交わし、差しつ差されつするうちに、心がほぐれ、距離を縮めてくれますよね。
日本酒はまさに「人をつなぐお酒」なんです。

日本酒の初心者にメッセージを。

麻里絵さん:生酛とか山廃とかいろんな種類があるので難しいと感じる人もいるかもしれませんが、お店に行ったら自分の好きなテイストを伝えれば大丈夫。それは味の好みでもフレーバーでも、何でもいい。

例えばメロンのような香りが好きなら、その好みに沿った日本酒をお出ししますし、芋は苦手で麦焼酎が好きという方には、香りは控えめでスッキリした味わいの日本酒をお勧めします。

長年やっていると、「スーッとしたお酒」みたいな感覚的なオーダーでも大丈夫。「風のようなスーですか、水が流れるようなスーですか?」とちゃんと好みを探り当てますから(笑)。
あまり難しく考えず、気軽に楽しんでみてくださいね。

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千葉麻里絵さんのプロフィール写真

PROFILE 千葉麻里絵さん

岩手県出身。山形大学で食品の物質工学を学ぶ傍ら、日本酒を多く扱う居酒屋でアルバイトをする。卒業後、3年間SEとして勤めたのち、新宿の「日本酒スタンド酛(もと)」に入社し、利酒師の資格を取得。

各地の酒蔵に通い、酒類総合研究所で専門知識を身につけ、『日本酒と人は宝物』をコンセプトに2015年、恵比寿に「GEM by moto」をオープン。国内では飲食店初となるマイナス5度で日本酒の熟成が可能な氷温冷蔵庫を設置し、日本酒の徹底管理を行う。
現在は、店長として店に立つ傍ら、日本酒の魅力を世界に発信すべく、イタリアン・フレンチ・中華など幅広いジャンルの飲食店とのコラボレーションを通して活躍の場を広げている。著書に「日本酒に恋して」(主婦と生活社)、共著に「最先端の日本酒ペアリング」(旭屋出版)がある。