1.事案の概要

 本事案は、青森県八戸市に本社を置く廃棄物処理業者であった三栄化学工業株式会社(三栄化学)が、長期間にわたり、青森県田子町と岩手県二戸市の県境に所在する同社代表者の私有地である27ヘクタールの原野に、産業廃棄物を不法投棄したものである。
 不法投棄された廃棄物量は、本県側27万立方メートル、青森県側79万立方メートル合計約100万立方メートル以上にもなる。これは東京ドーム球場(総容積は約120万立方メートル)0.8杯分で、香川県豊島の不法投棄事件をはるかに上回る日本最大規模の不法投棄事件で、複数県にまたがる初めての大規模不法投棄事件でもある。
  不法投棄された廃棄物の多くは 堆肥、焼却灰、汚泥などで、医療系廃棄物や有機溶剤などが混合されて広範囲に埋められていた。三栄化学は、1991年に青森県から中間処理業の許可を受け、形式上は、焼却灰、汚泥と樹皮とを混合して製造する堆肥様物を、堆肥原料として三栄化学のダミー会社である三栄興業株式会社(三栄興業)に販売する事業形態であったため、現場に投棄されている廃棄物の多くが堆肥様物になっていた。
 しかし、三栄興業が堆肥を第三者に売却した販売実績は皆無で、適正処理を偽装するため、このような形式をとっていたに過ぎず、実際には、堆肥、焼却灰、汚泥の多くが、廃食品、廃プラスチック類、医療系廃棄物、廃油、廃有機溶剤などと混合された状態で、谷側である青森県側では谷への投棄と覆土が、山側である岩手県側では地面を掘削した穴への投棄と覆土が繰り返されていた。

 

近影近影

 また、本件現場に持ち込まれた廃棄物の中には、埼玉県の中間処理業者である懸南衛生株式会社(懸南衛生)が、自社中間処分場内で焼却した焼却灰、汚泥、RDF(廃棄物を圧縮固形化した燃料)様の廃棄物などを持ち込んだものが相当の割合を占めていた。当該RDF様の廃棄物は金属やガラス等が含まれていて燃料としては使用できないもので、上記の堆肥と同じく、有価物と偽装して現場に持ち込まれていた。
 このように、本事案では、三栄化学や懸南衛生により有価物偽装された廃棄物と、有害物質を含む様々な廃棄物が混合されて投棄されたため、ほとんどの廃棄物が汚染された状態になっており、汚染土壌と共に焼却、焼成、溶融して処理するほかはなく、再利用を行うことが不可能ないし著しく困難だった。
 本事案は1999年の強制捜査以降、頻繁に報道され国内に広く知られるようになったが、三栄化学が青森県から産業廃棄物の最終処分、中間処理並びに収集運搬業の許可を、岩手県から収集運搬業の許可を受けていたことから、地元住民や報道関係者からは青森・岩手両県の責任を問う声が上がった。
 また、これらの大量の廃棄物を排出した事業者は、1万2千社にも上っており、首都圏からの廃棄物が9割近くを占めること、三栄化学は埼玉県の許可した中間許可業者である懸南衛生と共謀して不法投棄を行っていたことから、本事案は、地方における単なる不法投棄事件ではなく、都市圏から片田舎に大量の廃棄物が流入し不法投棄された典型的事件である点も注目された。
 そのため、行為者である処理業者の責任や流入側の県の監督責任に止まらず、排出事業者や、排出事業者・中間処理業者に対して適正処理の監督責任を負っている都道府県の責任、さらには、廃棄物処理法制の不備により、このような大規模な広域型不法投棄事件を招いた国の責任を問う声もあり、その後の廃棄物処理法の大規模改正や、特定産業廃棄物に起因する支障の除去等に関する特別措置法の制定に繋がっていくことになった。

近影近影近影

参考
青森県境産業廃棄物不法投棄事案の概要:資料